現場のディレクションが鍵となる、これからの情報管理

昨今、国交省のすすめでもある「e施工管理」の推進については、既に耳にされていたり、ご存じの方も多いかと思います。e施工管 …


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昨今、国交省のすすめでもある「e施工管理」の推進については、既に耳にされていたり、ご存じの方も多いかと思います。e施工管理を簡単に表現すると、ITを活用した施工管理推進の事であり、情報基盤が施工管理を下支えするという考え方であります。特に、中小企業が中心となる住宅供給環境からも、利益の源泉である建築現場の施工管理の高度化や効率化が、今や不可欠になってきているのです。

一般戸建住宅については野丁場工事と少し違って、大規模な常駐管理ではなく、小規模かつ多棟数を同時に適時管理しないといけない環境下であることから、ITを使った情報管理の仕組みは、なおさら重要だと言えるでしょう。

第二次世界大戦前までの近代建築から、大戦後の現代建築に至るまで根付いてきた施工管理上での4大管理と言えば、やはり「工程・原価・品質・安全」です。これらは今でも重要視されていますが、これは長きに渡っていつの時代も、それなりに充足した技術・技能資源がある環境下が背景にある前提だということを、改めて認識されておくべきでしょう。

つまり、これまで訪れなかった職人不足やスキル不足の施工環境下においては、旧態依然としたこれまでの施工管理のやり方から早期に脱却し、進化させる必要があるという事なのです。その環境下を下支えしていくためには、これまでの原理原則を覆すのではなく、施工管理全体の中での役割の1つでもある「情報管理」を如何にステップアップさせるかで、これからの施工管理全体の成果は大きく変わっていくのです。

まず、情報マネジメント基盤をITツールに置き換えて考えると、情報管理のイメージがわかりやすいかもしれません。ただ、「ツール導入=情報管理実現」でない事だけは誤解が無いようにしておきましょう。ほとんどの住宅会社では施工管理アプリ等何らかの導入をされておられると思いますが、日々どのように使っていますでしょうか?また、それが何となく作業になっていませんでしょうか?

作業化してしまっている場合、その作業化している業務が、そもそもなぜ(why?)しなくてはいけないのかという、目的と動機を理解されていない状態のシゴトになってしまっていることが要因です。例えば何となく職人に施工した写真をアップしてもらう、設計図書や工程表を共有するなどが単なる作業になってしまいがちです。決して、この作業が不必要である訳ではなく、受動的な施工写真データの受け渡しや保存、工程表や設計図書の業者共有、そして業者とのチャットコミュニケーションというところに惰性感がきっと多いのだと思います。

情報管理を成功させる大前提には、製造側のスタッフが、如何に元請側が欲しい情報を前もって準備しておくかであり、またその情報そのものが適切か否かを事前に判断しチェックしたり、伝わりにくい詳細を予め分割・翻訳したりと、製造側に早い段階で精度の高い正確な情報を適切に運ぶ取り仕切りが必要です。

これからの情報管理が施工管理上において価値を成すとした場合、どんな取り仕切りが可能になれば、スムーズにいくのでしょうか?

そもそも「管理」とは、物事や一定の事務を管轄して取り仕切る事を示します。これを施工管理に置き換えると、お客様との契約内容において、QCDSの視点で現場管理責任者が全ての業者を管轄し、計画通りに完成させることです。

つまり、上記の条件を情報管理のタスクに落とし込むとすると、下記の5つの内容がポイントとなります。

お客様との工事内容、つまり設計図書が正しく表現され業者に伝えられるか
① Q:Quality(施工品質)をどのレベルで遵守し、ムラなく納めるか
② C:Cost(製造原価)が、材工含む実行予算通りに履行されるのか
③ D:Delivery(工期)が、適切なマイルストーンで最短で進められるか
④ S:Safety(安全)が、常に保たれながら工事が進められるか

これらのポイントを成し遂げるために、何をいつまでに、どのように運用すれば、最適な情報管理が行えるのかを探求することで、例えば、現在お使いの施工管理アプリの社内運用は本当に正しく利用できているのか?という問題提起も一度していただきたいと思います。

ただの図面や工程表の共有から、実施設計の精度アップや、品質をトレードオフさせない最短工期の作成に力を入れること、工事写真をただ作業的に撮影しているところから、そこに写っている施工現状が本当に適切なのか否かの判断を強化することも重要でしょう。

この5つのポイントには全て共通点があり、着工後の成果に影響を与える正しい着工前計画を、より適切かつ的確に業者に伝え、理解させることが重要です。さらに推進が活発な会社では、原価管理を情報管理に転換し、受発注管理や納材管理といった出来型と出来高の管理までを、一貫しておられるところも数多くあります。

これからの施工管理はまさしくディレクション能力が鍵を握ることから、まずは本来成すべき主体業務と付帯業務を切り分け、情報管理推進が主体業務の効率化と付帯業務の削減に寄与できるような、新たな建築ディレクターとしての情報管理業務を社内醸成させていく事で、これまで以上の生産性向上に努めて頂けたらと思います。