2024年の経営資源の選択と集中を考える

2024年4月からは、これまで先延ばしになったていた中小企業枠の労働時間の上限が課せられるなどの働き方改革関連法の期限が …


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2024年4月からは、これまで先延ばしになったていた中小企業枠の労働時間の上限が課せられるなどの働き方改革関連法の期限が迫ってきましたが、住宅建築業界においては従業員の労働環境改善に辿り着く以前に、事業収益に対する課題や人材不足、スキル不足といった根幹の課題が前提にあり、抜本的改革レベルまでは非常に厳しい道のりなのは間違いありません。

では現在、住宅事業経営者はどのような課題があると捉え、またその課題に対する優先順位をどのように理解しているのでしょうか?

それでは上流の活動から課題を挙げていきましょう。

まず営業活動における課題としては、集客数契約数粗利のトリプル減少に尽きると考えます。これは、資材高騰における原価と販売単価の上昇によるターゲット顧客層の縮小によるものと、建物の同質化による決定的な差別化ができない環境から、マーケティング効力が脆弱化し、徐々に営業活動も弱くなってきていることです。

一方、設計活動における課題としては、さまざまな専門業務(構造や性能等)のアウトソーシングは進んだものの、設計担当者の日々の仕事の在り方から建築確認が自身のゴールとなり、専門業務を取りまとめる力や、プラン設計ができても実施設計や工事監理といったつくる視点の役割が充分にこなせないといった、スキル面での課題が浮き彫りになってきています。

これを受けて工務活動の課題としては、上流部門である営業部門や設計部門との業務連鎖が上手く行かない事から着工後の対処業務も増大し、仕事の付帯化が進行していきます。さらには建築現場を適時管理をする上での目的やタスク、そして施工基準などが曖昧なまま、職人を含めた人的依存管理から脱却できず、組織も疲弊していく傾向にあります。

このような上流から下流までの現状を踏まえると、結果的に会社経営そのものを悪化させてしまいます。そのポイントは大きく3つあります。
(1)付帯工数の増加(リードタイムの遅延)によるキャッシュフローの悪化
(2)業務連鎖の不具合から完全着工できず見えない内部不良コストの増加
(3)下流の製造過程での管理のバラツキから、引き渡し後の外部不良コストの増加

このような課題全てに「オカネに関すること」が山積している事で、経営者自身が重点課題の選択と集中を正しく見極められなかったり、優先順位を間違ってしまったりする事が多々あるのです。

その判断の違いは、オカネの改善ポイントを「売上」「粗利」「利益」のどれに置くかによって、事業活動や改善政策のコアは大きく異なってくるのです。

是非ここで改めて皆さまに再認識して頂きたいのが、第一優先の改善目的を「利益」に軸点を置いて頂きたいという事なのです。極端に言い換えれば、増収ばかりを目指さず、例え減収でも増益が目指せるという健全な体質にしていく事が、2024年以後、特に求められる時代なのではないでしょうか。

日常のあるあるですが、例えばこんな一例を皆様はどう思われますでしょうか。

現場監督に対して現場訪問回数が多い事から、残業等の防止の為にも行動を制限したり、体制無しにDXツールを無理矢理導入したりするケースなども目立つ一例です。これはどんなオカネを改善させるために必要な行動なのか?仮に訪問回数が減って工数削減できたとして、削減できた工数を一体何に費やして、どんなオカネを生み出すのか?という事が明確に定まっていないのです。もしかすれば、品質をトレードオフさせてしまって、実は不良コストをむしろ生んでしまっているかも知れないのです。

ここで結局一番の問題とは、このような明確な動機がないまま、目的と手段が逆転している状況でトップダウン的な対処をさせたとしても、本質的な利益改善や成果は中々生まれず、逆に組織までも悪化させてしまう事に繋がって行きます。

今回のテーマでもある経営資源とは、これからの時代、やはり利益を出す為の希少な「人財」に置き換えても決して過言ではないでしょう。

事業とはどこまで行っても、『サービス価値=利益』です。特に住宅事業者の収益確保に欠かせないのは、粗利率を契約から竣工まで前後させず、計画通りのストーリーをやり切る為にも、全ての部門が主体業務で回せる仕組みに少しずつ向かわせなければ、社内スタッフの人財化はしていかず、ずっと付帯業務に取りつかれた馬車馬のような仕事からは、到底抜けきれないに違いありません。

2024年こそ経営力を出来るだけ分散化させず、自社の強みの更なる強化と、利益に起因する最重要課題の選択を正しく行い、ここに集中してヒトを中心とした資源投下をしていかれる事で、これまでになかった成果がきっと得られる事を信じております。