「住宅研究所」というアライアンス構築の必要性

先日、東京の市ヶ谷TKPカンファレンスセンターで、「工務店がクレームを回避する為に技術研究所を持つ方法」と題し、株式会社e-ハウスプロジェクトの小坂代表の計いの中、各方面の見識者を壇上に、素晴らしいフォーラムが開催された。今回、このフォーラムに弊社も協賛企業としてバックアップさせて頂いたが、まさしく今の住宅供給環境には必要不可欠だと常々感じるのである。
 
我々は全国の建築現場の施工の現状を日々見せていただいている。以前のコラムにも書かせていただいたが、住宅品質は4つの品質の集大成であるとNEXT STAGEは定義している通り、施工の品質、設計の品質、維持管理の品質、そして企画の品質を奏でる必要がある。しかし近年、企画住宅が益々増えて行く中、どうしても住宅の商品企画の段階で、ある程度の基礎知識の中で意匠や性能などを安易に組み合わせたり、建材商社やメーカーからの商品PRをただ鵜呑みにして設計仕様を決めて行く傾向が高く、我々が現場施工の段階で不備として上がってくる要因の一つに、企画の段階からの根本的な不具合を目の当たりにする事も少なくはない。
 
工務店自らが、自分達が提供する市場にどんな家づくりを推進して行きたいのかのターゲティングをまず明確にし、その明確にした家づくりをしっかり築く為にも、一番家づくりで大切な主要構造部となる構造設計、そしてすまい手側の快適性だけでなく、その大切な躯体を傷めない為の性能設計を製造側の両面からしっかり検討し、それを精度高い。施工実現するための正しい部材の使い方から施工品質基準までを、計画段階から準備し、社内に網羅しておく必要がある。またそれを全社共有するためには、効果的な情報管理手段として、様々なクラウドサービスを駆使しながら、均等に確実に、着工前の義務フローから施工管理まで落とし込んで行かねばならないのである。
 
現在、このようなノウハウやリソースを内製化できる住宅会社が少ないだけに、我々を含めた各方面の見識者と共にアライアンスを組み、産業界の裏方の仕組みとしての何らかの団体を築いて行く事が急務であり、地域のつくり手を支えて行く必要があるのではないだろうか。さらにこのノウハウ構築には、既に市場に供給されている既存住宅の現状を日々しっかり分析できる環境と、その傾向やデータに基づいて、新築時の仕様改善が有効的に実施出来る充分なフィードバックの仕組みや体系が必要となるであろう。
 
NEXT STAGEは、このようなひとつのスキームを体系化し、そして牽引できるよう業界に呼びかけ、本質的なインスペクションのPDCAモデルをもっと積極的に活性化しながら、これからもチャレンジして行きたいと考えている。

住宅事業のあるべき利益構造とは?

日本には、様々な事業がある中、この住宅産業の事業構造を種別すると、小売業でありながら製造業である。自動車業界や家電業界をみても、製造業としての製造利益と、小売業としての販売利益の二重構造となっている。しかしながら、建築事業は製造業としての利益だけで、製造以外に関する一切の費用については、利益転嫁出来ずに留まっている業界常識が、今や建築事業の限界利益となり、頭打ちとなっている。利益の前に、まず粗利率に対して着眼してみよう。
 
様々な産業界の製造業に的を絞って私なりに経済産業省のデータを調べてみると、売上総利益率【粗利率】は、製造業平均で22.3%となっている。これを規模別にみると、中小企業が24.9%、大企業が21.0%となり、中小企業が大企業を3.9ポイント上回っている。また、小売企業に的を絞って調べてみると、売上総利益率は、小売業平均で27.6%となっており、これを規模別にみると、中小企業が29.1%、大企業が26.4%となり、中小企業が大企業を2.7ポイント上回っていた。住宅産業も本来、この2つの利益構造を持ち合わせていかないとダメなのではないだろうか?わかりやすく例を上げて考えてみよう。
 
例えば、分譲事業のような業態であれば、土地の仕入れに対して販売に必要な小売粗利をプラスし、更に土地の上に乗せる住宅という製造粗利が二重になることで、 グロス的な発想で利益の出し方が検討でき、事業戦略によっては非常に高い収益を望め、また様々な投資戦略も活発になる。しかし一般建築請負業をしている地域の工務店事業をみてみると、住宅を製造する粗利の範囲で様々な販売活動から引渡し後のメンテナンスに対する経費までもその枠内でやり繰りしている。これでは正直、次への投資は厳しくなり、保守的な事業戦略になってしまうであろう。やはり住宅を販売したり維持管理をしたり小売としての役割と価値が明確になれば、販売やサービスに対する対価としての小売の粗利をしっかり産み出すことができるのではないだろうか?
 
