品質にかけるコストの適正値とは?

今や、自動車業界を筆頭に様々な不正問題などが消費社会を揺るがしています。我々のような住宅建築業界においても、いずれ大きな …


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今や、自動車業界を筆頭に様々な不正問題などが消費社会を揺るがしています。我々のような住宅建築業界においても、いずれ大きな社会問題が定期的に訪れると私はいつも懸念しております。

公益財団法人住宅リフォーム紛争処理支援センターの「住まいダイヤル」の発足時である2000年からみても、住宅全体の着工件数が減少しているにも関わらず、昨年の統計では相談件数は既に約7倍にまで増加してきています。

クレームを含むこのような相談件数の増加の裏側には、つくり手やすまい手双方に、実は多くの要因が隠されているのです。

すまい手の大きな要因としては、情報社会である現在、大量の情報を個人が様々に収集しながら学ぶ「プロ施主」も増えてきている事から、自身の見識と実態のギャップによる不安や不信が生まれることにより、問い合わせが増えている状況となっております。

また、住宅の場合、消費サイクルが一回性産業と言われるくらい他産業と比べて少ない事から、ほとんどのお客様は営業の説明内容やプラン段階での情報で契約を行わなくてはならず、実際の建つ住宅そのものの良し悪しまでは吟味できない点も大きな要因の1つでしょう。

一方つくり手の要因としては、皆様も感じられているように、決して故意に不具合を引き起こしている訳ではなく、今や技術・技能において「ヒト、モノ、カネ」に纏わるリソースが不足し、スキルを含めた製造改善がほとんど進まない事が大半の要因と言えます。

建築資材が高騰する中、どうしても製造原価に対する見方がシビアになってしまう環境下から、中小工務店より、むしろ大手ビルダーになればなるほど、品質に関するコスト増を嫌う傾向があり、量産体制を担う割には品質に対する意識が希薄になっている傾向が伺えます。だからこそ、どこかで大問題が起きてしまうという業界構造なのです。

本来、すべての製造業における品質コストの原理原則は、「適合コスト」と「不適合コスト」のバランスから見ていかなくてはならないのです。

まず適合コストとは、「予防コスト+評価コスト=適合コスト」で成り立っています。

住宅建築業界における「予防コスト」とは、施工に関するマニュアル整備や人材研修、そして育成などのコストであり、「評価コスト」とは製造過程での第三者検査や散水試験など、プロセスにおけるチェックコストとなります。このコンテンツは、当社ネクストステージが提供するソリューションサービスに当たります。

ではこの2つの要素を持つ適合コストを、一体どれくらいかけるべきなのか?またどれくらいが適切なのか?

そのコストの妥当性を見極める際には、必ず住宅製造における不適合コストを測定する必要があります。つまり以下の公式で表現できます。

「内部不良コスト+外部不良コスト=不適合コスト」

特に「内部不良コスト」とは、住宅を契約してから引渡すまでの、ムリ・ムダ・ムラや、ロスミスによる非生産性コストであり、「外部不良コスト」とは、引渡し後の無料点検や、クレームによるやり直し工事、さらには訴訟などの賠償責任にかかる損失コストとなります。

このように、前者の適合コストと後者の不適合コストの合計。つまり総コストが最も低い状態が、一番適切な品質コストをかけている状態だと言えるでしょう。

我々、ネクストステージのこれまでの経験から社内試算をしておりますが、現在、建物を製造する上での住宅会社の平均不適合コストは、請負金額の約5%前後に達していると試算しております。具体的に3000万の住宅であれば、150万前後の不適合コストが潜在化しているという試算となります。

現在、住宅の請負契約粗利はおおよそ27%前後を目安にされており、実行予算時の粗利の精度にも課題はありますが、仮に正しい数値だったとしても、やはり完工時の粗利が3%ほど減少する事象が非常に多く見受けられます。これは、完全着工化できない業務フローの課題と、品質管理を中心とした着工後の施工管理の仕組みに問題が有ると言えるでしょう。

現在、我々ネクストステージのソリューションサービスの中でも、「標準施工手引書」という品質基準のマニュアル化や、最近では「Architecture Corporate University」という技術者における実践養成講座など、会社としてしっかり予防コストを強化し投資されていくニーズが高い傾向にあります。

ただ、ヒトの確保や育成が難しくなる環境と裏腹に、ヒトに依存しない管理環境を併せ持つ施工管理の正しい仕組みづくりが、これから重要となります。

ただ私が少々懸念しているのは、本来評価コストの在り方が非常に重要な位置付けになってくるのですが、ここをむしろ有効活用されていない住宅事業者様が多い気がしている点です。

評価コストの利点は、物件単位に計上するコストである事から、この取り組みをお客様にしっかりアピールすることで、コストではなく付加価値としての売上に転嫁できる点にあるのです。特に他社との一番大きな差となるのが工務店の施工力であり、この競争優位性を最大化してこそ本質的価値を提供でき、併せて物件単位での品質をしっかり確保できるという一石二鳥の在り方だと考えます。

確かに契約時の瞬間的な粗利確保も大切ではありますが、最終的には利益を確保する事が事業の目的ですので、今一度、予防コストと評価コストの在り方を正しく認識され、品質コストの妥当性を検討頂いた上で、見直して行く事がこれからの住宅事業には大切な基本姿勢であるに違いありません。