働き方改革が進む経営の鉄則は、サービスがシンプルであること

住宅産業界における事業成長の背景には、常に売上高という数字を拡大させることが事業成長だと勘違いしている企業が非常に多い。事業成長という意味から考えると、利益を上げることと、市場からみる企業価値の期待感を上げることが本来原則であり、売り先を増やしたり、売るものを増やすことは単なる事業拡大という意味単体に終わってしまう。

拡大するということにおいて、顧客を増やしたりあらゆるサービスをワンストップ的にラインナップしながら売上を上げる方法は、特に間違ってもいない。実は、成長=拡大という公式ではなく、成長=進化であるということを経営者は絶対に忘れてはならない。

特に成長する企業から見てもわかるように、まずサービスが非常にシンプルであることが挙げられる。たくさんのサービスを陳列して成長し続ける会社は今まで見たことがない。伊勢の赤福は、赤福一本であれだけのサービスを展開しているし、あのリクルートだって、ゼクシィとスーモ事業に尖がっている。つまりシンプルでないことが、自らのサービスに対して事業に賭けるエネルギーを散漫させ、特に経営者自身の思考が分散することが一番の大きな痛手となる。また、有効的な投資計画にも繋がりづらいと言えるだろう。

とにかく沢山のサービスコンテンツを持ってしまうことで、何らかの売上が引っかかれば良いという思考が会社風土に根付き、事業採算性という視点の優先順位や判断が遅れ、事業が硬直してしまうという大きなデメリットから、サービス価値という視点の成長を閉ざしてしまうという危険が潜んでいると言える。

我々の業界において例を挙げると、不動産事業として独自に尖る戦略であれば、ある意味シンプルなスキームを横展開に数を作るという戦略は非常に正しいが、家づくりが尖る戦略となれば、どうも数の理論では無いのではないだろうか?むしろ、一つの家づくりにどれだけのサービス価値を上げ、モノづくりに対する利益率を最大化されるかが、大切なことではないだろうか?つまり、ものづくりの市場価値をどう引き上げるか?という経営視点が実は今、試されているように感じるのである。

こんな経営事例を参考にして頂けるとわかりやすいかも知れない。例えば、ある2件の美容室があるとする。A店は、スタッフ2名で客単価5000円のサービスを月に100人提供する。また、B店は、スタッフ2名で客単価10000円のサービスを月に50人提供する。現状は共に売上は50万円であり、スタッフは腕のある店主と見習いのスタッフの2名である。この両店舗を事業拡大しようとするところから本来の経営判断となるのだ。サービス拡大の為にスタッフを3名体制にしながら、A店は月に150人を集客しようとする。逆にB店は月に75人のサービス提供をすれば、A店と全く同じ売上で済む。

ここで大切なことは、売上という視点ではなく、時間という視点である。サービス価値の成長から見た場合、A店は数を回す自転車操業的な運営となり、そこで働くスタッフの育成機会は無くなり、時間と共に働く環境は疲弊していく。しかし、B店はA店の半分の顧客サービスで済む分、一つ一つの仕事を若いスタッフに伝えていける指導時間が生まれ、時間と共にスキル向上や自らの仕事のあり方や目的などを見出しながら経験できるサービスの環境整備が進んでいく。この2店舗が各々時間が経過していくと、将来的にどのようになって行くのか想像が出来るであろう。もっとわかりやすく考えると、自分ならどちらのお店に就職したいか?というスタッフの立ち位置から見てみると、一目瞭然である。

以前のコラムにも述べたが、家づくりもある意味、小売業としてのサービス価値をどれだけ本質化し、価値に転化して顧客から選ばれる価値をしっかり伝えきれるかが、これからの各々の会社の働き方改革の原点となるに違いない。事業成長とは売上だけでなく、自創化させていく人の成長を促しながら、社内全員が自らのサービスに本気で執着してもらう為のシンプルなサービスを一緒に探求させ、自信を持って地域に発信できる信念がきっと地域ブランドとなり、それが指揮を執る経営者自身のフィロソフィーなのだと痛感する。

