これからの技術系人材マネジメントの重要性

住宅建築業界をとりまく環境が大きく変化している今、企業の競争力強化のために、限られた人材をいかに有効活用するかが、重要な …


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住宅建築業界をとりまく環境が大きく変化している今、企業の競争力強化のために、限られた人材をいかに有効活用するかが、重要な課題になっています。そのため、人材を有効活用していく仕組みである「人材マネジメント」への注目が、どの業界においても非常に高まってきています。

 

まず、人材マネジメントとはどのようなものなのかを皆様に簡単に申し上げると、これからの住宅事業の成長に向けて戦略的に人材配置を行ったり、個々の能力の最大化を図ったりすることで、人材を有効活用していく仕組みのことを指しますが、特にこの業界においては急務な取り組みと言えるでしょう。

「ヒト」というものを短期経営視点でみると単なる「人的資源」なのですが、長期経営視点から見ると「人的資本」とも考えられ、会社の資産となります。まさしく今や少子高齢化における人口減の環境下、更には働き方改革といった就業環境規制を背景に、今後企業が存続していくためにも、最も重要な取り組みである事は間違いありません。

住宅建築業界においては、特に技術者や技能者という人材が慢性的な不足に陥り、今や住宅を売る事よりも、つくる事の方が難しくなってきています。本格的なストック需要を迎えるこれからのモノづくりは、さらに高い技能や目利きが必要となり、IT化で補えるほど簡単なものではない、非常に深刻な局面にある事を改めて認識して頂きたいのです。

事業を成長させていくこれからの住宅事業者が、この人材マネジメントを積極的に取り入れ、それを仕組み化して管理・最適化するためには、「採用」「育成」「評価」「処遇」「配置」「休職・復職」の主な6つの要素を1つ1つ明確に組み上げながら、循環させなくてはなりません。

そこで今回のコラムは、この手順をシンプルに解説していけたらと思います。

 

大前提として、第一に会社が整理すべき点は、「経営戦略を明確化」することにあります。自社の経営戦略と人材マネジメントは必ず同じ方向性でなければなりません。そもそも人材マネジメントは人材を有効活用していくための手段ですので、最優先すべきは自社の人的課題を見つけ、それをどう解決すべきかを考えることで目的達成へ近づくことができるのです。

次に、課題解決を目的とした人材発掘に向けて、既存社員の情報をひとまず整理してみましょう。

例えば、既存社員がスキルや技能を得ることで課題を解決できる社員であれば「育成」というフェーズにしっかり進めなければなりませんし、最適な人材がそもそもいない場合は、「採用」というフェーズに進めなければなりません。また、適材が別部署にいる場合には、「配置の見直し」というフェーズを選択していくという進め方が有効になります。

このような観点から、一旦具体的な人材配置を考えてみましょう。目標を達成するためにはどのような配置が適切かを考え、個人のプロフィールや保有資格、経験、キャリアプランなど多くの情報をもとに、最適な人材配置に修正していきます。個人のキャリア計画やポテンシャルはもちろん、自社の経営戦略実現にむけて、中期的な視点を踏まえながら思い切って行いましょう。

また、新たに配属する人材だけを見るのではなく、会社全体のバランスを念頭に置いて、全体最適視点で判断すると良いでしょう。

 

次に、人材育成と評価です。

従業員が自身の役割を明確化し、パフォーマンスを最大限発揮できる環境にするためには、従業員自身が主体となって目標を決めるようにすることがポイントとなります。しかしながらこの業界の施工関連部署は、どうしてもチームの役割や目的が根本的に明確化されていない傾向が高く、技術社員の評価については定性的かつ感覚的視点に陥りやすく、社員のやり甲斐そのものが中々部内で醸成しない実態は否めません。

だからこそ、ひとまず部内の役割や目的から明確なあるべき姿を打ち出し、このあるべき姿が社員の未来のキャリアアップに繋がり、ワクワク感が抱けるシゴトに繋げられるかが大切になります。

例えば、以前のコラムにも書きましたが、「現場監督」というこれまでの仕事の概念から、「建築ディレクター」という新しい仕事の概念に置き換えた場合、未来に活躍できる斬新なイメージから、それを成し得るための管理スキルに紐づけ、その成果が日頃の仕事の評価に連動できれば、また新たなやり甲斐に転換するかも知れません。人材マネジメントを行う際にはトップダウンのコミュニケーションに陥らないようにし、他者が与えた目標よりも自身で立てた目標のほうが達成へのモチベーションが上がりやすいので、主体的に推進して行きましょう。

定期的な評価については、出来るだけ客観性、公平性、連動性を持たせ、目標を達成できた際のインセンティブや、従業員自身が部署異動の希望を出す「社内FA制度」などを効果的に取り入れるなど、より主体的にはたらくことができる仕組みに整える事がポイントになるでしょう。

一方、逆に5年をひとつのキャリアアップ期間として、将来的な独立を推奨することも考えられます。

特に、1〜2年で着工後管理を中心とした品質管理、安全管理、環境保全、納材管理を習得し、3〜5年で少し難易度の高い着工前管理を中心とした、工程管理、原価管理、受発注管理、情報管理を習得するなどのキャリアアッププランを敷いておき、将来的には独立し、プロパートナーとしてのシナジーを活用する事も、非常に有効な推進でもあります。

これからは、益々企業を取り巻く環境が日々急速に変化しています。人材マネジメントも変化に対応し、アップデートしていくことで、企業の競争力強化につながりますので、今一度、自社の人材マネジメントを見直すことで、他社に負けない特色や強みを発揮できるような仕組みを検討してみましょう。