『現場管理業務に、今こそ言葉と文字を駆使する工夫を』

『言葉』と『文字』は、本来それぞれ大きな意味を持つのである。
ネット社会にはナンセンスなのかもしれないが、『言葉』というものは、
人が口に出して相手に伝えるというコミュニケーションの原点にあると言えよう。
またその効果とすれば、感情や物事を伝える手段として即効性が期待できる特徴がある。

例えば、現場管理において一例を挙げると、朝の職方との朝礼や近隣の挨拶。
また、安全対策などに対して直接声をかけることで、瞬間的なモチベーションや意思が
相手にしっかり伝わるということで現場風土づくりには非常に有効な手段だと言えよう。

また『文字』というものは、看板や掲示板に書いたり飾ったり、
視覚によって相手にしっかり情報を残すことで、内容の反復と情報の持続性が期待できるのである。
特に上記は販売促進系の手段として業界では多く使われ、例えば建築現場の垂れ幕や養生シート、
そして看板などを設置したりすることを実践されている会社も非常に多い。

なぜならば、この様な文字を利用する行為は情報を持続されたい意図が含まれ、
言葉では常に伝え続けられないことを文字にして表現するという意味が隠されているからである。

現在の現場管理業務においては、実はあまり言葉と文字を適材適所に有効活用されていないことで、
現場の段取りや職人への指示が滞ってしまっている、案外シンプルな課題も沢山あるのではなかろうか?

先日、お施主様が現場に来られた時に、ある職方がお施主様に挨拶ひとつしなかったことからの
大きなトラブルになったと聞いたのだが、この挨拶をしなかった原因に、
職方がお施主様の顔を知らなかったことが要因だったことを知り、私は驚いたのである。
逆に捉えれば、その職方がお施主様の顔をもし知っていたならば、
このようなトラブルが起こらなかったのではなかろうか?という逆説も成り立つ。

あの時、もし建築現場内にお施主様の家族写真でも掲載していれば…。

などと今考えるのであれば、実は明日からでも簡単にチャレンジできる簡単な現場管理戦術ではないだろうか。

実は現場管理において最も重要なことは、常々職方に伝え続けたい物事は文字や写真にして
現場内に情報を残せば良い。
例えば、玄関の框に絶対傷を付けたくないのであれば、框養生に黄色のテープでも貼り、
赤いマジックで『絶対踏まないこと!』と書いて残しておくだけで、日々の職人の動線に注意喚起ができるし、
また現場作業工程の把握を共有する為や、様々な建材納品の受領や置場などの指示をしたいのであれば、
何かホワイトボードを現場内に設置し、常に記載し習慣化しておくことも非常に有効な手段だと言える。

これからの現場風土づくりの中で、確かに職人同士の情報共有が非常に大事ではあるのだが、
あまりにも無機質なシステム化だけが仕組みとして先行していくことはあまり良くないのである。
なぜならば、現場作業のオペレーションの効率は確かに上がるのだが、安全管理や清掃管理などは、
逆にコミュニティの中で言葉として喚起し続けることも非常に重要な取り組みなのである。

特に現場施工は一瞬の気の緩みで大事故に繋がるため、
常にお互い言葉に出して啓発していくチーム環境づくりに意識を置いた方が良いのである。

言葉と文字。

ソフトとハード。

管理とモチベーション。

この関係を適材適所に捉えながら、
バランスの取れた施工品質管理を常に探求し続ける現場風土を築き上げたいものである。

『蔓延した経営者の受注先行意識が経営の危機を呼び起こす』(2)

建築に携わる経営者が、どれくらい現場管理への執着心を持っているかをマーケティングしたところ、
案外8割以上の経営者がかなりの意識を持っている。
しかし、我々が全国の現場を通じて見ていると、全体の8割以上の現場施工が杜撰になっている。

このギャップは、何故起きるのだろうか?

やはり、住宅産業における販売と生産の関係性を紐解くことと、
経営者の価値観や資質に関わることの2点が非常に大きな鍵を握るのである。

販売と生産の関係性については、まず大前提として他産業との環境の差として
現場施工であることと、ある一定の工期が必要であることが挙げられる。

仮に、これを悲観的な戦略に発想転換すると、
いかに工場生産化して短い時間で住宅という商品を効率よく売れるか。
といった何となく冷たい発想に偏っていく。

つまり、経営価値観でいくと、人的に左右されず、
手離れ良い「早いキャッシュ回転を生む事業づくり」という考え方に近いであろう。

この考え方は、確かに従来の建築文化に対して悲観的に聞こえるが、
現代の職人事情や現場環境を加味すれば、ある意味建設的な発想とも言えよう。

逆に従来の建築文化を肯定的及び楽観的に捉えると、
現場の職人を信じ、お施主様の変更や要望を受け入れ、
手作業でお客様の夢のマイホームをしっかりと築きあげるという感じで、
本当にお客様のワガママを精一杯寛容するイメージであると言える。

