昨今、住宅事業者にとって、検査業務は身近なモノづくりの大切なタスクの1つになってきました。検査の基本的な意味とは「ある基準をもとに、異状の有無や、適不適などを調べること」とされています。ここでいう「ある基準」とは、設計図書はもとより、建築基準法や瑕疵担保履行法などの法令に対し、照らし合わせるという意味を指します。
このような検査は、総じて住宅を建てる前、そして建てている期間に実施される訳でありますが、各々の検査業務には様々な目的や意図が存在しますので、今回のコラムで改めて正しい認識を深めてください。
まず、建てる前のフェーズでは、建築確認申請が挙げられるでしょう。これは、新築工事や大規模な増改築工事等に着手する前に、確認検査機関もしくは特定行政庁に必要書類を添えて申請し、建築基準法や条例に適合しているか否かの確認を受けることとされており、併せて製造過程で申請内容に対して完了時や中間時などに、確認検査を実施しなければなりません。これの目的は、世の中から違法建築物を排除する為の目的があり、ユーザー視点の品質確保ではなく、あくまで行政視点での審査及び検査である事を理解しておきましょう。
↓ ↓ メールマガジンの続きはこちらから ↓ ↓
この瑕疵検査の主旨も同様、少しでも損害発生のリスクを低減させ、保険制度を安定的に運営することを目的に義務付けており、施工におけるユーザー視点の品質確保の為ではなく、保険証券発行のリスク軽減の為の検査である事を重ねて認識しておいてください。
これ以外にも、金融の領域ではフラット採用時の適合検査や、建設性能評価取得時の性能評価検査などもありますが、検査回数が多いからといって両者ともユーザー視点の品質確保を充分に担う訳ではなく、各々の制度特有の目的達成や、リスクを軽減する為の内向きな要素が含まれています。
このように、様々な内向きな意図や目的で義務化される検査業務であるだけに、住宅事業者はコストやリードタイム面で非常にストレスに感じておられ、これ以上の過剰な検査というものは、敢えて好まない風潮が広まって来ているのも事実です。特に現場管理者の立場からすると、少ないリソースで多くの物件を適時管理していく為には、少しでも自身の管理タスクを減らしていきたいし、また職人への指示などもやりにくい製造環境から、ついついユーザー視点の倫理観さえ忘れてしまいがちで、気がつけば自身の作業合理性ばかりに固執してしまっていく状況も少なくありません。
ここで皆さんに間違って頂きたくないのが、現在存在する様々な義務検査を仮に導入しているからといって、ユーザーの大切な家づくりの品質が確保されたり担保される訳ではなく、どこまで行っても、皆さん会社の施工管理や工事監理の仕組みと実践に尽きるということを、肝に命じて頂きたいのです。
考えてみれば、お客様は数千万という大きな買い物に対し、数十年もの住宅ローンを定年まで借入し、一生に一度の家づくりを皆さんの会社に覚悟されたのですから、住宅品質に対する軽率な考え方に陥ってしまってはいけません。やはり製造管理を担う立場として、そしてプロの技術者として、ユーザーの期待に応えられるようなしっかりとした品質の確保を担える仕組みと実践を内製化し、日々、知恵を絞りながら改善を繰り返さなくてはいけないのです。
我々ネクストステージの第三者ヒンシツ監査は、皆様の施工管理や工事監理上の仕組みの中に存在させる唯一のサービスとして提供して参りました。よく瑕疵検査や様々な検査会社と引き合いに出されますが、目的が全く異なり比較する対象ではなく、皆様の製造管理プロセスに内製化させ、如何にムラの少ない品質管理を実現できるのかのお手伝いだと考えております。1回の検査料のコスト比較は、あくまでも有資格者の現場派遣料というコスト比較でしかなく、皆さんの達成したいゴールやあるべき姿に近づけるサービスであるか否かという点を吟味して頂く事が一番重要だと思っております。
いずれにせよ、現場そのものの品質を担保したり、代わりに管理を代行するものではなく、人が現場で住宅を製造する上で、当人である職人、そしてその現場を担当する現場監督とは別に、第三者という客観的視点から敢えて目を入れる事により、更なる技能のムラを軽減させながら一緒に品質を安定させ、様々な傾向や分析をもとに再発防止や未然防止に取り組んでいくことと考えています。そして、製造に関わる技術者の教育や育成環境に寄与しながら、つくり手としての製造力強化に繋げていく事が、業界の活性化にとって最も大切なことではないでしょうか。