現場管理における「ムリ」「ムダ」「ムラ」を改善する方策とは?

5月末に野村総合研究所より、現場で働く大工人口が2030年には約21万人に推移すると発表があった。同時に現場就労者数の減少から、現場生産性を現在の約1.4倍に引き上げる必要があるという試算も掲載されていたのである。今回のコラムでは、現場生産性の向上が進まない理由である「ムリ」「ムダ」「ムラ」という現象が現在加速し続け、歯止めが効かない原因を抽出し、具体的な改善方針を見出してみた。

まずムリという現象に対してであるが、ムリが引き起こる要因は工程である。いわば施工期間に関する時間の問題である。事業者側がどうやって利益を出すかという命題に対し、原価をいかに引き下げるか?と、キャッシュをいかに早く回すか?の短期的な経営事情がどうしても先行してしまい、本来製造に対する採算工期という現場マネージメントがしっかり出来ていない為である。

次にムダに関してであるが、現場管理でムダが引き起こる要因は、原価管理そのものにある。一つ一つの作業工程を更に細かく作業手順に分解し、いつから、誰が、どこまでの範囲を、いつまでに、どうやって…という、仕事の領域と役割分担、そしてしっかりとした積算による受発注管理がなされない為に、限られた工期にムダが生まれてくるのである。特に、元請会社が下請やパートナー会社への積算や設計業務などのアウトソーシング化という体制の変化によって、逆にムダに拍車がかかって来ていると言えよう。

最後にムラである。ムラの改善が一番ハードルが高いと言えるが、ムラの要因はまさしく施工品質の崩壊にある。この施工品質の改善と向上が、建築事業で一番難しいとされる領域でもあり、我々NEXT STAGEも製造品質改善の習慣化できるようなコンサルティングサービスをパッケージにして、現在もメインでご提案をさせて頂いている。

以上の、「ムリ」「ムダ」「ムラ」についての要因に対して、具体的な改善方策はある。ただ、改善手順が大切であり、一気には進まない。

まずはムリの解消の為に細かな標準工程表の作成が有効ではあるが、その前に、自分達の作る住宅の設計仕様の正しい選択と企画の精度に左右されるので、専門家などにしっかり相談しながら慎重に手順までを構築したいところである。

次にムダの解消として、受発注管理などのオペレーション強化であるが、現在普及している情報共有クラウドサービスなどの利用は非常に有効な手段だと考える。ただ、クラウドサービスを利用して生産性が上がる訳でなく、作業効率が上がると考えて積極的に取り入れることをお勧めする。あくまでもツールであり、社内業務統制は必須である。

最後のムラの解消は、施工品質の改善をPDCAサイクルを回し続けなければ、改善や向上はあり得ない。つまり、製造戦略として当たり前に現場に根付かせる仕組みをまず体系化し、品質に対する具体的な品質基準づくりと、絶対後戻り出来ない主要工程タイミングでの振り返りと評価とフィードバックを実践し続けることが、本質的な生産性向上の基盤づくりだと確信している。品質が安定し向上のフェーズに突入した時には、現場環境整備も自然と進み、ムリ、ムダの推進で掲げた方策の成果と一緒に、一気に結果が見えてくるに違いない。

外国人労働者を受け入れる前に企業がやるべきこと

先月末の日本経済新聞の一面に、2025年を目処に建設・農業分野へ外国人労働者50万人の受け入れ門戸が広がるという記事が掲載された。すでに都心部を中心に外国人労働者を受け入れ、建築現場では様々な工種で頑張っている職人の姿を見る機会が少しずつ増えてきた。またつい先日、野村総研からも2030年には大工人口が21万人になるという統計予想も発表され、1968年の94万人近い大工人口から考えると、益々現場環境は厳しい状況になっていくに違いない。中でも、産業界の未来を背負う貴重な20歳以下の大工人口が約2300人程度、またこれからの熟練工として大切な30歳以下の大工人口が約3万3000人程度と、モノづくりへ参入する若者達のなり手の問題は、これからの住宅経営者において、特に深刻に受け止め、次世代に向けての環境整備に寄与してもらいたいのである。