これも前者の逆説で、経営的に非常に貢献高く、熱く前向きのようであるが、
現場は人的裁量に依存され、また生産性と言う面では
無駄なコストを大事なお施主様から引き出しているようにも捉えられる。
また、事業として利益が出せる経営が維持できるか否かといった懸念も考えられる。

以前のコラムにも記したが、日本の建築現場はまだまだ棟梁制文化が根付いた中で、
自社現場の理想と現実とのギャップが今まで以上に広がり続けているからこそ、
ここで立ち止まり改めて自らの製造戦略をSWOT分析してみることをお勧めしたい。

つまり、『自らの現場を知る!』ということを本気で実態に踏み込むということである。
案外、これを置き去りにしている企業がかなり多い。

経営者の価値観が仮に多様に渡っても、共通して向かわなければならない優先順位は、
先ず自社の経営資源【ヒト、モノ、金、情報など】の身の丈で今日からやれることのメニューを立て、
しっかりやり切ること。
また建築会社の製造使命として絶対にやらねばならない品質管理に着手することが製造会社の大前提となる。

その後に、各々の経営者が描く『やっていきたい理想』に向かって進化させていく
改善フローを取り組み続けることが、これからの住宅経営者の分かれ目となる
重要なポイントとなるに違いない。

『蔓延した経営者の受注先行意識が経営の危機を呼び起こす』(1)

住宅経営者において、『安定受注』という言葉は永遠のテーマであり、
非常に重要である。

また様々な企業においても、日々、家づくりを通じて多くのユーザーに
自らの住宅を認知していただき、ファンになっていただくための
営業展開を切磋琢磨していることは素晴らしいことである。

しかしながら、『受注を取る!』という必要不可欠な考え方が
あまりに先行し過ぎることが、今や住宅経営の真髄を蝕み、
取り返しのつかない経営状況に陥っているビルダーが
最近増加してきている。

特に年間棟数の多いビルダーに傾向値が高い。

なぜならば、受注数と着工数のギャップが広がることで、
想定している売上高にキャッシュが追いついてこない現象が
引き起こるからである。

つまり、現場が動かないという現実である。

現場が動かない理由として、多くの経営者は
職人の引き当てという課題に直面するのだが、
なんとか職人を見つけることで、
また現場が回ると考えていることが、
さらなる落とし穴になっている。

どうしても営業系の経営者が多いことで、
自らが現場をそれなりに把握している自負と、
現実に引き起こっている現状に、
まだまだ誤差があることを気付かないのが
致命傷となっている。

その現実は、職人不足という環境問題以前に、
職人がその企業の現場から離れていっていることを
本当に気付いているか否かにかかっているのである。

では、職人がその企業の現場から、なぜ離れるのか?

簡単なことである。
単純に現場生産性が悪いからである。

つまり段取りが悪いということである。

その原因には、以前のコラムにも何度も書かせていただいたが、
現場管理者の雇用教育や品質管理といった部分に
経営者が投資する価値観を持たず、
コストという経費的概念を拭い去ることができないなか、
結果、後回しにしているツケが回ってきているのである。

このことを本気で原点回帰し、
一日でも早く経営者が決心覚悟をしない限り、
根本的な解決が絶対できないのである。

やはり、全てのどんな産業においても同じことで、
製造する企業が品質管理を怠って末長く成長している企業は、
一社もないことは製造会社の原理原則ではなかろうか。

『置き去りにしてきた建築会社の使命に、今こそ原点回帰する』(4)

数万社ある日本の建築会社で、年間20棟以上の建物供給をしている会社は、
今年すでに2000社を切っている。
ハウスメーカーまでを含めると日本の新築着工を支えている企業数の割合は、
ほとんどがその層の企業で成り立っていることが現状である。
だがその2000社弱の企業層全体を100として住宅品質管理状況を分析すると、
下記のような現実があることを深く認識していただきたい。

我々NEXT STAGEは、住宅品質の安定と向上を具現化するために、
全国の建築現場を通じて、多くの建築会社の住宅品質を監査しているのであるが、

まず大前提として、各々の建築会社の施工基準及び品質基準を明確に決められていない会社は
全体の約86%もあり、この段階で各々の会社が目指す具体的な品質基準が存在していない企業が
ほとんどであることがわかる。
また、我々が住宅品質の基準指針作りとしてご支援している『標準施工手引書』を構築している企業、
もしくは具体的なディティール集などを自社で構築している企業はなんと全体の14%に過ぎない。