2020年民法改正に伴う自社品質基準構築の必要性

約120年ぶりと言われる民法改正が、2020年春に迫って来ている。我々住宅産業界にとっては、何となく不利で厳しい環境変化のように捉えがちだが、私はむしろ建築会社としては有利な環境に振れると考えている。但し条件として、経営者が製造会社としてごく当たり前の事業の原点に気付くか否かという、企業姿勢に掛かっているといっても過言ではない。

わかりやすく表現すると、文字通り「請負」つまり「請けたら負ける!」である。常にユーザーの価値観にそぐわないものは、納得の行くまで対応せざるを得ないという契約環境が、この業界に蔓延した不採算要素となっているに違いない。建築基準法を含めた法令関連の抵触ならともかく、それ以外の「施主判断基準」というものでジャッジされなくてはいけない環境下にある。考えてみれば、そのような施主判断基準で多くの建築会社は、長年にわたり、たくさんの無償対応を重ねてきたのであろう。

現行の民法は、住宅に瑕疵が発生した場合、ユーザーが補修請求や賠償請求を選択をした中で、事業者がお金という手段で対処してきた。そのお金というものも、瑕疵担保責任履行法という瑕疵担保法令義務の中で、保険や供託金積立をし、対応してきたと言えよう。2020年春からは、瑕疵という不具合そのものから、契約の内容に適合しないものという(契約不適合)解釈となり、基本、契約時の設計図書通りに直すということとなる。当然直せないという不能行為や、対応出来ないという拒絶行為によっては、損害賠償請求を受ける形となる。

ここで大切なポイントは3つある。1つ目は、大前提として自社の品質基準を事前に明確に定めておく必要があるということだ。これは何となく施工ディテールのような資料のように捉えがちであるが、ユーザーとの品質契約という行為を実現する為にも、現場の職人達に明確に表現し、分かり易く伝わる指示書にまで落とし込まなければ具現化出来ず、全く意味がないものになる。

2つ目は、その品質基準を契約時に営業がしっかり説明責任を果たし得るという事である。その為にはユーザーに伝わりやすく、さらに技術を熟知しない営業マンレベルでも説明出来る品質基準書でなければならない。

そして3つ目は、お客様との請負契約内容全てを確実に製造履行する為の工事管理を実践することにある。これが最大の難関となり、おそらくこれをクリア出来そうもない建築会社は、早かれ遅かれ事業が疲弊していくであろう。

前回のコラムでも記述してきたが、職人や現場管理者の人手不足と技術スキル不足の両輪課題を持ち合わせながらの品質改革は、並大抵の努力では上手くいかない。我々が一番力強く業界に発信している工事管理体系そのものを、まずしっかり指導を受け、デジタルとアナログの融合活用で、何としてもデミングサイクル【PDCA】を回し続けるリーダーシップと継続こそが大切なポイントとなり、現場風土に根づかせるまで粘り強く推進しなければならない。唯一、品質管理だけは、企業がお金を投資して得れるものではなく、これこそが建築会社の実力でもあり、他社に真似できない本質的な企業の付加価値だと言っても過言ではない。

家を売ることと選ばれることの最大の格差とは?

以前のコラムにも、住宅会社の本来の事業目的は家を造ることで、受注することは手段であると言ってきた。この目的と手段の意味をあまり理解されない理由には、やはり安定した経営をする為には理想過ぎるという意見も少なくはない。そこで、改めて違う視点からその意味を分解し、思考を整理していきたい。
 
『売る』という行為は、基本的にマーケットインという流れであり、『選ばれる』という行為は、マーケットアウトという事になる。卸業界で例を挙げてみるとわかりやすく、販売代理業と購買代理業の差をイメージしてもらえれば非常にわかりやすい。販売代理業というものは、メーカーやフランチャイズ本部が企画商品化したものを、如何にマーケットへ流通させるかという販売量の仕事となり、購買代理業というものは、商品やサービスを手にしたいユーザーやクライアントが、どんなモノを、いつまでに、どれくらいの価格で提供して欲しいというニーズや課題に対して解決したり、供給する価値量の仕事である。まさしく、マグロの時価のようなものである。
 
