これからの工務店経営の基本は、製・管・販が三位一体となること

ご存知の通り120年ぶりと言われる民法改正が、2020年4月から施行されるということで、あと一年強に迫ってきた。以前のコラムにも書き留めたが、自らの会社の施工品質基準を明確にし、それをしっかりお客様へお伝えした中で、製造履行を成し遂げていくという基本思考をお話しすると、昨年より沢山の施工品質基準構築へチャレンジされる企業が増えてきた。少なからず、半年で100社以上のオファーを頂き、取り組ませて頂いたのではないだろうか。今月は自社の施工品質基準書を構築した企業が、次々にぶち当っている壁というものをリアルにお伝えし、2020年4月に向けてしっかり準備していくためのポイントを述べて行きたい。

基本的に木造住宅に対する具体的な工事管理体系が明確でないという業界文化であるだけに、いくら施工品質基準を明確にしても4〜5か月の製造工程で、しっかりと現場の職人各々まで浸透できないことで、精度高い運用まで行き届かない現状が一番の企業の障壁であるようだ。9割以上の企業がぶち当たる障壁だが、実は短期間で成果を上げる特効薬はなく非常に困難であり、少なからず1年近くかかると言えよう。企業を経営していても同じように、事業理念の浸透が難しいのと同じで、浸透させるということはイコール、現場文化に根付かせるということに非常に近い。イメージで行くと習慣化の世界に身を置くイメージで、まさしくPDCAサイクルが回り続けているイメージである。

しかし、この障壁を着実に越えていく企業も1割弱程度あるのも事実であり、逆にこのハードルをクリアしていく企業の共通点を探ることで、本質的な取り組みのポイントが見えてくるのである。障壁を確実にクリアし、成果を上げている企業には、実はこの3つの共通点が存在ているのである。

1つ目の共通点は、協力業社の入れ替わりが無く、学ぶ意識高い点にある。これは、技術力の差というより、仕事に対する謙虚さと素直さにあるのだと思う。現場文化の差といっても過言ではない。

2つ目の共通点は、現場監督が辞めないことである。現場監督の仕事に対する姿勢が、造る喜びを感じながら生き生きしている点にある。これは、現場監督そのもののスキルの前に、経営者自身が現場に対する理解と製造責任に対する姿勢が非常に高いことが挙げられる。

3つ目の共通点は、営業マンが自らの勤めている会社の建物に惚れている点にある。現場の職人や家づくりのプロセス価値を理解し、お客様に一生懸命その価値をお伝えしている点にある。

以上の3つを見ても解るように、品質基準に対する技術的なノウハウを強制的かつトップダウンな取り組みで運用してクリアしている訳でもなく、実にナチュラルで、極シンプルな共通点にしか見えないのは何故であろうか?この3つの要素とは、営業、設計、工務の三位一体な業務連鎖が強いことにあるのではないだろうか。

通常であれば、営業は売ることが仕事!設計は図面を書いて申請することが仕事!工務は現場管理をして実物を造ることが仕事!という、各々が各々の作業に陥り、自部門のことを中心に考え、ノルマ的思考で仕事が進んでいく傾向にある。この障壁をクリアしていく企業の特徴には、必ず互いを尊重し合いながら現場そのものに利益の源泉があることを全社が理解し、特に現場に携わるスタッフほど大切にされていることが特徴である。ズバリ言えば、現場という聖域でお仕事をして頂いている職人を一番の価値であると認めているからこそ、基準一つ一つを真剣に捉えたり、吟味したり、また工夫をしたりしながら、自社基準までも現場主導でどんどん進化させて行く力を持つのである。

つまり、施工品質基準書がディテール的な立場で作成されてしまい、あれば回る!という感覚と、あればリスク回避できる!という目的にすり替わってしまうことが障壁にぶち当たる大きな要因であり、製造履行の為の基本的な運用手引きと管理スタッフと職人の品質のモノサシであるという目的になると、実は民法改正対策という意味合いはあまり関係なく、まさしく通常の製造過程での必須手引きとして認識しているからこそ、特別でない当たり前の仕組みとなるのである。

業界の歴史を辿ると、未来を真剣に考える環境整備が見える

これからの住宅市場において、いつの時代も様々な未来のデータ分析が予想されて行くのだが、ただこんな時代に来ても、まだ新築着工数やリフォーム市場に対して数の予想を中心に指針化してしまうのは、まさしく昭和40年代からの住宅5ヶ年計画の思考の名残りとも言えるのではないか。

