目的と手段の逆転思考が、建築現場の価値を生み出す

年新春号のAcro Fieldsで、現在、住宅業界の様々な分野でご活躍されている方々を交え、住宅業界の現状や抱える課題を出し合いながら、今後の業界活性化に向けた建設的な議論をした。オフレコな話題に踏み込む場面もあったが、設計・性能・施工・営業・業務管理のどの分野においても、ノウハウや取り組み方のようなプロセスや戦術論が目立ち、「何のために?」と言う目的を明確に意識・理解できていないという原理原則的な経営課題を抱える建築会社が多いことが浮き彫りになった。本当に地震に耐えきれる十分な地盤や基礎、そして構造にする為にはどうしたら良いのだろうか?
 
快適に過ごす為の断熱性能や気密性能、さらに主要構造に腐朽菌を繁殖させず、永く傷まない為の防水や通気、換気をどう考えていけば良いのか?またこれらを実現させる為に、1棟1棟の安定した工事管理や品質管理を、どのように体系づけていけば良いのだろうか?まさしく、これらは住宅を製造していく上で非常に大切なことであり、当たり前の目的でもある。

このような当たり前の目的をしっかりプロットせず、なぜか色々なツールに手を出して各々の課題を埋めようとする傾向が高い。これではいわば目的を手段で埋め合わすことになり、 気がつけば、会社に沢山のワンストップサービスメニューがあふれ、手段のオンパレードになってしまっている。結果、ツールという手段を使いこなすことが目的となってしまい、本来の目的を達成する為の手段にはなっていないのである。

我々は製造会社における品質管理を体系的に社内に根付かすサービスを独自で展開しているが、顧客に提案させて頂く際、往々にして品質管理にかかるコストを原価ではなく経費と考えてしまう企業が多い。さらに現場におけるチェック環境ですら、役所の検査、瑕疵保険検査や性能評価の適合検査などに置き換えて、第三者検査だから安心で、しかも合理的という勘違いまで引き起こしている。

確か、昨年の日経ホームビルダーに第三者検査の導入率アンケートの結果が掲載されていたのだが、40%前後という異常な導入率の結果を目にした時、非常に驚きを感じてしまった。これは瑕疵保険検査などの検査行為が第三者による管理になるという認識で捉えており、この産業が建築行為に対してどれだけ無知なのかを痛感した。

住宅業界の地域新聞を読むと、現状の急務な経営課題として、職人不足と高齢化、現場管理の向上、受注の強化、粗利の低下の4つが必ず上がってくる。本来、経営者は最も深く課題を理解しているはずなのだが、現場というステージで課題がこれだけ山積みしていても、 何故か受注の強化を優先課題として取り組む経営者が多いのは、どの時代でも変わらない業界体質なのだろうか。

現場というステージで課題解決を行う目的は、建物を製造するという価値しか生み出せない現場から、施主様や購入者が共感しファンとなって新しい顧客へ伝えてくれる現場にすることであり、そこに別の価値が生まれる。価値ある建築現場にはきっと素晴らしい職人や現場技能者が集まり、更なる価値向上に寄与してくれる。そんな現場にすることが本質的な現場の課題解決の目的である。現場主義というテーマをしっかりと掲げ実践してくれる企業が、これから先どれほどあるのだろうか。微かな期待を胸に秘め、これからも価値ある現場管理体制づくりを発信していきたい。