「工務店事業を選ばれる喫茶店から学ぶ」

読まれた方もいらっしゃると思いますが、遠藤功さんの書籍である「ホットケーキの神さまたち」を是非地域で事業をする工務店さんに読んで頂きたい。成功へのヒントになる一冊です。この本は、人通りがあるのに有名どころの各種飲食店が次々撤退していく街として、ウルトラマンの発祥の地である東京小田急線の祖師ヶ谷大蔵駅にある「黒田珈琲店」を描いた書籍です。実はこの黒田珈琲店が取り組む3つの創意工夫というものが、我々工務店事業にも必要な思考と取り組みであることを、今月は少しご紹介していきましょう。

 

この駅は、成城学園前駅などに比べると人は少ないですが、それでも1日に5万人近い人達が乗り降りする、決して人通りの少ない駅前ではありません。なのに有名どころのチェーン店がことごとく撤退して行く中で唯一、この黒田珈琲店が何故今まで30年に渡って支持されてきたのか?

 

その理由はたった一つ!「わざわざこの店に行く理由」というものを創り出してきたということなのです。つまり「ちょっと寄って行こうか?」という特別な何かなのでしょう。

 

この黒田珈琲店が創り出した創意工夫の1つは、当然珈琲店だけに自家焙煎した珈琲を丁寧にいれて提供することはもとより、デザートに力を入れた点にあります。サンドイッチやホットケーキだけでなくパンケーキを含めて、様々なトッピングに工夫を凝らし、「選ぶ楽しみ」というコンセプトをお店に植え付けた点にあります。

 

2つ目の創意工夫は、「他では味わえないプロのこだわり」をコンセプトにしている点にあります。つまりメニューに対する工夫に余念がないことと、素材に対する妥協がないことです。例えば、ベーキングパウダーひとつとっても特別な素材を使用したり、パンケーキについては食感に対する工夫、そしてホットケーキを焼く銅板には必ず厚さ5ミリの一枚銅板を特注で製造し焼き上げる。また、型をくり抜き見た目にもこだわりを持ち、お客様に対して全てのシーンにおいてプロを感じさせる商品の提供をしている点です。

 

3つ目の創意工夫は、「味と共に、お客様との交流」を大切にしている点にあります。オーナーの黒田さんが「早く閉めて、好きなことをやってもいいよ!」と言ったきっかけから、定期的に読者会を開いているそうです。お客様が好きな本を読んで、その感想をお客様同士で語り合ったりと、常にお客様との交流を深め、大切にされているのです。

 

このオーナーである黒田さんの事業思考は、「喫茶店とは、人と交流し語り合い、触れ合うことが喫茶店という事業の原点であるから」というミッションを大切にしていることだと言えるでしょう。我々住宅産業も同様、工務店事業とは、本来工務という技能に対して如何に価値を出すかというプロ意識こそが事業の目的であり、その発揮する現場を創造するために手段として受注をする。これがモノづくりをする企業のミッションと言えるのではないでしょうか?

 

一方、黒田さんはマーケットについてこう語られていました。「通行人はお客様でない!」という言葉です。考えてみれば確かにお客様予備軍ではあるが、本当のお客様ではない。つまり単なる通行人を消費者と考えるから、チェーン店などが撤退するということに繋がるのだと。人口分布や人通りと言う立地という観点からの事前調査は確かにマーケット戦略なのかも知れないが、やはり本当のマーケティングとは、売ることではなく選ばれることにあるのです。

 

通行人を本当のお客様に変えること。これが事業(商売)なんだと黒田さんは語ります。これは家づくりも同じく、ショールームや完成見学会など、集客というステージは所詮、通行人である。その来場者と言われる通行人を、本当のお客様に変える為にはどうしたら良いのだろうか?

 

この答えを、黒田さんはこのように答えていました。「お店に魅力があること。そして、提供する商品に本質的な価値が無ければ、絶対にお客様にはなり得ない」と…。全てはこの言葉に集約されるに違いありません。

 

工務店が生み出す価値は、他社には絶対に真似出来ない工務力を提供することと、地域に魅力的な交流を深めながら、常にお客様が相談してみたくなる理由を創り出し続けるかが、地域密着事業の本当の在り方なのでしょう。本当の企業の実力とは、実は見た目の集客力ではなく、興味を持ってくれたお客様予備軍に対する成約率であることが、この本で学び得ることができたのではないでしょうか。上っ面の世知がない販売競争からの脱却というものから、造って楽しめる工務店の事業を是非残していきたいものです。