高度経済成長期に、あらゆる層の所得者に対して新築住宅の供給を促進させた住宅5ヶ年計画の行く末には、ローコスト住宅普及を台頭に、国民所得の上昇から国民が快適な暮らしを求め出し、そしてそれを叶える新建材がどんどん普及し『快適』というキーワードから高気密・高断熱化にシフトしてきたのであった。その結果、何を引き起こしたのか…。シックハウス症候群や化学物質過敏症などの健康被害が広まったことだった。

F★★★★建材使用義務というホルムアルデヒド規制を余儀なくされ、そして気密化がどんどん進むことで、換気や火災報知器の義務化まで国は進めてきたのである。気がつけば、今や花粉症のような現代病が当たり前になったのは、皮肉にも空気環境変化に伴う事象が原因だったと思う。

なんといっても数を追う国策に対して残された底辺の遺産は、『住宅瑕疵』と言われる恐ろしい製造欠陥問題だったことを皆さん、覚えているでしょうか?実はそんな社会問題から2000年には、品確法が生まれ、追って住宅瑕疵という問題を民間保証という枠組みから国は外し、瑕疵担保責任履行という顧客保護視点から国が事業者に対して強制的に担保させ、現行の瑕疵担保義務に踏み切ってきたのであった。それが今、皆さんが加入している瑕疵保険なのである。

そして人口は減少に転じ、世帯が減り新築着工減を睨んだ国は、とうとう住生活基本法を打ち出したのだった。簡単に言えば、『量から質へ…』という政策転換である。ここからのモードが、これからの未来への政策原点であり、ひとつの覚悟ではなかったのだろうか?

今の現場環境では、すでに材工分離された職人の手間代は、弟子の雇用を守りきれない最低ラインまで底値化し、それに伴ってなり手の問題が課題となり、今や目減りする労働環境に対して、本質的な地位向上に結びつく取り組みすらない。輪をかけて国は、更なる安全な構造設計やしっかりとした性能住宅を推進して行くといった国策に対しても、全く製造現場改革がおいつかず、これから外国人労働者に門戸が開いていったとしても、厚化粧した素肌には、すでに角質だらけの酷い姿と化しているのである。

今年で平成が終わる…。新しい歴史の幕開けには、本当に考えていかないと行けない問題が見える。空き家の増加や建物の資産価値に対する考え方については、国の政策根本から矛盾しているだけに、我が国における高齢化や少子化の課題、さらには住宅そのものの資産価値に対する課題を含め、根っこから向き合っていかないといけないのではないだろうか。

特に空き家の増加については、現在、過半数が賃貸物件である。まだこれからも賃貸物件を供給し続け、空き家増殖化運動でも国は推進していくのか。それどころではなく、空き家自体の不動産所有者が不明である物件も2割を超える勢いであり、まさしく少子化という社会問題から生み出される相続課題は非常に根深い。世間というものは、きっとそんな甘いものではなく、薄っぺらな中身は必ず身を滅ぼすという過去の経験を、日本は初心に帰って学ばないといけないのではないだろうか。

工務店経営はCS戦略より、今こそES戦略視点を

少しばかり極論にはなってしまうが、工務店事業という仕組みは概ね家業である。一般的に家業では、労働時間【インプット】に注力を向け、企業は創出する価値【アウトプット】に注力していく。

マネージメントという管理視点から分かりやすく解説すると、工務店事業のような家業の会社マネージメントでは、より沢山の仕事を受注し成果を上げる為の管理業務に執着し、そしてCS【顧客満足】を最大化させていく戦略を模索していくが、逆に仕組みで動く企業というものは、同じ成果をより短い時間と少ない労力で、いかに無駄を削減し、ES【従業員満足】をしっかり重視して行こうとする。

住宅業界におけるこれからの働き方改革という大きな波が迫っている環境下で、それ以前に現在の貴重な現場監督が退職したり、また現場を支える職人達になり手がいなくなって行く流れは、多くの理由があるにせよ、少なくとも自らの仕事に対する誇りや満足感が満たされていない仕事環境であることをまず理解しなければならない。こんな環境下で、不足した人員を補うための労働効率化という二次的発想は、非常に危険である。