我々、日本の住環境のマーケットを図る上で一番の目安となる人口や世帯数などのマクロ的変化からもわかるように、少なくとも縮小して行く産業であることは間違いない。だからこそ、建築会社は様々な付加価値を有する為に、設計仕様や性能、そしてインテリアや様々な保証やアフターサービスを手にして、受注拡大というテーマに、手にしたメニューを前面に押し出して、受注結果に結びつけようとするのである。この行為は、何となく付加価値を抱いたように感じるが、あくまで販売メニューという武器を持ったに過ぎず、戦術としてはやはりマーケットインという手法体系と全く変わらないのである。
 
マーケットアウト的な選ばれ方を実現するとなれば、建築会社の価値というものは人からもらう武器を持つことではなく、企業内で生み出され、内製化された価値でなくてはならない。これは非常に難しいことのように思うが、実はシンプルである。これが、これからの建築会社の格差となるのである。
 
建築会社が唯一、自社で生み出して内製化出来るコンテンツは、施工という製造に関する価値しか生み出すことはできない。仕様や商品はお金を出せばマネは出来るが、施工品質だけは自社で生み出すしかない。だからこそ、一番難しいことであり、信念と継続が無ければ成し得る事の出来ない付加価値なのだと思う。こんな思考を持ち合わすつくり手が、地域にドンドン広がって行く力強い住環境こそが、これからの職人達の希望となり、また地域のユーザーをワクワクさせ、結果、地域産業の活性化につながるに違いないと、夢を描き応援していきたい。
 

現場管理における「ムリ」「ムダ」「ムラ」を改善する方策とは?

5月末に野村総合研究所より、現場で働く大工人口が2030年には約21万人に推移すると発表があった。同時に現場就労者数の減少から、現場生産性を現在の約1.4倍に引き上げる必要があるという試算も掲載されていたのである。今回のコラムでは、現場生産性の向上が進まない理由である「ムリ」「ムダ」「ムラ」という現象が現在加速し続け、歯止めが効かない原因を抽出し、具体的な改善方針を見出してみた。

まずムリという現象に対してであるが、ムリが引き起こる要因は工程である。いわば施工期間に関する時間の問題である。事業者側がどうやって利益を出すかという命題に対し、原価をいかに引き下げるか?と、キャッシュをいかに早く回すか?の短期的な経営事情がどうしても先行してしまい、本来製造に対する採算工期という現場マネージメントがしっかり出来ていない為である。

次にムダに関してであるが、現場管理でムダが引き起こる要因は、原価管理そのものにある。一つ一つの作業工程を更に細かく作業手順に分解し、いつから、誰が、どこまでの範囲を、いつまでに、どうやって…という、仕事の領域と役割分担、そしてしっかりとした積算による受発注管理がなされない為に、限られた工期にムダが生まれてくるのである。特に、元請会社が下請やパートナー会社への積算や設計業務などのアウトソーシング化という体制の変化によって、逆にムダに拍車がかかって来ていると言えよう。

最後にムラである。ムラの改善が一番ハードルが高いと言えるが、ムラの要因はまさしく施工品質の崩壊にある。この施工品質の改善と向上が、建築事業で一番難しいとされる領域でもあり、我々NEXT STAGEも製造品質改善の習慣化できるようなコンサルティングサービスをパッケージにして、現在もメインでご提案をさせて頂いている。

以上の、「ムリ」「ムダ」「ムラ」についての要因に対して、具体的な改善方策はある。ただ、改善手順が大切であり、一気には進まない。

まずはムリの解消の為に細かな標準工程表の作成が有効ではあるが、その前に、自分達の作る住宅の設計仕様の正しい選択と企画の精度に左右されるので、専門家などにしっかり相談しながら慎重に手順までを構築したいところである。

次にムダの解消として、受発注管理などのオペレーション強化であるが、現在普及している情報共有クラウドサービスなどの利用は非常に有効な手段だと考える。ただ、クラウドサービスを利用して生産性が上がる訳でなく、作業効率が上がると考えて積極的に取り入れることをお勧めする。あくまでもツールであり、社内業務統制は必須である。

