建設業界全体を取り巻くこれからの最大のハードル

約60兆円市場規模の建設業界全体に対して、我々の事業の中心となる住宅建築業界は約20兆円強と言われています。新築着工数の …


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約60兆円市場規模の建設業界全体に対して、我々の事業の中心となる住宅建築業界は約20兆円強と言われています。新築着工数の減少という以前から続く業界課題は、少子高齢化に伴う人口減少に紐付く世帯数の縮小という社会現象から来るものであり、今後、何らかの国の抜本的政策がない限り難しい課題であると考えます。

一方、野村総合研究所のデータによると、2042年には空き家率が約25%に迫ってくると予測されており、空き家の再利用や新たな活用といった流れもこれから更に注力されていき、今後リフォーム市場も7兆円規模を超え、これから微増しながら安定的に成長していく事は間違いないでしょう。

このような市場トレンドに併せ、地球環境視点からは出来るだけ無駄なスクラップアンドビルドを回避し、エネルギー面の配慮をしながら高耐久で長寿命な建築物と、省エネルギーな快適環境を維持しながら、ヒトの安全を確保していくという業界基盤が徐々に確立されようとしています。そんな狭間で、建設業界にはどうしようもない最大の課題が目の前に立ちはだかっているのです。皆さまは、数ある課題から、敢えて何を最優先課題だとイメージされていますでしょうか?

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その最大の課題は、技術者(現場監督・建築士等)や技能者(各種職人)の減少と高齢化にあり、この課題が中々業界体質から脱却できない点を私は懸念しているのです。

例えば外国人労働者に対する考え方然りです。これまでの業界従事者は、足らないリソースを外国人という労働者マーケットで安易に補うなどの施策を行ってきたものの、軌道に乗らなかった理由には、国内事業者の事業の仕組みや捉え方といった根本的な受け入れ思考に大きな問題があったのだと、改めて自省しなければいけないのではないでしょうか。

その手段というものは、生産性向上に繋がるものではなく、ただ変わらない企業の仕組みに、足らないパーツを外国人労働で埋め合わせようとしたに過ぎず、彼らの技能習得による未来のキャリアや報酬、またワクワクするやり甲斐に、全く繋がらない雇用戦略であったからだと私は考えます。

その答えとして、現在の社内における日本人の技術社員や協力業者へのマネジメントや、キャリアアップの考え方すら中々変えてあげられない状況は、恐らく海外リソースというカテゴリに着手したとしても、同じ繰り返しにしかならないという訳なのです。つまり、業界の事業者全体が「家を売る」ことを最優先的に目的化した反動が、単につくるを担う技術者や技能者の「やり甲斐を削ぐ」ことに繋がったのだと思います。

今後の建設業界のDX化は当然必要なのですが、実際の施工を担うマネジメントテクノロジーやロボテック技術がどこまで成長をするかというと、この最大の課題に立ち向かえるレベルには程遠く、既存住宅を含めた難易度の高い仕事を含め、まだまだ人が高いレベルで介在しなければならない時代は、相当長いスパン続くに違いありません。そしてやり甲斐を削がれた技術者や技能者の新たなモチベーション改善に、このようなDX化が更なる負の風に変わらないことを祈るばかりです。

技術者や技能者のモチベーション改善のポイントは2つあり、技術者や技能者の本来の役割となる主体業務という仕事の理解を謙虚に住宅事業者側が高め、それを実現するために本気で自助努力しているかという点と、もう1つは、つくることが相変わらず住宅事業者の事業目的の中心にあるという、正しい基本理念の浸透に立ち返るという点です。どこまで行っても、収益の源泉である住宅そのものをつくっている当事者は現場監督や職人であるので、つくる視点を最重視する経営視点にシフトチェンジしていく必要があるのです。