顧客満足を最大化させる為に、社内を疲弊させたり、下請負関係にWIN LOSEという駆け引き関係をもたらすということは、結果、本当の顧客満足を生み出せない社内文化が存在しているということである。しかし現在の工務店事業の進め方は、なんとなく顧客満足を促進させながら、時間効率や労働効率までも欲張って考えてしまいがちである。近年では様々な情報クラウドやIT環境を取り入れ、あたかも顧客満足と従業員満足の両輪を一気に回しているように見えるが、中々上手く実現できない。

ここで大切なことは、従業員が満足したり、自分達の仕事やサービスを誇りに感じないというマインドが仕事を目的化させていることである。そして自分達の仕事の価値がどのように創り出されているのかが、気付かないという哀れな状況下に取り巻かれ、全く社内に自創社員が生まれず、指示待ち文化に拍車をかけてしまう結末となっている。

企業という目的は顧客の創造にあるからこそ、マーケティングとイノベーションがある。そしてその2つを実現する為にも、マネージメントの必要性がある訳である。また、マーケティングは顕在需要の創造であり、またイノベーションは潜在需要の創造である。地域の工務店事業というもののサービス価値を創造する為には、顕在化された仕事のマネージメントという管理業務も大切であるが、やはり地域に潜在化している様々なライフサイクルからイノベーションという発想で、自らが取り組む家づくりというものの価値を色々検討し、創造してもらいたい。

その為には、限られた人材資源を如何に自創化させなくてはならない。つまり、働く従業員が自分達のサービスに誇りを持ち、サービス改善に自らが率先し、周りから認めてもらえる環境づくりこそがやりがいとなり、従業員満足となる。

そんな従業員が会社に溢れていけば、きっと素晴らしい顧客満足を生み出すサービスとなり、社員が自らの価値を感じながら沢山のファンづくりを実践し、結果、顧客の創造という成果を生み出すに違いない。

職人の地位向上の確かな一歩は、営業の売り方に隠されている

2018年8月くらいから、予定している建築案件の現場施工の工期が、非常に違和感を感じるくらい遅れるようになってきた。住宅産業全体をみてもあまり好調ではなく、全体的にジリ貧に感じるのは私だけなのであろうか?

西日本エリアでは、9月の風害でエクステリアや屋根工事の復旧対応過多で新築を止め、OBのお客様を優先的に対応されてい たような流れも多く見受けられた。またこのような特需を除けば、積極的なリフォーム受注もここ最近、大きな伸びを感じることも少なくなってきたのではないだろうか。しかしそれでも今、職人確保に大変な労力を注ぎ、仕事を回しているビルダーの現状は否めない。そんな中で、今、職人に対する目の向け方に気付くビルダーの営業マンが少しずつ増えて来たのである。そんなマインドの変化が、実は将来の会社の成長を大きく左右するきっかけになるとは誰も想像していないだろう。

とある九州のビルダー様の事例を挙げてみよう!年間100棟を超える受注から、既に現場は崩壊していた。何故ならば、現場監督も沢山離職し、今や営業担当が2日に1回、現 場に訪れないと自分が販売したお客様に申し訳ないという気持ちで、技術素人ながら職人さんと会話をする日々。

ある営業責任者が言った言葉は、『職人さんがこんなに頑張ってくれている事を何故、長年気付かなかったんだ!』だった。しかも定期的に現場に足を運ぶ度に、親切に打ち合わせの対応をしてくれたり、色々な技術話や苦労話しを教えてもらえることで、こんなに頑張ってくれている職人さんのことを我々営業がしっかりとお客様に伝えていかないといけない使命感に駆られていくのだと言う。そして営業こそ、少なくとも建築現場という環境にしっかり触れてから販売業務に向き合わないと、間違った価値観でお客様に家づくりを提供してしまうのでは!という懸念まで出てくんのだとしみじみと語るのである。まさしく、我々は職人さんにいつも救われている事に気づいたに違いない。

結果、我々NEXT STAGEの施工品質監査サービスも全棟ご導入された。しっかりとした職人さんの仕事を可視化し、そしてお客様にその仕事の熱い中身をリアルタイムに届けてあげたいから。お客様へしっかり費用を頂ける価値創造を、営業が今、挑戦して行かなくてはいけないことだから。その営業責任者さんからは、『とにかく、早急に営業マン研修会を開いて欲しい!』との積極的な提案が上がってきたのであった。

我々からしても、こんな自発的思考が今の営業環境から上がってくる事がたまらなく嬉しいし、職人さんの仕事の価値を顧客へお伝えようとする考え方こそが、専門技能を持つ職人さんのマインドに火をつけるのだと思う。

