2025年!住宅業界はどんなパラダイムシフトで経営基盤を固めるのか!?

師走の候、皆さまにとっては年末ギリギリまでハードスケジュールの方も多いのではないでしょうか。全国的にも、今年の秋にはプレ …


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師走の候、皆さまにとっては年末ギリギリまでハードスケジュールの方も多いのではないでしょうか。全国的にも、今年の秋にはプレハブ及び分譲を除き、一般木造住宅の着工数も久しぶりに前年比増となり、来年春の4号特例の縮小等に向けた着工押し込みや、補助金等の影響がどれだけあるのかは定かではありませんが、少し市場が回わり初めてきた事を実感しております。

今年2024年の最後のコラムは、2025年からの激動の市場変化に、敢えて『どんなパラダイムチェンジに挑戦するのか!?』といったキーワードをタイトルとして投げかけました。皆様ご存知だとは思いますが、改めて『パラダイムシフト』という言葉を補足させて頂くと、パラダイムシフトとは、それまで当たり前だと考えられていたものの見方や考え方、そして価値観が劇的に変化することを表した言葉です。

もともとは、アメリカの科学者・哲学者のトーマス・クーン氏が、著書『科学革命の構造』(1962年)で提示した考え方です。トーマス・クーン氏は、著書において、『一般に認められた科学的業績で、一定の期間、専門家に対して問い方や答え方のモデルを与えるもの』をパラダイム(paradigm)と定義しました。そして、この既存のパラダイムのモデルでは解決不可能な変則事例が見つかり、処理できなくなったその混乱の時から新しいパラダイムが登場し、科学革命が起こると説きました。これがパラダイム論であります。

この論が科学以外の分野にも影響を与え、産業や経済など様々な分野で、その時代の支配的なものの見方や捉え方が、革命的かつ非連続的に変化することが「パラダイムシフト」と呼ばれるようになったのです。我々の住宅業界においても、画期的な製品やサービスによって市場構造が劇的に変化してきたという体感というものも、何かしら感じられているのではないでしょうか?

具体的に3つほど、際立った事例を挙げてみましょう。

1つ目のパラダイムシフト事例は、スマートフォンの登場によるコミュニケーション方法や情報収集法の変化が挙げられるでしょう。
特に、iPhoneをはじめとしたスマートフォンが普及したことで、インターネットへのアクセスが容易になり、業界情報や他社のケーススタディなど、大量の情報を得られることから、皆様の経営に活かせるあらゆる戦略立案が容易になりました。特に、マーケティングやセールス活動に利用された会社が目立ったのではないでしょうか。また、業務管理面においても、コミュニケーション手段が、通話からメールやSNS、チャットアプリなどを用いたテキスト主体に変わってきた事で、社内や協力業者など、社内外の『報・連・相』という基本業務精度も一段と向上し、ケアレスミスの低減に繋がってきたようにも思います。

2つ目は、自社でモノを所有せずに、共有・利用するという価値観の広がりです。
長引く景気の低迷や非正規雇用の増加などにより、モノを所有するのではなく「共有する」といった考え方。また「必要な時に利用する」という志向が高まってきました。同時に、サブスクリプションサービスなども多数生まれた事から、事業運営に対する資産というものを固定化せず流動化させることで「モノは所有せず、必要な時に利用する」という、市場変化のスピードが早い時代だけに、このような価値観が一気に広がってきたと言えます。

3つ目は、働き方の多様化です。
以前より、業界特有のサービス残業体質の脱却や、育児や介護、通院などと両立しやすい働き方を求める声が挙がっていましたが、今や良きも悪しきも働き方改革の履行から、長時間労働の是正や多様かつ柔軟な働き方の実現、また雇用形態にかかわらない公正な待遇など、住宅業界も少しずつ変化してきました。そしてテレワークも一通り普及してきたことから、商談等の環境も選ばず、フルタイム雇用で出勤して働く以外の多様な働き方も可能になってきたと言えます。

ここで、2025年からのパラダイムシフトというキーワードに対し、皆様はどのようなテーマで具体的にパラダイムチェンジされますでしょうか?

