外国人労働者を受け入れる前に企業がやるべきこと

先月末の日本経済新聞の一面に、2025年を目処に建設・農業分野へ外国人労働者50万人の受け入れ門戸が広がるという記事が掲載された。すでに都心部を中心に外国人労働者を受け入れ、建築現場では様々な工種で頑張っている職人の姿を見る機会が少しずつ増えてきた。またつい先日、野村総研からも2030年には大工人口が21万人になるという統計予想も発表され、1968年の94万人近い大工人口から考えると、益々現場環境は厳しい状況になっていくに違いない。中でも、産業界の未来を背負う貴重な20歳以下の大工人口が約2300人程度、またこれからの熟練工として大切な30歳以下の大工人口が約3万3000人程度と、モノづくりへ参入する若者達のなり手の問題は、これからの住宅経営者において、特に深刻に受け止め、次世代に向けての環境整備に寄与してもらいたいのである。

現在の建築現場においては、一般企業がユーザーから建築を請け負い、営業、設計、工務といったポジショニングで業務連携しながら進めているのであるが、同じ日本人同士であっても、契約から施工管理、そして維持管理までの事業フロー全体をしっかりマネージメントすることすら至難の業となっているのが今の業界の 現実ではないだろうか?製造現場に人員が足りないという課題に対し、単に外国人労働者を受け入れて一時的に解決するなどという発想はあまりにも危険であり、安易に考えるべきことではない。

今後、数十年先には現場職人の過半数が外国人労働者となっていくとすれば、日本語で記す設計図書ですら外国語に翻訳していかないといけないだろうし、様々な情報クラウドも外国語で伝達して行くような仕組みや体系までも視野に入れて検討していかないと、単純にコストという発想で、外国人労働をツールとして利用 するなどという考え方がもし蔓延するならば、ドイツのような世界の職人をこの日本に集約していくことはあり得ないであろう。

その前に、工事管理体系すら存在しない木造建築の中で、まず自社の設計仕様をシンプルに正しく検討し工種を分解した中で、各々の工種で細かな作業範囲を明確化しそして仕組み化させ、標準工程表を定めた上で進めていけるような訓練を、今からトライアルして行く必要がある。設計図書も同じく、まずは施工の立場から見てわかりやすいもの、そして不整合のない正しい指示が、現場に落とし込める表記などの工夫を絶対に手を緩めてはいけないし、現場が必要とする施工図的な目線を少しでも理解した設計業務が出来るようなスキルや教育も急務であると言える。現場環境基盤にまで本質的に根付かせる為には、行政も一緒になってその細分化した専門分野をマイスター制度のような専門職として育成させる生涯教育や認証制度という体系を形成しない限り、未来の本質的な現場管理体制を築き、充実させて行くことはきっと難しいであろう。

家づくりというものを今まで通り、これからも地域産業の役割としてしっかり根付かせていくのか?それとも住宅を一つのモノと言う単体の発想で、誰もが平たく商品としてこれからも広がり続けてしまうのか?せめて、モノづくりを担う職人の技能が手間賃に反映されたり、現場管理に携わる技能者や設計者が、未来に希望の持てる環境下の中で働けるフィールドだけは壊してはならない。そうでないと、若者は業界参入への希望すら失ってしまうのである。住宅産業界も、これから理想と現実を余儀なくされる時代が近々到来しそうである。