『売る』から『選ばれる』への転換は、本質でしかない

新築受注に関するこの一年間の全国工務店の営業面をみても、新しい顧客と出会う機会【集客力】に関しては、ジリ貧な傾向が続いているように伺える。さらに消費税に対する駆け込み受注の影響も、前回の8%へUPした時のことを思い出しても、今回は少しインパクトが弱いようである。
 
またマクロ的な要因から分析しても、やはり日本の人口の減少、つまり世帯数の減少は止めることはできず、これに連動し新築需要のパイは緩やかに縮小して行くことは否めない。
 
このような新築マーケットの大きな変化が予想できる環境においても、やはり工務店の掲げる中長期戦略はまだまだ集客強化という視点から脱却できず、様々な手法で知恵を出しながら、集客に対する投資を継続して行くのである。
 
ここで振り返っておきたい事は、本来、工務店事業という基本的な強みは、自らの家づくりの製造価値そのものと、そこで働く人材に対する価値の2つでしかない。良く似た仕様、良く似たデザイン、そして誰もが口で発する断熱性能や耐震等級など、耳からの情報だけを取ってみたら、顧客視点から見ると全く本質の違いが一体なんなのか解らない。つまり、この2つの価値の実力を受注面において、しっかりとしたフロント戦略に用いなければ、他社との決定的な差が生まれないということが大前提となる。
 
我々NEXT STAGEは、長年、地域のつくり手に対して製造現場に対する品質向上事業をメインに従事してきたが、品質向上を確実に具現化してきている工務店も少なくはない。このように施工品質向上を図ったビルダーの成長現象として、実は物凄い変化として、大きく3つ挙げられる。
 
1つ目は、現場監督が離職せず使命感を持って取り組み出し、プラス思考に転換できた点にある。現在の現場監督雇用の実態においても、これだけでかなり優位である。
 
2つ目は、協力業者が根付きコロコロ変わったりせず、業者そのものの姿勢が謙虚になり、学ぼうという姿勢が芽生えてくることにある。この点においても、業者が変わらず安定するだけで、品質のムラがかなり軽減され工期が安定し、製造計画自体もかなり安定していく。つまり経営的なキャッシュの流れも非常に健全になって行く訳である。
 
そして最後、3つ目は、何より現場の取り組み思考が変化して行くことで、営業の販売活動に変化が生まれることにある。具体的にいうと、現場の取り組む姿勢や品質における知恵や工夫の実践が他社との決定的な価値と捉え出し、その価値を販売に転嫁して行こう!転嫁して行かなくては!というマインドに影響して来たことが一番大きな収穫であろう。
 
こうなれば、従来型の仕様や材料価値だけでなく、自ずと手間に対する価値を販売に転嫁して行こうとすることで、自然に粗利率が上昇していく。この段階で工務店事業そのものが、棟数で売上を追うことではなく、価値提供により粗利率上昇で利益を追う体質に変化させることだと段々と理解されていくのである。
 
このように、工務店事業の本質に気付き中長期的にトライアルする工務店は、今では集客力という強化策から、いつでも現場を魅せるというリアル戦略にシフトしようとしている。その結果得られる成果は、一般のビルダーに経験したことのない成約率を導き出し、その導き出した顧客との接点が更なる顧客を呼び込む事で本質的な安定受注を実現していくのである。
 
こうなれば、住宅を売る!という行為から、選ばれる!というサイクルに転換され、まさしくレッドオーシャン事業である建築業界内の、ブルーオーシャン戦略と言えよう。今や、品質の高い工務店が確実に安定受注している傾向は、既に地域ブランドという大きな達成を実現しているのかも知れない
 

『令和』という時代に、この産業が成し得なければいけないこととは?

