工務店経営はCS戦略より、今こそES戦略視点を

少しばかり極論にはなってしまうが、工務店事業という仕組みは概ね家業である。一般的に家業では、労働時間【インプット】に注力を向け、企業は創出する価値【アウトプット】に注力していく。

マネージメントという管理視点から分かりやすく解説すると、工務店事業のような家業の会社マネージメントでは、より沢山の仕事を受注し成果を上げる為の管理業務に執着し、そしてCS【顧客満足】を最大化させていく戦略を模索していくが、逆に仕組みで動く企業というものは、同じ成果をより短い時間と少ない労力で、いかに無駄を削減し、ES【従業員満足】をしっかり重視して行こうとする。

住宅業界におけるこれからの働き方改革という大きな波が迫っている環境下で、それ以前に現在の貴重な現場監督が退職したり、また現場を支える職人達になり手がいなくなって行く流れは、多くの理由があるにせよ、少なくとも自らの仕事に対する誇りや満足感が満たされていない仕事環境であることをまず理解しなければならない。こんな環境下で、不足した人員を補うための労働効率化という二次的発想は、非常に危険である。

顧客満足を最大化させる為に、社内を疲弊させたり、下請負関係にWIN LOSEという駆け引き関係をもたらすということは、結果、本当の顧客満足を生み出せない社内文化が存在しているということである。しかし現在の工務店事業の進め方は、なんとなく顧客満足を促進させながら、時間効率や労働効率までも欲張って考えてしまいがちである。近年では様々な情報クラウドやIT環境を取り入れ、あたかも顧客満足と従業員満足の両輪を一気に回しているように見えるが、中々上手く実現できない。

ここで大切なことは、従業員が満足したり、自分達の仕事やサービスを誇りに感じないというマインドが仕事を目的化させていることである。そして自分達の仕事の価値がどのように創り出されているのかが、気付かないという哀れな状況下に取り巻かれ、全く社内に自創社員が生まれず、指示待ち文化に拍車をかけてしまう結末となっている。

企業という目的は顧客の創造にあるからこそ、マーケティングとイノベーションがある。そしてその2つを実現する為にも、マネージメントの必要性がある訳である。また、マーケティングは顕在需要の創造であり、またイノベーションは潜在需要の創造である。地域の工務店事業というもののサービス価値を創造する為には、顕在化された仕事のマネージメントという管理業務も大切であるが、やはり地域に潜在化している様々なライフサイクルからイノベーションという発想で、自らが取り組む家づくりというものの価値を色々検討し、創造してもらいたい。

その為には、限られた人材資源を如何に自創化させなくてはならない。つまり、働く従業員が自分達のサービスに誇りを持ち、サービス改善に自らが率先し、周りから認めてもらえる環境づくりこそがやりがいとなり、従業員満足となる。

そんな従業員が会社に溢れていけば、きっと素晴らしい顧客満足を生み出すサービスとなり、社員が自らの価値を感じながら沢山のファンづくりを実践し、結果、顧客の創造という成果を生み出すに違いない。

職人の地位向上の確かな一歩は、営業の売り方に隠されている

2018年8月くらいから、予定している建築案件の現場施工の工期が、非常に違和感を感じるくらい遅れるようになってきた。住宅産業全体をみてもあまり好調ではなく、全体的にジリ貧に感じるのは私だけなのであろうか?

西日本エリアでは、9月の風害でエクステリアや屋根工事の復旧対応過多で新築を止め、OBのお客様を優先的に対応されてい たような流れも多く見受けられた。またこのような特需を除けば、積極的なリフォーム受注もここ最近、大きな伸びを感じることも少なくなってきたのではないだろうか。しかしそれでも今、職人確保に大変な労力を注ぎ、仕事を回しているビルダーの現状は否めない。そんな中で、今、職人に対する目の向け方に気付くビルダーの営業マンが少しずつ増えて来たのである。そんなマインドの変化が、実は将来の会社の成長を大きく左右するきっかけになるとは誰も想像していないだろう。