さらに驚くことは、自社の施工基準を持っている14%の企業の中で、
しっかりと常の現場をその自社で確立した品質基準をしっかり守り、
適合させる取り組みをしている会社はたったの2%くらいしかいないのである。
仮に2000社の2%と試算すれば、日本の建築会社で約40社くらいしか
本質的な品質管理実践をしていないことになる。
本当に驚くべき業界環境である。

我々NEXT STAGEは住宅品質の安定のステージを1段階目に設定し、
まずは自らが決めた品質基準を必ず守るという取り組みからしっかり第三者監査という手法でフォローし、
監査を通じて現場教育も一環させていくものである。
しかしながら多くの会社は、この時点で現場監督の人材不足やスキル不足といった就業環境から、
この段階さえ乗り越えられない会社も事実多いことも否めない。
ここで乗り越えていく会社を、我々は『先行ビルダー』と称している。
『先行ビルダー』の定義は、絶対に基準を守る!という習慣から、
不備が発生した現場での課題を次の現場から二度と起こさない為の工夫を常に社内で取り組み、
PDCAをしっかりと回そうと日々改善に努める会社である。
このようなレベルの会社は、正しい現場風土が当たり前のように根付いているのであるが、
悲しいかなこの割合は、全体の約0.5%くらいの会社数しかない。
先程の40社を引用すれば、日本に10社くらいしか存在していない計算となる。

以前にも住宅の製造責任について触れたのだが、異業種をみてもやはり品質のトップを歩む企業は、
その分野での決定的なポジションを築いている。まさしく製造分野の方程式なのである。
その方程式を、なし崩しに成長させてきた建築分野に与えられたブランドは、
今や『クレーム産業』というネガティブブランドでしかない。
これからの地域で成長する住宅産業は、このネガティブブランド脱却できるだけの実践を
覚悟していく地域産業であり続けたい。

『置き去りにしてきた建築会社の使命に、今こそ原点回帰する』(3)

住宅産業には、FCやVCなどのチェーン事業が常に新たな形で生み出され広がりをみせる。デザインや仕様、機能、性能そして工法など、販売強化や他社との差別化につながる仕組みやアウトソーシングコンテンツが含まれることも最近ではニーズポイントになっている。
こういったチェーン加盟増加傾向の要因も、地域工務店単体ではなかなか時間的、スキル的に商品企画が出来ない現状を、出来るだけ早いスピードで手に入れられることが最大のメリットになるからである。今の時代、おそらく何らかのチェーン加盟経験をお持ちの工務店が多いのではないだろうか?
この加盟思考を解りやすく表現すると、案外、人間の薬に置き換えると非常に解りやすいのである。

例えば人間の身体異常に対し、特効薬と漢方薬の2つの処方選択の違いに非常に似ている。
特に現在の住宅産業では、やはり特効薬的な加盟理由が非常に多く、受注強化や性能担保など、他社との付加価値戦略を早いスピード感で確立し、時代に乗り遅れない最大の経営課題の克服に繋げようとするする動きである。
しかしながら、特効薬は効目も早いが副作用も大きいことを忘れてはならない。
逆に漢方薬であれば、比較的身体に優しく外も少ないが効目に時間がかかり、早い課題解決には繋がらないことで、なかなか漢方薬的な戦術には躊躇するビルダーが多いのも事実である。

前回のコラムに掲載した内容でもあったように、例えば現場監督を含む生産系スタッフの人材不足とスキル不足について、社内教育スキームの皆無の課題に触れたのだが、まさしくこのような業界事態を引き起こした原因には、常に販促面の特効薬的戦術ばかりが先行し続けてきたツケが、今の現場環境を作り出したことを忘れてはならない。

住宅事業をソフト面とハード面に分離すると、生産系はやはりハード面を担う部隊であり、営業系はソフト面を担う部隊である。
実は生産系は漢方薬的な戦術、そして販売系は特効薬的な戦術をバランス良く使い分ける必要性があることが住宅経営には絶対に必要なのではなかろうか?

トヨタ自動車の企業文化などはまさしくお手本であり、日々改善、日々改善の繰り返しに作り上げられた現場力である。
製造戦略の第一の軸には、『製造現場に品質高い健全な管理風土を根付かせる戦略』であり、となれば、やはり日々改善を繰り返し継続できる現場管理の仕組みをひとまず定着させる必要が今、経営判断として腹をくくる時期に来たのではないだろうか。つまり人間の成長と同じ、『身体と心の成長のバランス』と全く同じと言っても過言ではない。
仮に売上成長ばかりが先行したとしても、製造責任を全うとする現場の志や、請負を履行する為の品質管理風土は、決して磨かれ成長していくものではなく、むしろ内面【現場】から経営を崩壊していくリスクだけを膨らましていくことになるであろう。