現在の建設業界のDXは、どちらかというと、ヒトの仕事の時間工数を緩和したり、削減したりするものばかりが先行しています。言い換えれば、ヒトが現在やっているあらゆる仕事を、システムで補うということなのです。一見聞こえは良く、素晴らしいテクノロジーではあるのですが、このようなDXは将来的に必ず副作用が表れるでしょう。その危険な副作用というのは「仕事の本来の目的を見失うこと」かもしれません。

仕事には、必ず主体業務と付帯業務があります。これを明確にしっかり選別できていない段階でのやみくもな工数削減こそ、本来の価値ある仕事までもなし崩してしまう危険性がありますので、絶対に注意しなければなりません。削減すべきはヒトがやらなくても良い付帯業務であり、主体業務を削減してしまった場合の未来のリスクは、存在価値までも失ってしまうのです。

例えば、現場監督はDXを扱うオペレーターとなれば、現場監督の本来の施工管理を担う役割に対して、ヒトが価値を出す技術判断は将来的に身につくことは決してないでしょうし、職人に現場清掃や本来元請側の責任範囲である安全管理を押し付けて、本来の専門技能を発揮する対価や工数に見合った良い仕事環境が提供できることは恐らくないでしょう。

つまりヒトが唯一価値を出せる仕事というものは、意思を持って「未来や目的をプロットすること」にやり甲斐と存在価値があります。これは、全ての理想の仕事像でもあるのですが、ヒトが意思をもって目指すべき姿という目的に対して、その中でより主体業務を際立たせる為に付帯業務を削減する手段としては、非常に効果的にシステムが存在するのですが、その目的がブレてしまった中で、このようなデジタル化ばかりが先行してしまうと、やはりヒトは目的を失い、そして目的を見失ったヒトの残された仕事は、付帯業務的作業ばかりとなってしまい、結局、価値を出せるスキルは全く身に付くことがなく、最終的には自身の役割や存在意義すら見失ってしまう環境が必ず来るに違いありません。

ヒトの価値をあげるには、未来、どんな技術や技能を習得すればどんな新しいチャレンジができ、それを挑戦し結果を出せば、どれくらいの報酬や対価が得られるのかという、ワクワクする将来像が明確にあるからこそ、ヒトの仕事は主体性を帯び、存在価値を出して行けるということなのです。

先日、大手ゼネコン様および中堅ゼネコン様との対談機会がありました。

野丁場工事の業界では特に、高齢化した技術社員の今後の雇用機会確保の課題や、中堅技術者の空洞化という深刻な問題が課題となっています。仮に若い技術者を雇用したとしても、シニア技術者の下でどのような技術を習得でき、またどのような教育体制で後輩に繋げていけるのかという体系そのものが確立されていないという厳しい課題だったのです。つまり、個人経験での知識・見識をベテラン技術者の一昔前のOJT教育に任せきりであった事が、現在の中堅層の空洞化に繋がってしまった根本原因でもある訳です。

これからの建設業界は、野丁場や町場各々に、自社の為の都合の良い人材育成から業界全体への枠組みにシフトしていく必要があるのではないでしょうか。そして、これまでの長年の実践経験から培ったシニア技術者層の持ち合わせた、技能の言語化や映像化によって翻訳し、若いスタッフにわかりやすく伝えていける新しい育成の仕組みが必要とされてくるのではないでしょうか。

本来、技術者や技能者という資源は、自己都合的な独自のスキルではなく、どこの会社でも通用する基本的な技術や技能を学び理解できる環境下においてあげるべきなのです。そして、これからの建物スペックに適した施工管理環境から新たな仕組みや、新しい存在価値を刷新すべく仕事の概念からリニューアルしてあげる事が重要であります。そして何より定量的に評価された技術や技能というものを、求められる仕事の難易度や成果に見合ったチャレンジ環境と、対価というものへ直結できる業界に少しずつ転換していき、これからは魅力あるヒトの価値を原点から見直していく必要があるのではないでしょうか。

我々ネクストステージは、いち早くこのような環境下へ業界を転換していけるサービスやサポートを充実させ、業界改革の一助を担えるよう頑張ってまいります。