今月は、今や深刻な人材不足である現場管理者の雇用の在り方についてお話ししていきます。皆様のお会社では、施工管理におけるスタッフは、毎日ワクワク仕事をされ、リソースも充実されていらっしゃいますでしょうか?
現在、住宅事業者のほとんどが、現場監督が足らず中々新規雇用も進まない。スキルが追いつかない。または、そもそもなり手が居ないといった状況が現実となっています。このような雇用環境から、雇用戦略をどこに舵をきり出すのかという点については、どうも大きく2つに分かれてきているようです。
1つは、現場監督レスという発想から、様々なDX化に着手し、現場訪問をできるだけ回避しながら技術者でなくとも回していける環境を作る遠隔管理戦略と、もう1つは、他社の現場監督の中途引き抜きなどをしたり、未経験者の若いスタッフを雇用し、個別教育でなんとか回しながら対応するOJT戦略の2つです。
両者共に感じることとしては、厳しい言い方を致しますが、つくる為の計画的雇用戦略では全くなく、その場しのぎの対処策でしかないという事です。
何故ならば、両者の考え方は「住宅をつくる」というディレクションで利益を得る工務店事業が考える発想ではなく、「住宅を売る」というプロモーションで利益を得る販売事業の発想でしかないからです。つまり、住宅の販売が事業コアとして潜在化している事によって、つくる事は二の次として位置付けられており、工務部門の雇用についてもつくる事を軽視した経緯の結果という事なのです。
現場監督が育たないと嘆く事業者は多いですが、逆に「どんな仕事ができる人材を求めているのか?」という問いには、明確に答えられる方はほとんど居ません。
つまり、現場監督の仕事や役割という概念が明確でないまま、ただ引き渡しまでスムーズにユーザーとコミュニケーションを取りながら、職人に甘く見られずに段取りができるというくらいの人物像を描かれている事がそもそも問題であり、そんな価値の無い仕事を定義している事から、誰も魅力的な仕事とは思えず離脱して行くという、業界全体が作り上げできた罪にあると私は考えます。
本来現場監督とは、施工管理技士という国家資格が存在するくらいの技能であり、野丁場をメインとする国家資格以上に、戸建分野の施工管理はさらに難易度が高いのです。
その理由には、法令があまりないグレーな領域が木造分野であるという難しさと、ゼネコンのような大規模な建物を常駐管理しながら進めて行くのではなく、小規模の建物を適時管理しながら多物件を進めていくというマネジメントの難しさがあるからです。
現場監督レスという発想も確かに方策としては理解できますが、この戦略に打って出る企業のほとんどは、施工管理という仕事の本質や重要性をあまり理解されておらず、販売事業を出来るだけ効率よく回す為の手段として選択されていく傾向があります。
これでは、空き家対策を抱えている国内の既存住宅などの社会問題に立ち向かっていく、未来の有望な技術者など到底育ちようもありません。まずは、魅力的な価値ある現場管理者像というものをしっかりと住宅事業者側が明確に定義することが最重要課題ではないでしょうか?
我々ネクストステージは、業界で唯一、この戸建分野における現場管理者のあるべき姿を定義し、業界へ発信している企業です。では、現場管理者のあるべき姿とは一体どんな姿であり、どんな価値を提供する役割なのかをお話ししていきます。
まず、保有すべく管理技能は大きく8つあります。管理技能種別で挙げると、原価管理、工程管理、情報管理、受発注管理、納材管理、品質管理、安全管理、環境保全となります。野丁場の場合は、物件規模も大きくなりますので、組織管理という管理技能も必要となります。
そして戸建分野では、この8つの管理技能を身につけながら、常駐管理ではない適時管理環境で仕事をするという事に併せて、情報管理分野であるDXツールなどの効果的な媒体を使いながら有効なディレクションを実践し、半年近い製造工程をマネジメントしながら、QCDの視点で計画通りの完工を成し遂げなければなりません。
このようなプロフェッショナルな仕事は、住宅事業のつくるプロセスを一貫して管理するという重要な役割であり、報酬についても現在のITエンジニアレベル、またはそれ以上でなければならないくらいの重要なポジションである事を認識頂きたいと思います。
今や、若者たちは精神的に弱いのではなく、理不尽で役割が明確でない価値が見出せない仕事で、人生(時間)を過ごしたくないだけなのです。
だからこそ、もう一度現場監督という過去の概念を脱ぎ去り、新たに「住宅建築ディレクター」としての魅力的な仕事の定義と、この8つの管理技能を習得したあかつきにはフリーとして未来に活躍できたり、木造だけでなく様々な工法、また新築だけでなくリノベーションなど、難易度の高いチャレンジを経験として得る事で、ツールだけに頼らない業界独自の目利きという能力も培われていき、これからの社会問題の救世主になり得るのではないでしょうか。
当社では、2024年4月より、「Architecture Corporate University」現場管理者実践養成講座がスタート致します。 コラム本編にも出てきた、これからの住宅建築ディレクターという本質的な技能の醸成を支援するプログラムですので、是非ともご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さいませ。