5月1日より、新元号の『令和』が幕開けした。皆さまもご存知のように、7〜8世紀の奈良時代の日本最古の歌集としてまとめられた全20巻の万葉集の第5巻の『梅花の歌』から引用され、新しい時代への願いを『令和』という元号に表現したのです。

『令和』とは、「明日への希望と共に、日本人一人一人が大きな花を咲かせる」という深い想いを抱き、新たな時代への祈りと期待を持ち合わせることだとすれば、この住宅産業界においても、発注者のみならず、家づくりに関わる利害関係者全てが適正な利益を得て、各々の仕事という役割を認めてもらえたり、感謝をされたり、また仕事を通じて幸せになれる環境整備をしていくことが非常に大切なことであると思う。

家づくりとは、お客様にとって一つの新しいライフスタイルへの挑戦と覚悟なのである。その一つの大きな覚悟である家づくりを一つのプロジェクトとして捉えれば、やはり利益の源泉である建築現場のプロジェクトに関わる利害関係者全てが、各々の花を咲かせる為に仕事への誇りを持ち、周りから感謝をされる仕事であり続け、そして各々が仕事を通じて幸せになっていけることが、この産業にとって重要なことではないだろうか?

まさしく建築事業というものは、その一つ一つの現場のプロジェクトマネージメントを如何に成功させるかが事業使命であるということから、今この産業が抱えている働き方改革、品質向上、そして生産性向上などの実現を並行して抜本的改革へ結びつけていく為にも、実は第一優先的に取り掛かって頂きたいこのような風土改革そのものなのである。

そして業界環境整備が進んで行くことで、利害関係者と言われる職人や現場監督、様々なパートナーの方々の地位向上にも寄与し、個人の日々の遣り甲斐が明日への希望に導く原動力となっていくポジティブなマインドサイクルこそが、未来の若者に勇気を与え、家づくりへ参入すべく新たな流れが創出されるに違いない。

そんな現場環境を自社の価値にし、前線の営業部隊が率先して自社の強みを生かしたファンづくりが出来れば、製造の前線においてもその覚悟というものも少しずつ芽生えてくるであろう。

いずれにせよ、最後は自分が一番良ければいいのか?また、周りが一番良ければいいのか?という究極の選択肢が、自社の風土改革を大きく左右するのである。本気の風土改革を断行するならば、やはり後者である周りを一番に優先するという思いやりの環境を徹底的に根付かせることでしか、解決をするすべはきっとないだろう。

完成見学会だけのファンづくりでは、大きな機会損失である

建築会社の事業目的が家を造ることであれば、やはり家を造る為の受注を強化し、いかにコンスタントに集客からファンづくりというステージにシフトアップして行くかを皆さん考え、期待しているのではないだろうか。

地域の建築会社は、大手ハウスメーカーのように住宅展示場という大々的な投資をして行く販売戦略は非常に不向きであるだけに、お引渡しするお客様に了承を得ながら、完成見学会を中心にイベントを開催し、そこを一つの集客装置としてファンづくりを強化し、受注に繋げていく会社が非常に多い。

ここで皆さんに是非考えて頂きたいことは、地域建築会社としての本当の自社の強みを社内でどれだけ明確に共有し整理できているかということと、又その強みを生かす機会をどれだけ地域に発信、展開できているのかという、シンプルで大切な2つの命題である。

私自身も全国の沢山の工務店を見てきた中で、デザインや性能、そしてコストパフォーマンスといった今どきの定番告知はさておき、必ずホームページや会社案内で書かれている自社というものを伝えたい根幹の内容のキーワードは、こぞって『確かな品質』『迅速な地域密着』『信頼の責任施工』など、自らの家づくりの使命をアピールされている会社が非常に多いのである。地域建築が不動産戦略でない限り、年間に何百、何千という家づくりを供給することではなく、住まい方という視点での価値創造を地域にいかに届けるかという視点で考えてみても、1棟完工するのに4〜6か月という長い工事期間に対し、竣工時のたった1回の完成見学会という発信では機会損失の何者でもない。

例えば、自社の強みのキーワードが『確かな品質』であれば、この半年近い1件の建築工期中の現場パフォーマンスを、いつでもお客様の興味のあるタイミングに自由に見学に来て頂ける機会さえ作れば、今までの何十倍ものファンづくりができる環境ができるというシンプルな考え方が生まれてくるのである。つまり、機会の最大化である。何も、構造見学会というような瞬間風速的なイベントを強化するのではなく、建築フローの流れそのものを自然に魅せる化し、落とし込んで行くことが実は大切な考え方の一つではないだろうか。

