建築士が真剣に取り組むべき工事監理

皆様は「工事監理」という正しい役割認識をご理解されていますでしょうか? これまでにゼネコン等、野丁場工事経験のある方なら …


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皆様は「工事監理」という正しい役割認識をご理解されていますでしょうか?

これまでにゼネコン等、野丁場工事経験のある方なら当たり前のようにご理解されていると思いますが、一般戸建住宅等、町場工事のご経験しかない方には、聞き慣れない言葉なのかもしれません。

我が社も沢山の建築士と関わり事業を推進していますが、特に野丁場工事から現在の戸建建築に転職された建築士のほとんどの方々が、この戸建建築業界の工事監理に対して違和感を感じられます。

戸建建築業界では、工事関連はなんとなく「施工管理」に包括して語られてしまうケースがほとんどですが、「工事監理」は、あくまで建築士の責任において実施しなくてはならない建築士法に定められた役割なのです。皆様にはあまり知られていませんが、工事監理を怠った事による懲戒処分例も多々あるのです。

「かんり」という言葉が重複してしまい、業界では間違いやすい事から、漢字の成り立ちで「竹管」「皿監」という言葉で表現される事も多いと思います。

 

戸建建築業界でスタンダードな「竹管」と言われる「工事管理(施工管理)」とは、そもそも職人達が施工を進める上で、工事現場をまとめるために「工程管理」「品質管理」「安全管理」「原価管理」などを行いながら、工事を進めて行く事を言います。まさしくそれを担う現場代理人が「現場監督」なのです。

一方、「皿監」 と言われる「工事監理」は、建築士の責任で工期と設計図書を照らし合わせて、設計図面の通りに実施されているかを確認することを指します。

工事監理者は、設計図書のとおりに工事が行われているかを確認し、欠陥の発生を未然に防ぐ、建築主の代理人としての重要な役割を担っています。 一定の建築物の工事監理は建築士の独占業務でもあり、有資格者としての責務を負っているという事を再認識頂けたらと思います。

 

現在の戸建建築業界での工事監理の状況は、非常に厳しいものとなっております。そもそも何をすれば良いのか?どんな報告書を出さないといけないのか?など、まだまだ役割認識から改めてご理解頂かないといけないレベルであり、現実には確認検査や瑕疵保険検査の立ち合い等に留まっているのが現状でしょう。

施工管理を担う現場監督は、特に建築士を有しなくてはいけないという決まりはありません。何故ならば、建築士が基本、工事監理を行う前提での立て付けになっている事から、建築士が工事監理を担う責任というのは、施工管理とは別物として非常に重要である事がわかります。

国土交通省が公表した「工事監理ガイドライン」によると、工事監理者の仕事内容は工事の種別によりますが、大きく「材料」と「施工」となります。後戻りできないタイミングを主として、着工前、着工時、土工事・地業工事、基礎工事、断熱工事、仕上げ工事、設備工事、竣工時と、確認方法は目視や計測、試験のほか、書類をもって確認していきます。

戸建建築業界では野丁場工事とは異なり、設計と施工が一体化(一括発注)になっている事から、工事管理と工事監理が同一の会社で実施されてしまいます。特に一括発注については法律的に禁止されている訳ではありませんが、このような業界慣習をどこかで脱却しない限り、潜在化した課題解決には中々至らないでしょう。

このように設計と施工が同じ会社で行われた場合、本来の工事監理機能が工務部門に丸投げになってしまい、施工管理に何となく包括されてしまう事で、特に品質管理面においては、客観性や中立性の欠如が課題となることが非常に多くなってしまいます。

 

過去の姉歯事件での構造計算書偽装問題を受けて、工事監理業務の内容と方法の充実・適正化を図るために、国土交通省が策定した「工事監理ガイドライン」には、監理業務のうち「工事と設計図書との照合及び確認」に関わる合理的方法と例示一覧が明確に記載されています。

このような戸建建築業界の体系からも、これからは第三者機関の有効活用や設計と施工の分業化、また工事監理における遠隔管理ができる管理タスクの分解など、まずはこのガイドラインに沿ったチェックポイントを理解した上で、少しでも作業効率化が進む方策を用いる事で、工事監理の推進に一歩踏み出せるのではないでしょうか。