現在の建築現場においては、一般企業がユーザーから建築を請け負い、営業、設計、工務といったポジショニングで業務連携しながら進めているのであるが、同じ日本人同士であっても、契約から施工管理、そして維持管理までの事業フロー全体をしっかりマネージメントすることすら至難の業となっているのが今の業界の 現実ではないだろうか?製造現場に人員が足りないという課題に対し、単に外国人労働者を受け入れて一時的に解決するなどという発想はあまりにも危険であり、安易に考えるべきことではない。

今後、数十年先には現場職人の過半数が外国人労働者となっていくとすれば、日本語で記す設計図書ですら外国語に翻訳していかないといけないだろうし、様々な情報クラウドも外国語で伝達して行くような仕組みや体系までも視野に入れて検討していかないと、単純にコストという発想で、外国人労働をツールとして利用 するなどという考え方がもし蔓延するならば、ドイツのような世界の職人をこの日本に集約していくことはあり得ないであろう。

その前に、工事管理体系すら存在しない木造建築の中で、まず自社の設計仕様をシンプルに正しく検討し工種を分解した中で、各々の工種で細かな作業範囲を明確化しそして仕組み化させ、標準工程表を定めた上で進めていけるような訓練を、今からトライアルして行く必要がある。設計図書も同じく、まずは施工の立場から見てわかりやすいもの、そして不整合のない正しい指示が、現場に落とし込める表記などの工夫を絶対に手を緩めてはいけないし、現場が必要とする施工図的な目線を少しでも理解した設計業務が出来るようなスキルや教育も急務であると言える。現場環境基盤にまで本質的に根付かせる為には、行政も一緒になってその細分化した専門分野をマイスター制度のような専門職として育成させる生涯教育や認証制度という体系を形成しない限り、未来の本質的な現場管理体制を築き、充実させて行くことはきっと難しいであろう。

家づくりというものを今まで通り、これからも地域産業の役割としてしっかり根付かせていくのか?それとも住宅を一つのモノと言う単体の発想で、誰もが平たく商品としてこれからも広がり続けてしまうのか?せめて、モノづくりを担う職人の技能が手間賃に反映されたり、現場管理に携わる技能者や設計者が、未来に希望の持てる環境下の中で働けるフィールドだけは壊してはならない。そうでないと、若者は業界参入への希望すら失ってしまうのである。住宅産業界も、これから理想と現実を余儀なくされる時代が近々到来しそうである。

「住宅研究所」というアライアンス構築の必要性

先日、東京の市ヶ谷TKPカンファレンスセンターで、「工務店がクレームを回避する為に技術研究所を持つ方法」と題し、株式会社e-ハウスプロジェクトの小坂代表の計いの中、各方面の見識者を壇上に、素晴らしいフォーラムが開催された。今回、このフォーラムに弊社も協賛企業としてバックアップさせて頂いたが、まさしく今の住宅供給環境には必要不可欠だと常々感じるのである。
 
我々は全国の建築現場の施工の現状を日々見せていただいている。以前のコラムにも書かせていただいたが、住宅品質は4つの品質の集大成であるとNEXT STAGEは定義している通り、施工の品質、設計の品質、維持管理の品質、そして企画の品質を奏でる必要がある。しかし近年、企画住宅が益々増えて行く中、どうしても住宅の商品企画の段階で、ある程度の基礎知識の中で意匠や性能などを安易に組み合わせたり、建材商社やメーカーからの商品PRをただ鵜呑みにして設計仕様を決めて行く傾向が高く、我々が現場施工の段階で不備として上がってくる要因の一つに、企画の段階からの根本的な不具合を目の当たりにする事も少なくはない。
 