最後のムラの解消は、施工品質の改善をPDCAサイクルを回し続けなければ、改善や向上はあり得ない。つまり、製造戦略として当たり前に現場に根付かせる仕組みをまず体系化し、品質に対する具体的な品質基準づくりと、絶対後戻り出来ない主要工程タイミングでの振り返りと評価とフィードバックを実践し続けることが、本質的な生産性向上の基盤づくりだと確信している。品質が安定し向上のフェーズに突入した時には、現場環境整備も自然と進み、ムリ、ムダの推進で掲げた方策の成果と一緒に、一気に結果が見えてくるに違いない。

外国人労働者を受け入れる前に企業がやるべきこと

先月末の日本経済新聞の一面に、2025年を目処に建設・農業分野へ外国人労働者50万人の受け入れ門戸が広がるという記事が掲載された。すでに都心部を中心に外国人労働者を受け入れ、建築現場では様々な工種で頑張っている職人の姿を見る機会が少しずつ増えてきた。またつい先日、野村総研からも2030年には大工人口が21万人になるという統計予想も発表され、1968年の94万人近い大工人口から考えると、益々現場環境は厳しい状況になっていくに違いない。中でも、産業界の未来を背負う貴重な20歳以下の大工人口が約2300人程度、またこれからの熟練工として大切な30歳以下の大工人口が約3万3000人程度と、モノづくりへ参入する若者達のなり手の問題は、これからの住宅経営者において、特に深刻に受け止め、次世代に向けての環境整備に寄与してもらいたいのである。

現在の建築現場においては、一般企業がユーザーから建築を請け負い、営業、設計、工務といったポジショニングで業務連携しながら進めているのであるが、同じ日本人同士であっても、契約から施工管理、そして維持管理までの事業フロー全体をしっかりマネージメントすることすら至難の業となっているのが今の業界の 現実ではないだろうか?製造現場に人員が足りないという課題に対し、単に外国人労働者を受け入れて一時的に解決するなどという発想はあまりにも危険であり、安易に考えるべきことではない。

今後、数十年先には現場職人の過半数が外国人労働者となっていくとすれば、日本語で記す設計図書ですら外国語に翻訳していかないといけないだろうし、様々な情報クラウドも外国語で伝達して行くような仕組みや体系までも視野に入れて検討していかないと、単純にコストという発想で、外国人労働をツールとして利用 するなどという考え方がもし蔓延するならば、ドイツのような世界の職人をこの日本に集約していくことはあり得ないであろう。

その前に、工事管理体系すら存在しない木造建築の中で、まず自社の設計仕様をシンプルに正しく検討し工種を分解した中で、各々の工種で細かな作業範囲を明確化しそして仕組み化させ、標準工程表を定めた上で進めていけるような訓練を、今からトライアルして行く必要がある。設計図書も同じく、まずは施工の立場から見てわかりやすいもの、そして不整合のない正しい指示が、現場に落とし込める表記などの工夫を絶対に手を緩めてはいけないし、現場が必要とする施工図的な目線を少しでも理解した設計業務が出来るようなスキルや教育も急務であると言える。現場環境基盤にまで本質的に根付かせる為には、行政も一緒になってその細分化した専門分野をマイスター制度のような専門職として育成させる生涯教育や認証制度という体系を形成しない限り、未来の本質的な現場管理体制を築き、充実させて行くことはきっと難しいであろう。

家づくりというものを今まで通り、これからも地域産業の役割としてしっかり根付かせていくのか?それとも住宅を一つのモノと言う単体の発想で、誰もが平たく商品としてこれからも広がり続けてしまうのか?せめて、モノづくりを担う職人の技能が手間賃に反映されたり、現場管理に携わる技能者や設計者が、未来に希望の持てる環境下の中で働けるフィールドだけは壊してはならない。そうでないと、若者は業界参入への希望すら失ってしまうのである。住宅産業界も、これから理想と現実を余儀なくされる時代が近々到来しそうである。