まずマーケティングの観点から考えていくと、これからの市場変化として間違いない動向は、人口減少時代に突入し、ファミリー世帯数の減少が一気に加速していくことです。高齢単独世帯は2040年には6軒に1軒となるなど、一般的なファミリー向けターゲットの漠然とした新築供給戦略だけは、これからの経営にとって非常に危険である事を肝に命じなければなりません。

但し、新築市場がゼロになる訳ではないので、もしこの新築市場で今後生き残りをかけ、勝負していくのであれば、低所得層と富裕層向け住宅の戦略分離や、医療とタイアップした高齢者向けの暮らしのイノベーション的戦略。また、郊外特化型の住まい提案など、顧客のペルソナを含め、明確な売り先のターゲティングが重要になる事だけは忘れてはなりません。もし従来型の30才前後の若手ファミリー層向けに集中していくのであれば、これからの購買者はスマホ世代に置き変わって行く事を考え、売り方そのものから全く新しいものに転換していく準備が必要になってきます。

そういった流れを勘案すると、総合展示場の役割そのものの変化や、非対面・非接触展示場の積極的な活用、むしろ販売のオンライン化というような、今までにあまり積極的でなかった新たなセールス手法も強化していく価値はあるでしょう。ただし、広告・集客戦略においてはWEBが必ず必須であるという事と、何よりWEB戦略の内製化と動画活用が最も大切なポイントとなり、YouTubeやSNSを使ったインサイドセールス強化も併せて創意工夫が必要となるでしょう。

近々のトレンドとしては、100㎡前後の小型新築や平屋の増加に向けた商品化や、LDK大型化とテレワーク需要に向けた間取りの工夫、また屋内と屋外の中間領域と動線の変化による新たなライフスタイルの提案など、ZEH標準化に向けた省エネ性能を訴求する商品戦略が挙げられるでしょう。しかしながら、近々のトレンドを追うビルダーは常に存在することから、他社との決定的差別化に繋がらないということも実感されているのではないでしょうか。やはり、他社事例に真似た短期的トレンドだけでなく、ファーストペンギン的に勇気を持ったベンチャー的思考でチャレンジできると、より一層の差別化が実現できるのです。

 

ただ、現実は難しいとは思いますが、仮に従来型戦略であったとしても、この住宅業界がいつの時代も置き去りにしてしまっている、重要な取り組みが隠されていることも、見逃してはなりません。

それは『現場力』という企業経営において大切な本質的強みなのです。

今や製造することの本質を極めていく企業は非常に少なくなりました。製造原価が高騰し、これだけ高い買い物となっても、住宅という資産に対する実質性能や絶対品質という観点は常に疎かになっており、ある一定のレベル(クレームにならないレベル)で適正承認し、次の販売の戦略に目移りしてしまうのです。きっとこのような企業文化では、本質的な現場力は身につかないでしょうし、人財も育たないと思います。

やはり強い経営の共通項には、正しい考え方を有した強いリーダーで成り立つ現場力の高いチームビルディングこそが事業実績の根幹を成します。このような組織強化策を優先的に推進する事から、自創できる社内スタッフが中長期にミッションを描き、本質的改革を推進して行くというストーリーも、これからのESの充実という観点からも、非常にポテンシャルの高いパラダイムシフトなのかも知れません。

今後、どれだけ売る為の斬新な戦略があったとしても、これからの若手雇用のハードルなどを考えれば、セールス人員と販売効率や、逆に過剰人員とIT業務効率といった組織的改革は避けて通れないのです。これを、ただただDXの進化に頼ってしまえば、特に施工管理や設計技術においては、ここ数十年はBIMやロボットの導入で賄えるレベルではなく、職人不足の環境下では、誰も着いて来ることはないでしょうし、今後優秀な人財を中心に改革推進できるチームビルディングなどは、まずもってあり得ない環境や文化になるに違いありません。

私を含め、既にあらゆる経営者のこれまでの発想や考え方、そしてやり方の固定概念が、実質的にパラダイムチェンジしない一番の大きな要因であるということは、ある程度謙虚に認識しなければなりません。これからの激動する時代の中でDX化の裏側には、強固な人財化と組織化を進めなければ、未来のための成長可能性を失ってしまうというのは明らかなのです。自分達のやりたい事、やらなければならない事、そしてやれる事を再整理し、これから創り出す企業ミッションこそが社内から醸成されるパラダイムシフトであって欲しいと心から願っております。

最後になりますが、今年一年間、コラムをご購読頂きましてありがとうございました。弊社NEXT STAGEも、業界のあるべき姿へ改革していく為のパラダイムシフトを果敢に挑戦して参りますので、今後ともご愛顧賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
2025年、皆様にとって充実した飛躍の一年になります事を祈願し、健やかに年末年始をお過ごしくださいませ。