昨年の工務店訪問から学び得た社内改善の進むべき道

新年、明けましておめでとうございます。2024年は働き方改革が春から施行され、皆様にとっては、より一層の生産性向上を実現 …


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新年、明けましておめでとうございます。2024年は働き方改革が春から施行され、皆様にとっては、より一層の生産性向上を実現していかなければいけない状況となってきました。我々も住宅事業の根幹の改善に繋がる有益な情報を独自のコラムとしてわかりやすく発信できればと考えていますので、今年も引き続きご期待頂けますと幸いです。

 

さて私自身も、昨年より久しぶりに全国のビルダー様に直接訪問し、各々のお会社の成果や課題、そして今後の方針なども含め、沢山お話しを伺って参りました。そこで共通する気付きや今年の最優先課題となる社内改善ポイントなどを、年頭に皆様方に整理しながらお伝えできればと思っております。

まず今回の全国訪問で総体的に感じたことは、受注難で実績を落とされ、ネガティブな状況下におかれているビルダー様も一部いらっしゃいましたが、思ったより少なく、むしろ昨年よりもお客様の接点状況が良くなってきたというビルダー様が目立ちました。

特に地域で一番多い層である、年間20棟規模までの注文系ビルダー様の明暗がくっきりと分かれ初めており、少棟数の注文と言えども勝ち組みの工務店様は、原価高騰による単価アップ環境から顧客層をむしろ引き上げ、これまでのマーケティングからターゲティングにシフトし、自社の価値をより色濃く発信しながらファン化させている。そして無理のない着工スケジュールで敢えて列を成させるという「着工数限定型」の戦略が、コロナ期間中からも相変わらず安定受注をされている傾向にありました。

逆に「着工数拡大型」の思考をお持ちのビルダー様は、狭くなった顧客ターゲットを広げようとした事から決定的な訴求ポイントがブレてしまった分、価格的に押し込んだり、ユーザーペースに流れ込みながらの無理な受注での着地に至る事で、増収以上に減益が目立つ印象にありました。

この両極端な現象に対し、もう一つ面白い傾向も見えてきており、特に高額のリノベーション物件の受注が増加している工務店様は、やはり前者の戦略を講じておられる事業者が目立ったという事です。つまり、本質的な差別化が商品としてやりずらい環境下、商品の良し悪し以上に、自社が訴求したい価値やイメージを徹底して「売り方」に転換され、顧客ターゲットをガッチリとグリップされている事で、顧客の特定化とローテーションが進んでいるように思えました。

 

一方、多棟数のビルダー様については、不動産戦略を基盤に安定的な完工棟数を意識し販売をするものの、やはり在庫処理による販売値引きや、製造過程でのロスミスによる完工粗利が計画通りに着地できない課題から、増収してもかなりの減益に至ってしまっている様子が伺えました。いずれにせよ、企業規模に応じた創意工夫の戦略を凝らすものの、思うような成果を得にくい時代に来たことは間違いありません。

また契約時の粗利については、注文住宅でも規格住宅でもほとんど関係なく、おおよそ25%ベースの請負粗利である事も見えてきました。本来、販売する住宅体系から業務工数も経費として加味するはずが、原価高騰から中々販売価格に転嫁出来ないという現状も否めません。

そこで、2024年の共通的な課題は、昨年より何度もお伝えしてきたように、とりあえず受注した案件をQCD視点で計画通りの完工を実現する体制を構築することが何より最重要である事を改めて認識しました。

なぜならば、ほとんどの住宅事業者の課題の共通点として、実行予算時の粗利と完成時の粗利の差異が、2∼5%ほど下振れしてしまっている現実があり、さらには実行予算時までに既に概算見積時の粗利から下回った状態になっている事業者も少なくなかったからです。

この実態は、受注数のアップを目指す以上に最優先で改善すべき課題であり、年間の利益視点から見れば、非常に効率の悪い経営体質に陥っており、まずはこの悪循環を見直す必要があります。これは他業界ではありえない、「非常識の常識化」に繋がっている住宅業界独自の感覚と言えるでしょう。

 

2024年度の進むべき改善のテーマを、大きく3つに絞りこんで取り組んでみてはいかがでしょうか?

  1. セールスでは、限られた貴重な案件の請負時の粗利を、如何に価値を出して高く設定できるかにチャレンジして行くことの成果にこだわる。
  2. 設計では、請負う案件の実行予算精度を如何に精度高く計画し、建築確認業務を仕事のゴールにせず、工務にしっかりバトンを渡せる完全着工状態まで責任を持つことにこだわる。
  3. 工務では、目的のない作業化した段取り業務の概念を脱却し、着工前計画に対してQ(品質)・C(コスト)・D(納期)という3つの視点で、しっかりと想定内で完工させるマネジメントにこだわる。

このような本来の各部門の役割や目的の再認識から徹底し、住宅事業としての価値を利益に転嫁できるよう、全社一丸となって推進する事が重要だと考えます。そのためにも人事評価制度の見直しなども視野に入れながら、付加価値生産性を高める風土を醸成できる仕組みづくりに執着していかれる事を期待しております。