しかしながら、現在の工務店経営の実態としては、販売に対する価値を産み出す以前に、分譲会社やローコスト住宅が提供する市場の土俵に取り巻かれ、どうやって受注していくかをまだまだ価格という視点からでしか検討出来ていない部分が沢山あると感じている。分譲事業と地域工務店事業は本来の事業目的が全く異なっており、分譲事業はいかに不動産戦略に価値を生み出し、地域工務店事業は本質的な住まいづくりという小売戦略に価値を見出さなければ、いけないのではないだろうか!販売価格とは、家単体のモノだけを示すものではなく、サービス価値そのもの全てでなければならない。
 
つまり、工務店事業の足らない部分とは、まず製造利益を最大化することを体質化し、そして提供するサービスに対する価値向上を本気で検討し、実践していくことが大切であるろう。顧客にとって、特別と言われる自社の得意を社内で探求し、その得意をピカピカに磨き上げていただきたいといつも願っている。結果、これがきっと真の地域ブランドに繋がるのだと確信している。

工務店の働き方改革が進まない理由とは?

私自身、仕事柄現場監督さんとお会いする機会が非常に多い。会う度に肩を叩いて、「どう最近、忙しい?」と語りかけると、「いやぁ、毎日大変ですよ。また人が辞めちゃって!」などと悲壮な返事が戻ってくることが多々ある。 本当に心痛いほど理解できるし、なんとかしてあげたいと思う毎日である。

先日、住宅産業界に特化して働き方改革をされているコンサルタント会社の代表と会談し、色々と学ばせていただいた。この業界で働き方改革をしづらい一番の環境や理由とは、営業、設計、工務など、働き方の体系が全く異なる職種が混在した事業であるということ。さらに零細会社が多いだけに、仕事内容や役割をどうしても個人の能力に依存せざるを得ない環境だからだそうである。

例えば同じ建築業界でも、設計事務所なら、工事監理という業務で一部、現場打ち合わせなどがあったとしも、机に向かって仕事をする事務系スタイルが大半を占めるのだと思う。それであれば確かに全社的な改革も進めていきやすいのかもしれない。またゼネコンを中心とする施工会社を見れば、社員数が多いということもあり、営業、設計、積算、現場管理とそれぞれ専門の業務部門をつくることもできる。しかしながら工務店事業となると、ファンづくりのイベントから販売活動、見積り作成、お客様を納得させられる設計提案、更には請負契約に基づく工事管理、そして引き渡した後の長期に至る維持管理まで複数の業務を担わなければならない状況も多い。

実は家づくり事業は、このように本来非常に付加価値の高い独自のサービスであるはずなのに、何故か粗利率、利益額が異常に下げ止まりした事業と化してしまっていることが、根本的な改革を行うための原資が捻出できない要因であることは間違いない。つまり粗利率が下げ止まっているということは、職人を含む工事原価が限界にきているということ。そこには、製造会社が当然かけるべきコストである製造品質の費用すら見えてこない。そして営業利益が下げ止まりするということは、その会社の事業価値を向上するための人件費や販売促進費を含む一般管理費も限界にきていることを、経営者がまず一番に理解することが大切である。

このようにあらゆる費用が限界ラインに達している状況で働き方改革をするとなれば、やはり至難の業ということがわかりえるだろう。これは、各々の住宅会社における事業価値を生み出す本質が整理されておらず、なんとなく変えている仕様や工法などの表面的で手段的な違いを差別化と勘違いしてしまい、本来やるべき、他者が追随出来ない本質の強みを尖らせた差別化となっていないことが原因と言えるのではないだろうか?