価値向上というステージまでの道のりはまだまだ長いが、確かに営業が発信する顧客満足への価値提供で、それに伴う単価への転嫁が生まれ、職人がプライドを発揮できるやり甲斐とこれからの自信につながる進化を導くのである。やはり顧客への一番の接点である営業スタッフが、『現場という利益の源泉』に対して敬意を持つという考え方に気付くことは、間違いなくこれからの職人さんの地位向上に向けての確かな第一歩なんだと確信している。

働き方改革が進む経営の鉄則は、サービスがシンプルであること

住宅産業界における事業成長の背景には、常に売上高という数字を拡大させることが事業成長だと勘違いしている企業が非常に多い。事業成長という意味から考えると、利益を上げることと、市場からみる企業価値の期待感を上げることが本来原則であり、売り先を増やしたり、売るものを増やすことは単なる事業拡大という意味単体に終わってしまう。

拡大するということにおいて、顧客を増やしたりあらゆるサービスをワンストップ的にラインナップしながら売上を上げる方法は、特に間違ってもいない。実は、成長=拡大という公式ではなく、成長=進化であるということを経営者は絶対に忘れてはならない。

特に成長する企業から見てもわかるように、まずサービスが非常にシンプルであることが挙げられる。たくさんのサービスを陳列して成長し続ける会社は今まで見たことがない。伊勢の赤福は、赤福一本であれだけのサービスを展開しているし、あのリクルートだって、ゼクシィとスーモ事業に尖がっている。つまりシンプルでないことが、自らのサービスに対して事業に賭けるエネルギーを散漫させ、特に経営者自身の思考が分散することが一番の大きな痛手となる。また、有効的な投資計画にも繋がりづらいと言えるだろう。

とにかく沢山のサービスコンテンツを持ってしまうことで、何らかの売上が引っかかれば良いという思考が会社風土に根付き、事業採算性という視点の優先順位や判断が遅れ、事業が硬直してしまうという大きなデメリットから、サービス価値という視点の成長を閉ざしてしまうという危険が潜んでいると言える。

我々の業界において例を挙げると、不動産事業として独自に尖る戦略であれば、ある意味シンプルなスキームを横展開に数を作るという戦略は非常に正しいが、家づくりが尖る戦略となれば、どうも数の理論では無いのではないだろうか?むしろ、一つの家づくりにどれだけのサービス価値を上げ、モノづくりに対する利益率を最大化されるかが、大切なことではないだろうか?つまり、ものづくりの市場価値をどう引き上げるか?という経営視点が実は今、試されているように感じるのである。

こんな経営事例を参考にして頂けるとわかりやすいかも知れない。例えば、ある2件の美容室があるとする。A店は、スタッフ2名で客単価5000円のサービスを月に100人提供する。また、B店は、スタッフ2名で客単価10000円のサービスを月に50人提供する。現状は共に売上は50万円であり、スタッフは腕のある店主と見習いのスタッフの2名である。この両店舗を事業拡大しようとするところから本来の経営判断となるのだ。サービス拡大の為にスタッフを3名体制にしながら、A店は月に150人を集客しようとする。逆にB店は月に75人のサービス提供をすれば、A店と全く同じ売上で済む。

ここで大切なことは、売上という視点ではなく、時間という視点である。サービス価値の成長から見た場合、A店は数を回す自転車操業的な運営となり、そこで働くスタッフの育成機会は無くなり、時間と共に働く環境は疲弊していく。しかし、B店はA店の半分の顧客サービスで済む分、一つ一つの仕事を若いスタッフに伝えていける指導時間が生まれ、時間と共にスキル向上や自らの仕事のあり方や目的などを見出しながら経験できるサービスの環境整備が進んでいく。この2店舗が各々時間が経過していくと、将来的にどのようになって行くのか想像が出来るであろう。もっとわかりやすく考えると、自分ならどちらのお店に就職したいか?というスタッフの立ち位置から見てみると、一目瞭然である。

以前のコラムにも述べたが、家づくりもある意味、小売業としてのサービス価値をどれだけ本質化し、価値に転化して顧客から選ばれる価値をしっかり伝えきれるかが、これからの各々の会社の働き方改革の原点となるに違いない。事業成長とは売上だけでなく、自創化させていく人の成長を促しながら、社内全員が自らのサービスに本気で執着してもらう為のシンプルなサービスを一緒に探求させ、自信を持って地域に発信できる信念がきっと地域ブランドとなり、それが指揮を執る経営者自身のフィロソフィーなのだと痛感する。