業界誌などで、ユーザーが家づくりに求めるニーズや購入動機などのアンケート調査を見かけた方々も多いのではないでしょうか。アンケート結果は非常に説得力があり、皆様もその結果を受けて、各々にサービス改善や商品開発などを見直されることでしょう。
アンケート結果を見ても、ソフト面では、住宅営業を中心としたスタッフなどの対応や好感度、そして間取りやデザイン、また引き渡し後のメンテナンス体制など、いつの時代も根強いニーズがありますし、ハード面では、高い耐震性や耐久性、そして省エネ性などが、購入動機として年々高まっています。
このようなアンケート結果のなかで、あまり上位に目立ってこない要件が「品質が高い」という内容です。これは、とりわけ決定的なユーザーニーズになるというより、当たり前の要件として認識されがちな部分で、敢えて住宅事業者もこれをシーズとして扱わないという連鎖も、業界文化の1つだといえます。
皆様に、ここで勘違いしてもらいたくないことが、アンケート結果に対して、施工品質というニーズそのものが、あまりユーザーにとって関心がない、また最優先要求でないという解釈を、ついつい安易に考えてしまうことです。一方、経営者や営業スタッフからしても、まだまだ自社の住宅はそれなりに施工が出来ているという印象だけで、施工品質という部分にあまり深く関与されないケースも少なくありません。
ここで皆さんに振り返って頂きたいことは「家づくり」というものは、長い人生の中で一番高額な投資であり、一生に一回と言われる消費機会であるということです。つまり、消費者が複数回の消費機会から失敗や成功を重ねながら学び、修正しながら買い直して行く構造ではないということです。一回消費すると、そこから先は「建ってしまった住宅と、組んでしまったローンが一生残る」という現実から、消費者にとって、最初で最後の経験で終わってしまうからなのです。
消費者の方々は、皆さんのセールスアプローチや商品訴求を信じ、また、様々なSNS等での情報の裏付けに頼りながら家づくりを検討していかなければならないので、ユーザー心理としては「自分たちの住宅は、きっとちゃんと建つだろう!」という性善説を前提に住宅を購入してしまっているだけなのです。
このような業界構造であることを再認識された皆さんは、住宅に従事するプロとして、改めてどのように感じられましたでしょうか?
ユーザーに提供される内容が、まだまだ「地域密着」や「責任施工」というスローガン的訴求だけで済まされていませんか?
「◯◯年保証」というパッケージ商品だけで、ユーザーに何となく安心を売って終わっていませんか?
住宅の性能値を建てる前の段階で立派に訴求されながら、本当に実質的な性能値を発揮されていますか?
訴求することや、様々なサービスを提供することは、とても営業上大切なことなのですが、なんとなく業界全体が外部のパッケージ商品や、建てる前の企画や設計段階で想定しているだけの性能値など、形式だけの安易な訴求に流れていってしまっている感覚は否めません。
ただ、施工品質が高ければ高いほど住宅が売れるという方程式が根付けば分かりやすいのですが、残念ながらそのような方程式は存在いたしません。しかしながら、施工品質が高ければ高いほど、工事中の不良コストや引き渡し後のメンテナンス費用などへのメリットはもちろん、何より住宅会社への安心や信頼という無形の財産をオーナーに提供できることは、確かな価値だと思います。
家づくりというものこそ、プロとしての認識は、必ず「性悪説」が前提でなければならないということです。なぜならば、一貫して短期間に工場ラインで生産し納品しているのではなく、仮設工事から外構工事に至るまで、30種近い職人の手で半年近い月日をかけて製造するプロセスに、間違いの無い施工など現実にあり得ないからです。
本質的な住宅事業者のプロとしての思考とは「基本、人は必ず間違えるものであるからこそ、人の行う仕事のムラを、プロとしていかに軽減させるかに挑戦すること」であって、そんな性悪説な意識が社内にしっかり根付いているからこそ日々努力し、それを仕組みに転換しながら高い製造力を組織として醸成しようとしていくからなのです。
逆に、ミスなくやり続けることを期待し、外郭要素だけでユーザーに訴求している住宅事業者とは製造力に格差が生まれ、既に圧倒的な競争優位性を手にしている企業もあります。
弊社が主催し、毎年開催している、Japan Housing Quality Award で受賞された住宅事業者様たちは、少なからずこのような性悪説思考を敢えて当たり前だと捉え、その為に自分達でどんなことができるのかということを常に探求しながら、トライ&エラーを繰り返し、精進されている企業ばかりです。
そういった価値観を皆さまに出来るだけわかりやすくお伝えできるよう、高品質な家づくりに取り組まれているつくり手のドキュメンタリー動画や、受賞対象となった物件のオーナー様のリアルボイスなどをアップしております。特にオーナー様にとっては、性善説を前提として意識していなかった施工品質に対して、今回の受賞を機にどのように受け止められたのか、という非常に興味深いリアルな声もいただいていますので、是非ご覧くださいませ。
もうすでに、国内のトレンドは、『量から質』へ転換しております。短期間では内製化できない製造力を社内醸成していくためにも、今回で3回目となる、Japan Housing Quality Award 2025 のエントリー物件の着工期日が、秋くらいからもうそろそろ最終締め切りとなってきます。
年々盛り上がっていくこのプレミアムアワードに是非ともチャレンジしていただき、住宅事業者としての大切な使命や気付き、何よりこれを機に自社の本質的な製造力の改革に着手されてみてはいかがでしょうか。心よりエントリーをお待ちしております。