このような事業環境で確実に改革して行く手順とは、まずその企業の最重要のミッションをシンプルにすることにある。そのためにはSWOT分析などを一度しっかり行い、自社は販売活動が得意なのか?また設計提案が得意なのか?また工事管理を段取り良く行うことが得意なのか?など、どれかひとつの強みに集約し、自社の事業価値を尖らせていくことが最重要である。

例をあげると、工事管理能力は他社に負けないくらい自信があるのなら、敢えて元請事業にこだわらず、他社に追随されないくらいの施工管理能力をもった専門企業に進化させれば、恐らく市場から引っ張り凧になるであろう。また営業販売が得意で誰にも負けないという自負があれば、完全な販売専門企業に進化させ、販売が苦手な企業の代役を努めていくことは 大きな可能性を秘めているのかもしれない。

改めてビルダーの働き方改革のポイントを考えてみると、シンプルな目的の明確化と事業特化を兼ね合わせて進めていくことがポイントであり、意識改革や風土改革まで影響する可能性も高い。さらに尖った企業ほど、社員やパートナーの離脱を防ぎ、やりがいある仕事場の環境づくりを目指すというこれからの時代に大切な形成思考だと感じている。

目的と手段の逆転思考が、建築現場の価値を生み出す

年新春号のAcro Fieldsで、現在、住宅業界の様々な分野でご活躍されている方々を交え、住宅業界の現状や抱える課題を出し合いながら、今後の業界活性化に向けた建設的な議論をした。オフレコな話題に踏み込む場面もあったが、設計・性能・施工・営業・業務管理のどの分野においても、ノウハウや取り組み方のようなプロセスや戦術論が目立ち、「何のために?」と言う目的を明確に意識・理解できていないという原理原則的な経営課題を抱える建築会社が多いことが浮き彫りになった。本当に地震に耐えきれる十分な地盤や基礎、そして構造にする為にはどうしたら良いのだろうか?
 
快適に過ごす為の断熱性能や気密性能、さらに主要構造に腐朽菌を繁殖させず、永く傷まない為の防水や通気、換気をどう考えていけば良いのか?またこれらを実現させる為に、1棟1棟の安定した工事管理や品質管理を、どのように体系づけていけば良いのだろうか?まさしく、これらは住宅を製造していく上で非常に大切なことであり、当たり前の目的でもある。

このような当たり前の目的をしっかりプロットせず、なぜか色々なツールに手を出して各々の課題を埋めようとする傾向が高い。これではいわば目的を手段で埋め合わすことになり、 気がつけば、会社に沢山のワンストップサービスメニューがあふれ、手段のオンパレードになってしまっている。結果、ツールという手段を使いこなすことが目的となってしまい、本来の目的を達成する為の手段にはなっていないのである。

我々は製造会社における品質管理を体系的に社内に根付かすサービスを独自で展開しているが、顧客に提案させて頂く際、往々にして品質管理にかかるコストを原価ではなく経費と考えてしまう企業が多い。さらに現場におけるチェック環境ですら、役所の検査、瑕疵保険検査や性能評価の適合検査などに置き換えて、第三者検査だから安心で、しかも合理的という勘違いまで引き起こしている。

確か、昨年の日経ホームビルダーに第三者検査の導入率アンケートの結果が掲載されていたのだが、40%前後という異常な導入率の結果を目にした時、非常に驚きを感じてしまった。これは瑕疵保険検査などの検査行為が第三者による管理になるという認識で捉えており、この産業が建築行為に対してどれだけ無知なのかを痛感した。

住宅業界の地域新聞を読むと、現状の急務な経営課題として、職人不足と高齢化、現場管理の向上、受注の強化、粗利の低下の4つが必ず上がってくる。本来、経営者は最も深く課題を理解しているはずなのだが、現場というステージで課題がこれだけ山積みしていても、 何故か受注の強化を優先課題として取り組む経営者が多いのは、どの時代でも変わらない業界体質なのだろうか。

現場というステージで課題解決を行う目的は、建物を製造するという価値しか生み出せない現場から、施主様や購入者が共感しファンとなって新しい顧客へ伝えてくれる現場にすることであり、そこに別の価値が生まれる。価値ある建築現場にはきっと素晴らしい職人や現場技能者が集まり、更なる価値向上に寄与してくれる。そんな現場にすることが本質的な現場の課題解決の目的である。現場主義というテーマをしっかりと掲げ実践してくれる企業が、これから先どれほどあるのだろうか。微かな期待を胸に秘め、これからも価値ある現場管理体制づくりを発信していきたい。

