現場監督の仕事に対するモチベーションアップについては、様々な住宅事業者様から相談を受ける事が非常に増えてきました。なり手不足の中、限られた社内の現場監督達を、如何に主体的で能動的な姿勢に変えていくかを試行錯誤されている経営者様も多いのではないでしょうか。
さて、「モチベーション」とは一体、どんなものでしょう?
モチベーションは、しばし仕事関連に向き合う個人の心理状況をイメージされる方が多いと思いますが、仕事に限らず、プライベートにおける趣味や興味といった分野においても同様であり、広義でいうと、自身の目的や方向に対して「行動する為の動機や意欲」を指します。
実はモチベーションには2つの要素が存在し、1つは、自分以外からの評価や報酬を得て高めていく「外発的動機付け」と、もう1つは、本人が自らの思いを実現するために高める「内発的動機付け」の2つがあります。
ここで注意しておきたいのは、最近のモチベーション低下の解釈が、外発的動機付けばかりに注目しがちな点にあります。言い換えれば、現場監督のモチベーション低下の理由は外発的動機付け、つまり、会社側の評価や報酬による要素が起因していると勘違いし、むしろ理不尽な仕組みや環境改善によって、後手の循環に陥ってしまう会社も少なくありません。
現場監督を担うスタッフの本質的なモチベーションの低下は、内発的動機付けにある事が、むしろ一番の大きな課題であると言っても過言ではないでしょう。会社側にとって言えば、現場監督という仕事の魅力ある明確なビジョン、ミッションの共有と醸成がない事が、言わば根本原因でもあるのです。
現場監督のモチベーションが維持できない理由には、下記の4つの特徴が挙げられます。
1つ目は、現場管理の仕事に対する「目的や目標が定まっていない。また、目標が高すぎる」ことです。そもそも施工管理は何を目的に実施するのかという正しい意味を伝えないまま、何となく現場を管理させ、そして工期や原価、また施工品質を含めた理想的な引き渡し結果ばかりを求められてしまう点です。これは、目的や方向付けをそもそも明確に定義していない事が、内発的動機付けに支障をきたしています。
2つ目は、「頑張っても適切な評価がされない」ことです。これは現場管理棟数量などに左右されがちな昨今、報酬以前に質的評価よりも量的評価の傾向が強く、さらに評価軸も定量的ではなく定性的である事の問題が、これも内発的動機付けに影響を与えてしまっていると言えます。
3つ目は、「仕事が面白くない」ことです。これは、現場監督としての仕事の価値がどこにあり、日々の施工管理の仕事が、自身のキャリアアップという線に繋がる成長可能性や、魅力付け(ワクワク感)がない事で、内発的動機付けにまでも至らない要因の1つです。
4つ目は、「仕事内容に意義を感じられない」ことです。これこそ自身の仕事による存在価値に関わる重要な事なのですが、仕事を通じてどんな「御用達」ができるかという感覚ではなく、どんな「御用聞き」をするのかというレベルにとどまり、作業化してしまうことによる内発的動機付けを弱める点です。
このように、内発的動機付けがなされないことから、二次的に外発的動機付けをモチベーションの低下理由に、結果委ねてしまうのですが、やはり根本の要因は内発的動機付けを如何に強めて行くかに課題が山積しているのです。
それでは、どのようにして内発的動機付けを高めていくのかの代表的なポイントを、6つご紹介していきましょう。
まず1つ目は、「わかりやすいゴールを作ること」です。例えば、我々プロの現場監督のあるべき姿は、「実行予算=完工粗利である」とか、「多少の品質や生産性を落としても安全第一である」など、パーフェクトでなくとも、何かシンプルな共通のミッションを作ることです。
2つ目は、「小さな目標を細かく設定すること」です。営業などは細かい目標を作りますが、意外にも製造側は、粗い目標を設定しがちです。例えば、木造建築を行う場合、一番重要なスケルトン部分の対策として、「防水工程での散水試験だけは絶対にクリアする」など、大切なマイルストーン毎のシンプルな目標があっても良いかも知れません。
3つ目は、「仕事をゲーム感覚で行う」ことです。特に施工管理に従事する現場監督は、一般的に仕事を楽しいと思っている方は少ないと思います。考えてみれば、オーナーの一生に一回の資産を形成するという、本来楽しいやり甲斐あるイベントであるはずなのです。だからこそ品質をトレードオフさせず、契約通りの期間とコストで、協力業者達をまとめていきながら計画通りのものを実現させていくという、現場監督でしか味わえない醍醐味をどうやってゲーム感覚的に作り上げて行くのかが、大切なポイントになるでしょう。
4つ目は、「自分自身の強みを分析してみる」ことです。何となく作業チックに日々を過ごしていくのは非常に勿体無いので、例えば自身の強みが「職人達とのコミュニケーション」であれば、ただ顕在化した内容に対しての対話で築く関係性ではなく、施工管理の原理原則をしっかり学んだ上で、潜在化した内容に対して課題解決を対話で紐解く関係性を築くと、どんどん自身のスキルアップを介してモチベーションも上昇するはずなのです。
5つ目は、「抱えているストレスを一度書き出してみる」ことです。これは、現場監督だけに限りことではなく、一般的に社会で働く人すべてに言える事でありますが、とにかく一人で抱えることそのものが不健全である事から、一旦吐き出してみる事でスッキリしたり、客観的な気付きが改めて生まれてくるものです。
6つ目は、「モチベーションの高い人から刺激を受ける」ことです。我々NEXT STAGEの「Architecture Corporate University」(現場監督向け実践養成講座) も、すでに約400名ほどの卒業生を排出しましたが、多くの若い卒業生が今や工事部長や役員格になられている方が非常に多いのです。この現象は、同じ役割で様々な悩みを持った全国の現場監督同士が対話し、互いの悩みを分かち合いながら、自分達の仕事の価値をどうやって見い出し、何を達成して行くのかという強い使命感を得る事ができ、成果を出されています。こういったスクールなどへの参加から高いモチベーションを持つ方々からエネルギーをもらうことも非常に効果的です。
今や大工を中心とした技能士も不足して行く中、これからは新しい施工管理の仕組みを動かす建築ディレクターが必ず必要となってきます。このコラムを読まれた方々には今一度、現状の工務組織を見直し、つくる強みを醸成するための貴重な人財化対策を真剣に考えながら、「最強の工務チームづくり」に挑戦していただきたいと思います。我々NEXT STAGEも、そんな希少な人財づくりをしっかりとご支援していきたいと考えております。