しかしこれが出来そうで出来ない理由は、自社の施工品質が本当に確保されているのか否か!という本質的な実力の部分でしかない。ここを本気で取り組んで行く建築会社が、実は現場を魅せる化してどれほど受注を上げているのか?という実態をあまり知られていない。そして魅せる化という誰もが真似出来ない一歩上の販売戦略が展開できる会社は、本当に希少価値に近い領域なのである。

我々NEXT STAGE GROUPは、600社近い建築会社さまと品質監査を通じて、品質向上に一生懸命取り組んできたが、これからはそんな一歩先の本質を歩んで頂いている建築会社様向けに、今夏から『Kengakuクラウド』とタイアップし、自社の建築工期中全てを利用した地域集客型見学予約システムを展開し、品質に対して更なる強みの価値発信をお手伝いし、結果、とんでもない成約率を叩き出して行きたいと思っている。

これからの工務店経営の基本は、製・管・販が三位一体となること

ご存知の通り120年ぶりと言われる民法改正が、2020年4月から施行されるということで、あと一年強に迫ってきた。以前のコラムにも書き留めたが、自らの会社の施工品質基準を明確にし、それをしっかりお客様へお伝えした中で、製造履行を成し遂げていくという基本思考をお話しすると、昨年より沢山の施工品質基準構築へチャレンジされる企業が増えてきた。少なからず、半年で100社以上のオファーを頂き、取り組ませて頂いたのではないだろうか。今月は自社の施工品質基準書を構築した企業が、次々にぶち当っている壁というものをリアルにお伝えし、2020年4月に向けてしっかり準備していくためのポイントを述べて行きたい。

基本的に木造住宅に対する具体的な工事管理体系が明確でないという業界文化であるだけに、いくら施工品質基準を明確にしても4〜5か月の製造工程で、しっかりと現場の職人各々まで浸透できないことで、精度高い運用まで行き届かない現状が一番の企業の障壁であるようだ。9割以上の企業がぶち当たる障壁だが、実は短期間で成果を上げる特効薬はなく非常に困難であり、少なからず1年近くかかると言えよう。企業を経営していても同じように、事業理念の浸透が難しいのと同じで、浸透させるということはイコール、現場文化に根付かせるということに非常に近い。イメージで行くと習慣化の世界に身を置くイメージで、まさしくPDCAサイクルが回り続けているイメージである。

しかし、この障壁を着実に越えていく企業も1割弱程度あるのも事実であり、逆にこのハードルをクリアしていく企業の共通点を探ることで、本質的な取り組みのポイントが見えてくるのである。障壁を確実にクリアし、成果を上げている企業には、実はこの3つの共通点が存在ているのである。

1つ目の共通点は、協力業社の入れ替わりが無く、学ぶ意識高い点にある。これは、技術力の差というより、仕事に対する謙虚さと素直さにあるのだと思う。現場文化の差といっても過言ではない。

2つ目の共通点は、現場監督が辞めないことである。現場監督の仕事に対する姿勢が、造る喜びを感じながら生き生きしている点にある。これは、現場監督そのもののスキルの前に、経営者自身が現場に対する理解と製造責任に対する姿勢が非常に高いことが挙げられる。

3つ目の共通点は、営業マンが自らの勤めている会社の建物に惚れている点にある。現場の職人や家づくりのプロセス価値を理解し、お客様に一生懸命その価値をお伝えしている点にある。

以上の3つを見ても解るように、品質基準に対する技術的なノウハウを強制的かつトップダウンな取り組みで運用してクリアしている訳でもなく、実にナチュラルで、極シンプルな共通点にしか見えないのは何故であろうか?この3つの要素とは、営業、設計、工務の三位一体な業務連鎖が強いことにあるのではないだろうか。

通常であれば、営業は売ることが仕事!設計は図面を書いて申請することが仕事!工務は現場管理をして実物を造ることが仕事!という、各々が各々の作業に陥り、自部門のことを中心に考え、ノルマ的思考で仕事が進んでいく傾向にある。この障壁をクリアしていく企業の特徴には、必ず互いを尊重し合いながら現場そのものに利益の源泉があることを全社が理解し、特に現場に携わるスタッフほど大切にされていることが特徴である。ズバリ言えば、現場という聖域でお仕事をして頂いている職人を一番の価値であると認めているからこそ、基準一つ一つを真剣に捉えたり、吟味したり、また工夫をしたりしながら、自社基準までも現場主導でどんどん進化させて行く力を持つのである。