業界経営者は、今一度、経営の原理原則に気付き、経営哲学を高めて欲しい

今、世間には様々な情報や成功事例が氾濫している。

例えば、建設現場や会社内のコミュニケーションが不足すれば、それを表面上でも補うツールや仕組みを求め、 クレームが増えれば対応できる保証スキームを求め、職人が不足すれば、仕事と職人をマッチングさせるツールを求める。さらに、これらのニーズに対応した仕組みやツールが色々と登場する。これはベンチャー発想というより、今の時代を象徴する問題対処型情報競争合戦であり、芯の無さを感じる毎日である。

我々NEXT STAGEは、住宅品質向上というテーマで唯一無二の事業を行っているが、これは現場施工管理に対して、建築会社が経営課題として抱える改善ニーズが根深く存在するからである。これはマーケティングの中での需要と供給のバランスで成り立っており、一見、問題対処型情報競争合戦に見えるかもしれないが、決して企業の盲点で利を得ている訳ではない。

その時代での旬の課題解決と目新しい戦略を模索するために、どの建築会社もあらゆる手段や、様々なサービスや商品に手を出してしまいがちであるが、建築会社として永く存続し地域貢献し続ける為には、やはり基本として1つ1つの物件がしっかり製造できる仕組みを社内に作り上げ、回し続けることを最優先の命題と考えるべきであろう。時代が変わろうと、建築会社の事業目的は普遍的であることを忘れてはいけない。

健全に製造できる社内体制を確立し適正な利益が確保できることが事業の価値そのものである。言わば営業利益を最大化することこそがその会社の事業価値に繋がるのである。決して売上ではなく、利益を最大化させることにある。利益を最大化する手段としては次の3つしかない。

①売上を上げること
②粗利率を上げること
③費用を減らすこと

この原理原則を考えると、今後の資材高騰と人件費高騰をしっかり見据えて、経営判断をしていかねばならない時期に来たのではないだろうか。資材や人件費の高騰は工事原価が膨らむことであり、②の粗利率の低下が加速するということである。すると一般的には①の売上を伸ばす戦略に注力しがちであるが、これは会社のキャッシュフローという観点では、ひと昔前のバブル経営モデルであり自転車操業化してしまう危険性を潜めている。つまり③の費用に関する戦略をしっかり持つことが、 これからの安定経営の鍵になると言える。

建築会社を経営する上で人件費は費用の多くを占める。 実は労働分配率が高い会社ほど人の価値【役割】を明確にしないと経営課題は解決しない。つまり組織が活性化しても、コアの課題に人を分配しないと、根本的で永続的な事業価値の向上にはなり得ないのである。しかし現実は結局人材を営業に回し、顧客インプットの最大化に配置するという安易な経営に走ってしまう。

営業活動における最大化は、集客の仕組みを如何に作るか、そして自社のサービスにどれだけ本質的価値を付加して市場に提供するかである。建築会社の本業である製造については、その製造工程でロスの少ない生産管理スキームを構築することと、精度の高い品質管理スキームを構築することであり、社内でこれらの仕組み化が出来るかどうかが、建築会社が競い合うこれからの本当のステージであると言えよう。

いずれにしても建築業界では、売上アップという上っ面だけの事業拡大で長い歴史を歩んだ会社はほとんど無い。それぞれの建築会社が、何を目的に事業を営んでいるのか?また、それを達成するためには、どんな手段を選択し、どのようにリソースを配分するかの軸を固め、未来をプロットした本質的で強い経営を推進して頂きたいといつも願っている。

パートナー先の選択や取引先の選別も重要となる。多くの商材を扱う事業パートナーはやはり力も分散し、キラーコンテンツが存在しない場合も多い。その会社本来の事業軸があれば、取り巻く環境も類を呼ぶが、手段に明け暮れる会社では常に入れ替えざるを得ない仲間しか集まらない。経営者には、自らの経営フィロソフィーを高めていただきたいと願う。