工務店自らが、自分達が提供する市場にどんな家づくりを推進して行きたいのかのターゲティングをまず明確にし、その明確にした家づくりをしっかり築く為にも、一番家づくりで大切な主要構造部となる構造設計、そしてすまい手側の快適性だけでなく、その大切な躯体を傷めない為の性能設計を製造側の両面からしっかり検討し、それを精度高い。施工実現するための正しい部材の使い方から施工品質基準までを、計画段階から準備し、社内に網羅しておく必要がある。またそれを全社共有するためには、効果的な情報管理手段として、様々なクラウドサービスを駆使しながら、均等に確実に、着工前の義務フローから施工管理まで落とし込んで行かねばならないのである。
 
現在、このようなノウハウやリソースを内製化できる住宅会社が少ないだけに、我々を含めた各方面の見識者と共にアライアンスを組み、産業界の裏方の仕組みとしての何らかの団体を築いて行く事が急務であり、地域のつくり手を支えて行く必要があるのではないだろうか。さらにこのノウハウ構築には、既に市場に供給されている既存住宅の現状を日々しっかり分析できる環境と、その傾向やデータに基づいて、新築時の仕様改善が有効的に実施出来る充分なフィードバックの仕組みや体系が必要となるであろう。
 
NEXT STAGEは、このようなひとつのスキームを体系化し、そして牽引できるよう業界に呼びかけ、本質的なインスペクションのPDCAモデルをもっと積極的に活性化しながら、これからもチャレンジして行きたいと考えている。

住宅事業のあるべき利益構造とは?

日本には、様々な事業がある中、この住宅産業の事業構造を種別すると、小売業でありながら製造業である。自動車業界や家電業界をみても、製造業としての製造利益と、小売業としての販売利益の二重構造となっている。しかしながら、建築事業は製造業としての利益だけで、製造以外に関する一切の費用については、利益転嫁出来ずに留まっている業界常識が、今や建築事業の限界利益となり、頭打ちとなっている。利益の前に、まず粗利率に対して着眼してみよう。
 
様々な産業界の製造業に的を絞って私なりに経済産業省のデータを調べてみると、売上総利益率【粗利率】は、製造業平均で22.3%となっている。これを規模別にみると、中小企業が24.9%、大企業が21.0%となり、中小企業が大企業を3.9ポイント上回っている。また、小売企業に的を絞って調べてみると、売上総利益率は、小売業平均で27.6%となっており、これを規模別にみると、中小企業が29.1%、大企業が26.4%となり、中小企業が大企業を2.7ポイント上回っていた。住宅産業も本来、この2つの利益構造を持ち合わせていかないとダメなのではないだろうか?わかりやすく例を上げて考えてみよう。
 
例えば、分譲事業のような業態であれば、土地の仕入れに対して販売に必要な小売粗利をプラスし、更に土地の上に乗せる住宅という製造粗利が二重になることで、 グロス的な発想で利益の出し方が検討でき、事業戦略によっては非常に高い収益を望め、また様々な投資戦略も活発になる。しかし一般建築請負業をしている地域の工務店事業をみてみると、住宅を製造する粗利の範囲で様々な販売活動から引渡し後のメンテナンスに対する経費までもその枠内でやり繰りしている。これでは正直、次への投資は厳しくなり、保守的な事業戦略になってしまうであろう。やはり住宅を販売したり維持管理をしたり小売としての役割と価値が明確になれば、販売やサービスに対する対価としての小売の粗利をしっかり産み出すことができるのではないだろうか?
 
しかしながら、現在の工務店経営の実態としては、販売に対する価値を産み出す以前に、分譲会社やローコスト住宅が提供する市場の土俵に取り巻かれ、どうやって受注していくかをまだまだ価格という視点からでしか検討出来ていない部分が沢山あると感じている。分譲事業と地域工務店事業は本来の事業目的が全く異なっており、分譲事業はいかに不動産戦略に価値を生み出し、地域工務店事業は本質的な住まいづくりという小売戦略に価値を見出さなければ、いけないのではないだろうか!販売価格とは、家単体のモノだけを示すものではなく、サービス価値そのもの全てでなければならない。
 
つまり、工務店事業の足らない部分とは、まず製造利益を最大化することを体質化し、そして提供するサービスに対する価値向上を本気で検討し、実践していくことが大切であるろう。顧客にとって、特別と言われる自社の得意を社内で探求し、その得意をピカピカに磨き上げていただきたいといつも願っている。結果、これがきっと真の地域ブランドに繋がるのだと確信している。

工務店の働き方改革が進まない理由とは?

