~東京証券取引所 上場記念コラム~ 『20年間の住宅製造改革への志』

おかげさまで2025年5月23日、弊社、株式会社NEXT STAGEは東京証券取引所、東京プロマーケット市場において上場 …


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おかげさまで2025年5月23日、弊社、株式会社NEXT STAGEは東京証券取引所、東京プロマーケット市場において上場をさせていただくこととなりました。これもひとえに、全国の住宅事業者の皆様、又業界パートナーの方々のご理解とご支援があったからこそ実現できたものと、改めて感謝申し上げます。

サラリーマン時代、ハウスメーカーおよび建材商社で長年働き、日本の住宅供給の現実をたくさん体感してきました。現場で施工される品質に対する人的依存環境の実態や、住宅事業者側の『つくる』に向き合う倫理観、そして製造関係者のこれからの資源確保など、様々な観点からこの業界に対する未来の製造環境への危機感を抱いたことが、創業のきっかけでした。

2006年の創業後、すぐにリーマンショックが訪れ、ベンチャー企業が起業をし成長していくという支援環境そのものが全く整備されておらず、まだ瑕疵担保責任履行法も制定されていない状況下で、民間ではいち早く第三者検査というサービスからスタートをいたしました。しかしながら、我が社のサービスをどれだけ住宅会社様へ提案したところで、『コストアップ』という一言だけで、前向きに検討していただける住宅事業者様は、当時少なかったことを思い出します。

建てれば売れるという平成バブルからの住宅供給量の競い合いがまだまだ定着しており、『売ることが目的で、つくることが手段』といった業界体質と、これまでの職人の材工請負から、元請会社の材料支給による職人手間受け体制への大きな転換もこの頃から拍車がかかってきました。

元請会社が材料利益を追求し、建物全体の利益に執着していく裏側には、職人の『手間受け叩き』が横行し、無残にも今現在では職人の後継者づくりどころか、なり手不足という後遺症が残ってしまったという、業界の功罪が今になって見え隠れするのです。

モノづくりのテクノロジーはそれなりに進化してきたものの、まだまだ人による現場施工に依存しており、一方、住宅の売り方や買われ方はどんどん進化していくものの、施工管理においては個人商店化が蔓延し、ロジカルな生産性改善への兆しが見えてこない環境が続き、必ずや、すまい手とつくり手との大きなギャップが生じる時代がいつしか訪れる事を常に考えていました。

現在ではSNSを含め、情報過多な時代に突入してきた背景からも、紛争処理センターへの相談件数が2000年から既に7倍を超える年間4万件近い相談件数に達し、またその相談件数の内訳をみても、約6割が住宅トラブルという相談内容になってきています。

この現実は、もはや住宅会社が今後も自助努力で対応していくというフェーズではなく、既にユーザーの要求レベルとつくり手の製造能力とのギャップが埋まらなくなってきているフェーズであると言っても過言ではない状況でしょう。だからこそこれからは、現場施工業務に対して、しっかりプロセスコントロールしていくという仕組みづくりに専念していかねば、工務店としての生命線を絶たれることになりうる大きな命題なのです。

我々NEXT STAGEは、2013年から第三者サービスを『検査』から『監査』という新たな概念で再出発いたしました。それは、個社別に全く仕様が異なる住宅に対して、汎用的な検査項目で対応していることへの違和感から生まれたものでした。法令で定められている範囲が2割程度しか存在しない(※弊社調べ)にもかかわらず、それ以外の目指すべき基準すら存在しない木造住宅の品質管理に、行政や瑕疵保険のような汎用検査の効果はいったいどれだけのものなのか、という疑念が発想の原点でした。

その疑念を解消するためにも、我々は、まず『標準施工手引書』という個社別の品質基準づくりを試み、現在では1000社を超える住宅事業者にご愛顧頂き、一つの業界スタンダードを構築してきました。しかしながら、マニュアルが一人歩きしたところで、住宅会社の品質向上が成し得るかというと、これもまた難しい。そこで、各々の施工基準に基づいた第三者的評価をカスタマイズできる環境を実現したものが、現在の第三者ヒンシツ監査サービスとして確立されているのです。

さらに当社は、2020年から業界特化型の学習環境プラットフォームサービス、さらに2021年にはデータ&アナリティクスサービスへと領域を拡大し、アナリティクスクラウドQualIZ(クオリツ)を運用した製造強化の為のナレッジ化を意識したPDCA強化に踏み切りました。

これまで当社の第三者ヒンシツ監査サービスは、ユーザー様への安心・安全を少しでも高いレベルでお届けすることを目的としていましたが、何より重要なことは、住宅会社様の施工の事実・事象を公正に表面化させるためのファクトデータを抽出し、施工状況をいかにデータドリブンに分析して、未来の施工管理体制強化への具体的な足掛かりをつくることだと考えてきました。そのためには、アナリティクスという領域への着手が、これからの当社にとっての重要な位置付けとなってきたのです。

アナリティクスデータからは、自社のボトルネックが「どこに」「誰に」「どのタイミングに」存在しているのかなど、様々な角度から自社の重要課題を抽出し、いかに再発防止に繋げることができるかのファクトコントロールのための仕組みづくりのステップとなります。

施工管理だけでなく、建築士法に基づく工事監理や設計図書精度はもとより、しっかりとユーザーと交わした契約内容をQCD視点で完結できるこれからの正しい製造体系づくりが鍵となります。今後は、建物に対する品質改善のためのAIなどを取り入れたアナリティクス技術の進化で、ヒトにまつわる予知行動や評価も同時に行いながら、スキルの足らない部分を補うための学習環境や学習カリキュラムにも転換していけるよう、現行のクラウド動画学習サービス『ACRO5』の刷新連携も含めて、『つくる』に特化をした質の高い住宅製造ソリューション事業にこれからもチャレンジしていきます。

これからも我が社の挑戦にご期待いただきまして、引き続きご愛顧賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。