我々が考える建物価値向上へのプロセスとは

35年という長い住宅ローンに対して、住宅における建物の資産価値が非常に短く釣り合わないことが、住宅産業界の課題でもあります。更にすまい手の建物に対する価値観も日本独特であり、海外の意識と比べ、まだまだスクラップ&ビルドの慣習が根付いている国だと言えるでしょう。国政や行政が建物価値向上を図る政策として、長期優良住宅認定やインスペクションといった取り組みはあるのですが、体系的な政策として業界へ浸透できておらず、部分的で手前味噌的な捉え方になりつつあることが、本質に踏み込むにはほど遠い状況にしているのではないでしょうか。

我々の考える建物価値向上へのプロセスとは、3段階のPDCAを回さない限り建物価値には到達できません。更にその手順を間違えると、部分的な単体の対処で終わってしまう恐れがあります。例えば維持管理をケースにあげると、点検やメンテナンスいったものがそうです。

まず第1段階は、やはり新築時の施工品質管理の徹底です。施工精度を測る指針さえ存在しない現状では、製造するプロセスにおける主要ポイントでの評価が出来ません。この主要ポイントでの評価を行わない限り、現場で起きる不具合の要因分析も出来ず、次の現場で改善すべき具体的な課題を抽出する機会さえ損失してしまいます。まずは施工におけるPDCAサイクルが回せる環境を構築すべきで、これをやらない限り、建物自体の施工精度を製造工程で確認出来ず、建物価値のベースにもなりません。

次の第2段階は、住宅性能向上へのプロセスです。自らが目標値として定めた住宅性能がしっかり発揮出来ているか否かをチェック・計測することが重要です。この段階では、施工品質の良さが大前提となり、やっと設計や企画の品質に対する品質管理に踏み込めるのです。ちなみに設計品質改善については設計仕様の評価・改善だけでなく、契約から着工までの社内業務フローも含めて評価・改善して行かなくてはなりません。設計品質改善の具体的な課題抽出も、施工品質改善プロセスと同じであり、やはり現場で引き起こっている現象や事象を謙虚に見つめない限り進みません。イメージとしては「住宅性能=施工品質+設計品質+製品品質」のような公式が成り立つのではないでしょうか。

最後の第3段階は、完成後の維持管理品質となります。ここでのポイントは、やみくもで無計画な点検とメンテナンスを実施しないということです。まず、新築時の設計仕様に基づく点検内容の是非を精査し、部位毎にいつ・どのように点検し、その点検結果をどのように蓄積し活用するのかという維持管理基準を策定し、課題抽出や経過観察、または手直し検討といった対処を実施する必要があります。更に、この見える化は当然のこと、引渡し後の経過によって引き起こる現象をしっかり検証し、何故引き起こったのかという要因分析と改善策を、新築の設計仕様に反映させていくという、大きなPDCAが必要になってくるのです。これが企画品質向上に繋がる大切な製造会社(住宅会社)の仕事です。いずれにせよ、現場での気づきや改善策が製造会社である住宅会社のビッグデータとなり、貴重な資産となる訳ですから、長期的な取組としてイメージしない限り、住宅の将来的な資産価値向上への可能性を失ってしまうのだと考えます。

以上、製造サイドとして努力していくべき建物価値向上のプロセスを述べましたが、購買サイド(ユーザー側)が見る建物価値は非常にシンプルです。例えば、中古物件を買うユーザーは、この中古物件の新築時の製造工程や維持管理工程が記録として蓄積され、前オーナーがどんな住まい方でどんなタイミングでどういったメンテナンスをしてきたかの公正なプロセスの履歴が見えさえすれば、その住宅の建物価値を客観的に判断し、いくらぐらいかという値ごろ感さえ一致すれば購入に至るという、シンプルでてリアルな取引が成立すると言えるのです。

行政による中古住宅の流通活性化に準じて事業を進めていくことも大切ですが、民間企業らしい本質的な建物価値向上への努力が一番重要なのではないでしょうか?