とある九州のビルダー様の事例を挙げてみよう!年間100棟を超える受注から、既に現場は崩壊していた。何故ならば、現場監督も沢山離職し、今や営業担当が2日に1回、現 場に訪れないと自分が販売したお客様に申し訳ないという気持ちで、技術素人ながら職人さんと会話をする日々。

ある営業責任者が言った言葉は、『職人さんがこんなに頑張ってくれている事を何故、長年気付かなかったんだ!』だった。しかも定期的に現場に足を運ぶ度に、親切に打ち合わせの対応をしてくれたり、色々な技術話や苦労話しを教えてもらえることで、こんなに頑張ってくれている職人さんのことを我々営業がしっかりとお客様に伝えていかないといけない使命感に駆られていくのだと言う。そして営業こそ、少なくとも建築現場という環境にしっかり触れてから販売業務に向き合わないと、間違った価値観でお客様に家づくりを提供してしまうのでは!という懸念まで出てくんのだとしみじみと語るのである。まさしく、我々は職人さんにいつも救われている事に気づいたに違いない。

結果、我々NEXT STAGEの施工品質監査サービスも全棟ご導入された。しっかりとした職人さんの仕事を可視化し、そしてお客様にその仕事の熱い中身をリアルタイムに届けてあげたいから。お客様へしっかり費用を頂ける価値創造を、営業が今、挑戦して行かなくてはいけないことだから。その営業責任者さんからは、『とにかく、早急に営業マン研修会を開いて欲しい!』との積極的な提案が上がってきたのであった。

我々からしても、こんな自発的思考が今の営業環境から上がってくる事がたまらなく嬉しいし、職人さんの仕事の価値を顧客へお伝えようとする考え方こそが、専門技能を持つ職人さんのマインドに火をつけるのだと思う。

価値向上というステージまでの道のりはまだまだ長いが、確かに営業が発信する顧客満足への価値提供で、それに伴う単価への転嫁が生まれ、職人がプライドを発揮できるやり甲斐とこれからの自信につながる進化を導くのである。やはり顧客への一番の接点である営業スタッフが、『現場という利益の源泉』に対して敬意を持つという考え方に気付くことは、間違いなくこれからの職人さんの地位向上に向けての確かな第一歩なんだと確信している。

働き方改革が進む経営の鉄則は、サービスがシンプルであること

住宅産業界における事業成長の背景には、常に売上高という数字を拡大させることが事業成長だと勘違いしている企業が非常に多い。事業成長という意味から考えると、利益を上げることと、市場からみる企業価値の期待感を上げることが本来原則であり、売り先を増やしたり、売るものを増やすことは単なる事業拡大という意味単体に終わってしまう。

拡大するということにおいて、顧客を増やしたりあらゆるサービスをワンストップ的にラインナップしながら売上を上げる方法は、特に間違ってもいない。実は、成長=拡大という公式ではなく、成長=進化であるということを経営者は絶対に忘れてはならない。

特に成長する企業から見てもわかるように、まずサービスが非常にシンプルであることが挙げられる。たくさんのサービスを陳列して成長し続ける会社は今まで見たことがない。伊勢の赤福は、赤福一本であれだけのサービスを展開しているし、あのリクルートだって、ゼクシィとスーモ事業に尖がっている。つまりシンプルでないことが、自らのサービスに対して事業に賭けるエネルギーを散漫させ、特に経営者自身の思考が分散することが一番の大きな痛手となる。また、有効的な投資計画にも繋がりづらいと言えるだろう。

とにかく沢山のサービスコンテンツを持ってしまうことで、何らかの売上が引っかかれば良いという思考が会社風土に根付き、事業採算性という視点の優先順位や判断が遅れ、事業が硬直してしまうという大きなデメリットから、サービス価値という視点の成長を閉ざしてしまうという危険が潜んでいると言える。