つまり、施工品質基準書がディテール的な立場で作成されてしまい、あれば回る!という感覚と、あればリスク回避できる!という目的にすり替わってしまうことが障壁にぶち当たる大きな要因であり、製造履行の為の基本的な運用手引きと管理スタッフと職人の品質のモノサシであるという目的になると、実は民法改正対策という意味合いはあまり関係なく、まさしく通常の製造過程での必須手引きとして認識しているからこそ、特別でない当たり前の仕組みとなるのである。

業界の歴史を辿ると、未来を真剣に考える環境整備が見える

これからの住宅市場において、いつの時代も様々な未来のデータ分析が予想されて行くのだが、ただこんな時代に来ても、まだ新築着工数やリフォーム市場に対して数の予想を中心に指針化してしまうのは、まさしく昭和40年代からの住宅5ヶ年計画の思考の名残りとも言えるのではないか。

高度経済成長期に、あらゆる層の所得者に対して新築住宅の供給を促進させた住宅5ヶ年計画の行く末には、ローコスト住宅普及を台頭に、国民所得の上昇から国民が快適な暮らしを求め出し、そしてそれを叶える新建材がどんどん普及し『快適』というキーワードから高気密・高断熱化にシフトしてきたのであった。その結果、何を引き起こしたのか…。シックハウス症候群や化学物質過敏症などの健康被害が広まったことだった。

F★★★★建材使用義務というホルムアルデヒド規制を余儀なくされ、そして気密化がどんどん進むことで、換気や火災報知器の義務化まで国は進めてきたのである。気がつけば、今や花粉症のような現代病が当たり前になったのは、皮肉にも空気環境変化に伴う事象が原因だったと思う。

なんといっても数を追う国策に対して残された底辺の遺産は、『住宅瑕疵』と言われる恐ろしい製造欠陥問題だったことを皆さん、覚えているでしょうか?実はそんな社会問題から2000年には、品確法が生まれ、追って住宅瑕疵という問題を民間保証という枠組みから国は外し、瑕疵担保責任履行という顧客保護視点から国が事業者に対して強制的に担保させ、現行の瑕疵担保義務に踏み切ってきたのであった。それが今、皆さんが加入している瑕疵保険なのである。

そして人口は減少に転じ、世帯が減り新築着工減を睨んだ国は、とうとう住生活基本法を打ち出したのだった。簡単に言えば、『量から質へ…』という政策転換である。ここからのモードが、これからの未来への政策原点であり、ひとつの覚悟ではなかったのだろうか?

今の現場環境では、すでに材工分離された職人の手間代は、弟子の雇用を守りきれない最低ラインまで底値化し、それに伴ってなり手の問題が課題となり、今や目減りする労働環境に対して、本質的な地位向上に結びつく取り組みすらない。輪をかけて国は、更なる安全な構造設計やしっかりとした性能住宅を推進して行くといった国策に対しても、全く製造現場改革がおいつかず、これから外国人労働者に門戸が開いていったとしても、厚化粧した素肌には、すでに角質だらけの酷い姿と化しているのである。

今年で平成が終わる…。新しい歴史の幕開けには、本当に考えていかないと行けない問題が見える。空き家の増加や建物の資産価値に対する考え方については、国の政策根本から矛盾しているだけに、我が国における高齢化や少子化の課題、さらには住宅そのものの資産価値に対する課題を含め、根っこから向き合っていかないといけないのではないだろうか。

特に空き家の増加については、現在、過半数が賃貸物件である。まだこれからも賃貸物件を供給し続け、空き家増殖化運動でも国は推進していくのか。それどころではなく、空き家自体の不動産所有者が不明である物件も2割を超える勢いであり、まさしく少子化という社会問題から生み出される相続課題は非常に根深い。世間というものは、きっとそんな甘いものではなく、薄っぺらな中身は必ず身を滅ぼすという過去の経験を、日本は初心に帰って学ばないといけないのではないだろうか。