私自身、仕事柄現場監督さんとお会いする機会が非常に多い。会う度に肩を叩いて、「どう最近、忙しい?」と語りかけると、「いやぁ、毎日大変ですよ。また人が辞めちゃって!」などと悲壮な返事が戻ってくることが多々ある。 本当に心痛いほど理解できるし、なんとかしてあげたいと思う毎日である。

先日、住宅産業界に特化して働き方改革をされているコンサルタント会社の代表と会談し、色々と学ばせていただいた。この業界で働き方改革をしづらい一番の環境や理由とは、営業、設計、工務など、働き方の体系が全く異なる職種が混在した事業であるということ。さらに零細会社が多いだけに、仕事内容や役割をどうしても個人の能力に依存せざるを得ない環境だからだそうである。

例えば同じ建築業界でも、設計事務所なら、工事監理という業務で一部、現場打ち合わせなどがあったとしも、机に向かって仕事をする事務系スタイルが大半を占めるのだと思う。それであれば確かに全社的な改革も進めていきやすいのかもしれない。またゼネコンを中心とする施工会社を見れば、社員数が多いということもあり、営業、設計、積算、現場管理とそれぞれ専門の業務部門をつくることもできる。しかしながら工務店事業となると、ファンづくりのイベントから販売活動、見積り作成、お客様を納得させられる設計提案、更には請負契約に基づく工事管理、そして引き渡した後の長期に至る維持管理まで複数の業務を担わなければならない状況も多い。

実は家づくり事業は、このように本来非常に付加価値の高い独自のサービスであるはずなのに、何故か粗利率、利益額が異常に下げ止まりした事業と化してしまっていることが、根本的な改革を行うための原資が捻出できない要因であることは間違いない。つまり粗利率が下げ止まっているということは、職人を含む工事原価が限界にきているということ。そこには、製造会社が当然かけるべきコストである製造品質の費用すら見えてこない。そして営業利益が下げ止まりするということは、その会社の事業価値を向上するための人件費や販売促進費を含む一般管理費も限界にきていることを、経営者がまず一番に理解することが大切である。

このようにあらゆる費用が限界ラインに達している状況で働き方改革をするとなれば、やはり至難の業ということがわかりえるだろう。これは、各々の住宅会社における事業価値を生み出す本質が整理されておらず、なんとなく変えている仕様や工法などの表面的で手段的な違いを差別化と勘違いしてしまい、本来やるべき、他者が追随出来ない本質の強みを尖らせた差別化となっていないことが原因と言えるのではないだろうか?

このような事業環境で確実に改革して行く手順とは、まずその企業の最重要のミッションをシンプルにすることにある。そのためにはSWOT分析などを一度しっかり行い、自社は販売活動が得意なのか?また設計提案が得意なのか?また工事管理を段取り良く行うことが得意なのか?など、どれかひとつの強みに集約し、自社の事業価値を尖らせていくことが最重要である。

例をあげると、工事管理能力は他社に負けないくらい自信があるのなら、敢えて元請事業にこだわらず、他社に追随されないくらいの施工管理能力をもった専門企業に進化させれば、恐らく市場から引っ張り凧になるであろう。また営業販売が得意で誰にも負けないという自負があれば、完全な販売専門企業に進化させ、販売が苦手な企業の代役を努めていくことは 大きな可能性を秘めているのかもしれない。

改めてビルダーの働き方改革のポイントを考えてみると、シンプルな目的の明確化と事業特化を兼ね合わせて進めていくことがポイントであり、意識改革や風土改革まで影響する可能性も高い。さらに尖った企業ほど、社員やパートナーの離脱を防ぎ、やりがいある仕事場の環境づくりを目指すというこれからの時代に大切な形成思考だと感じている。