我々の業界において例を挙げると、不動産事業として独自に尖る戦略であれば、ある意味シンプルなスキームを横展開に数を作るという戦略は非常に正しいが、家づくりが尖る戦略となれば、どうも数の理論では無いのではないだろうか?むしろ、一つの家づくりにどれだけのサービス価値を上げ、モノづくりに対する利益率を最大化されるかが、大切なことではないだろうか?つまり、ものづくりの市場価値をどう引き上げるか?という経営視点が実は今、試されているように感じるのである。

こんな経営事例を参考にして頂けるとわかりやすいかも知れない。例えば、ある2件の美容室があるとする。A店は、スタッフ2名で客単価5000円のサービスを月に100人提供する。また、B店は、スタッフ2名で客単価10000円のサービスを月に50人提供する。現状は共に売上は50万円であり、スタッフは腕のある店主と見習いのスタッフの2名である。この両店舗を事業拡大しようとするところから本来の経営判断となるのだ。サービス拡大の為にスタッフを3名体制にしながら、A店は月に150人を集客しようとする。逆にB店は月に75人のサービス提供をすれば、A店と全く同じ売上で済む。

ここで大切なことは、売上という視点ではなく、時間という視点である。サービス価値の成長から見た場合、A店は数を回す自転車操業的な運営となり、そこで働くスタッフの育成機会は無くなり、時間と共に働く環境は疲弊していく。しかし、B店はA店の半分の顧客サービスで済む分、一つ一つの仕事を若いスタッフに伝えていける指導時間が生まれ、時間と共にスキル向上や自らの仕事のあり方や目的などを見出しながら経験できるサービスの環境整備が進んでいく。この2店舗が各々時間が経過していくと、将来的にどのようになって行くのか想像が出来るであろう。もっとわかりやすく考えると、自分ならどちらのお店に就職したいか?というスタッフの立ち位置から見てみると、一目瞭然である。

以前のコラムにも述べたが、家づくりもある意味、小売業としてのサービス価値をどれだけ本質化し、価値に転化して顧客から選ばれる価値をしっかり伝えきれるかが、これからの各々の会社の働き方改革の原点となるに違いない。事業成長とは売上だけでなく、自創化させていく人の成長を促しながら、社内全員が自らのサービスに本気で執着してもらう為のシンプルなサービスを一緒に探求させ、自信を持って地域に発信できる信念がきっと地域ブランドとなり、それが指揮を執る経営者自身のフィロソフィーなのだと痛感する。

2020年民法改正に伴う自社品質基準構築の必要性

約120年ぶりと言われる民法改正が、2020年春に迫って来ている。我々住宅産業界にとっては、何となく不利で厳しい環境変化のように捉えがちだが、私はむしろ建築会社としては有利な環境に振れると考えている。但し条件として、経営者が製造会社としてごく当たり前の事業の原点に気付くか否かという、企業姿勢に掛かっているといっても過言ではない。

わかりやすく表現すると、文字通り「請負」つまり「請けたら負ける!」である。常にユーザーの価値観にそぐわないものは、納得の行くまで対応せざるを得ないという契約環境が、この業界に蔓延した不採算要素となっているに違いない。建築基準法を含めた法令関連の抵触ならともかく、それ以外の「施主判断基準」というものでジャッジされなくてはいけない環境下にある。考えてみれば、そのような施主判断基準で多くの建築会社は、長年にわたり、たくさんの無償対応を重ねてきたのであろう。

現行の民法は、住宅に瑕疵が発生した場合、ユーザーが補修請求や賠償請求を選択をした中で、事業者がお金という手段で対処してきた。そのお金というものも、瑕疵担保責任履行法という瑕疵担保法令義務の中で、保険や供託金積立をし、対応してきたと言えよう。2020年春からは、瑕疵という不具合そのものから、契約の内容に適合しないものという(契約不適合)解釈となり、基本、契約時の設計図書通りに直すということとなる。当然直せないという不能行為や、対応出来ないという拒絶行為によっては、損害賠償請求を受ける形となる。

ここで大切なポイントは3つある。1つ目は、大前提として自社の品質基準を事前に明確に定めておく必要があるということだ。これは何となく施工ディテールのような資料のように捉えがちであるが、ユーザーとの品質契約という行為を実現する為にも、現場の職人達に明確に表現し、分かり易く伝わる指示書にまで落とし込まなければ具現化出来ず、全く意味がないものになる。

2つ目は、その品質基準を契約時に営業がしっかり説明責任を果たし得るという事である。その為にはユーザーに伝わりやすく、さらに技術を熟知しない営業マンレベルでも説明出来る品質基準書でなければならない。

そして3つ目は、お客様との請負契約内容全てを確実に製造履行する為の工事管理を実践することにある。これが最大の難関となり、おそらくこれをクリア出来そうもない建築会社は、早かれ遅かれ事業が疲弊していくであろう。

前回のコラムでも記述してきたが、職人や現場管理者の人手不足と技術スキル不足の両輪課題を持ち合わせながらの品質改革は、並大抵の努力では上手くいかない。我々が一番力強く業界に発信している工事管理体系そのものを、まずしっかり指導を受け、デジタルとアナログの融合活用で、何としてもデミングサイクル【PDCA】を回し続けるリーダーシップと継続こそが大切なポイントとなり、現場風土に根づかせるまで粘り強く推進しなければならない。唯一、品質管理だけは、企業がお金を投資して得れるものではなく、これこそが建築会社の実力でもあり、他社に真似できない本質的な企業の付加価値だと言っても過言ではない。

家を売ることと選ばれることの最大の格差とは?

以前のコラムにも、住宅会社の本来の事業目的は家を造ることで、受注することは手段であると言ってきた。この目的と手段の意味をあまり理解されない理由には、やはり安定した経営をする為には理想過ぎるという意見も少なくはない。そこで、改めて違う視点からその意味を分解し、思考を整理していきたい。
 
『売る』という行為は、基本的にマーケットインという流れであり、『選ばれる』という行為は、マーケットアウトという事になる。卸業界で例を挙げてみるとわかりやすく、販売代理業と購買代理業の差をイメージしてもらえれば非常にわかりやすい。販売代理業というものは、メーカーやフランチャイズ本部が企画商品化したものを、如何にマーケットへ流通させるかという販売量の仕事となり、購買代理業というものは、商品やサービスを手にしたいユーザーやクライアントが、どんなモノを、いつまでに、どれくらいの価格で提供して欲しいというニーズや課題に対して解決したり、供給する価値量の仕事である。まさしく、マグロの時価のようなものである。
 
我々、日本の住環境のマーケットを図る上で一番の目安となる人口や世帯数などのマクロ的変化からもわかるように、少なくとも縮小して行く産業であることは間違いない。だからこそ、建築会社は様々な付加価値を有する為に、設計仕様や性能、そしてインテリアや様々な保証やアフターサービスを手にして、受注拡大というテーマに、手にしたメニューを前面に押し出して、受注結果に結びつけようとするのである。この行為は、何となく付加価値を抱いたように感じるが、あくまで販売メニューという武器を持ったに過ぎず、戦術としてはやはりマーケットインという手法体系と全く変わらないのである。
 
マーケットアウト的な選ばれ方を実現するとなれば、建築会社の価値というものは人からもらう武器を持つことではなく、企業内で生み出され、内製化された価値でなくてはならない。これは非常に難しいことのように思うが、実はシンプルである。これが、これからの建築会社の格差となるのである。
 
建築会社が唯一、自社で生み出して内製化出来るコンテンツは、施工という製造に関する価値しか生み出すことはできない。仕様や商品はお金を出せばマネは出来るが、施工品質だけは自社で生み出すしかない。だからこそ、一番難しいことであり、信念と継続が無ければ成し得る事の出来ない付加価値なのだと思う。こんな思考を持ち合わすつくり手が、地域にドンドン広がって行く力強い住環境こそが、これからの職人達の希望となり、また地域のユーザーをワクワクさせ、結果、地域産業の活性化につながるに違いないと、夢を描き応援していきたい。