工務店の働き方改革が進まない理由とは?

私自身、仕事柄現場監督さんとお会いする機会が非常に多い。
会う度に肩を叩いて、「どう最近、忙しい?」と語りかけると、
「いやぁ、毎日大変ですよ。また人が辞めちゃって!」などと悲壮な返事が戻ってくることが多々ある。
本当に心痛いほど理解できるし、なんとかしてあげたいと思う毎日である。

先日、住宅産業界に特化して働き方改革をされているコンサルタント会社の代表と会談し、
色々と学ばせていただいた。
この業界で働き方改革をしづらい一番の環境や理由とは、営業、設計、工務など、
働き方の体系が全く異なる職種が混在した事業であるということ。
さらに零細会社が多いだけに、仕事内容や役割を
どうしても個人の能力に依存せざるを得ない環境だからだそうである。

例えば同じ建築業界でも、設計事務所なら、工事監理という業務で一部、
現場打ち合わせなどがあったとしも、机に向かって仕事をする事務系スタイルが大半を占めるのだと思う。
それであれば確かに全社的な改革も進めていきやすいのかもしれない。
またゼネコンを中心とする施工会社を見れば、社員数が多いということもあり、
営業、設計、積算、現場管理とそれぞれ専門の業務部門をつくることもできる。
しかしながら工務店事業となると、ファンづくりのイベントから販売活動、見積り作成、
お客様を納得させられる設計提案、更には請負契約に基づく工事管理、
そして引き渡した後の長期に至る維持管理まで複数の業務を担わなければならない状況も多い。

実は家づくり事業は、このように本来非常に付加価値の高い独自のサービスであるはずなのに、
何故か粗利率、利益額が異常に下げ止まりした事業と化してしまっていることが、
根本的な改革を行うための原資が捻出できない要因であることは間違いない。

つまり粗利率が下げ止まっているということは、職人を含む工事原価が限界にきているということ。
そこには、製造会社が当然かけるべきコストである製造品質の費用すら見えてこない。

そして営業利益が下げ止まりするということは、
その会社の事業価値を向上するための人件費や販売促進費を含む一般管理費も限界にきていることを、
経営者がまず一番に理解することが大切である。

このようにあらゆる費用が限界ラインに達している状況で働き方改革をするとなれば、
やはり至難の業ということがわかりえるだろう。

これは、各々の住宅会社における事業価値を生み出す本質が整理されておらず、
なんとなく変えている仕様や工法などの表面的で手段的な違いを差別化と勘違いしてしまい、
本来やるべき、他者が追随出来ない本質の強みを尖らせた差別化となっていないことが
原因と言えるのではないだろうか?

このような事業環境で確実に改革して行く手順とは、
まずその企業の最重要のミッションをシンプルにすることにある。
そのためにはSWOT分析などを一度しっかり行い、
自社は販売活動が得意なのか?また設計提案が得意なのか?
また工事管理を段取り良く行うことが得意なのか?など、
どれかひとつの強みに集約し、自社の事業価値を尖らせていくことが最重要である。

例をあげると、工事管理能力は他社に負けないくらい自信があるのなら、
敢えて元請事業にこだわらず、他社に追随されないくらいの施工管理能力をもった専門企業に進化させれば、
恐らく市場から引っ張り凧になるであろう。
また営業販売が得意で誰にも負けないという自負があれば、完全な販売専門企業に進化させ、
販売が苦手な企業の代役を努めていくことは 大きな可能性を秘めているのかもしれない。

改めてビルダーの働き方改革のポイントを考えてみると、
シンプルな目的の明確化と事業特化を兼ね合わせて進めていくことがポイントであり、
意識改革や風土改革まで影響する可能性も高い。
さらに尖った企業ほど、社員やパートナーの離脱を防ぎ、
やりがいある仕事場の環境づくりを目指すというこれからの時代に大切な形成思考だと感じている。

『目的と手段の逆転思考が、建築現場の価値を生み出す』

2018年新春号のAcro Fieldsで、現在、住宅業界の様々な分野でご活躍されている方々を交え、
住宅業界の現状や抱える課題を出し合いながら、今後の業界活性化に向けた建設的な議論をした。
オフレコな話題に踏み込む場面もあったが、設計・性能・施工・営業・業務管理のどの分野においても、
ノウハウや取り組み方のようなプロセスや戦術論が目立ち、「何のために?」と言う目的を
明確に意識・理解できていないという原理原則的な経営課題を抱える建築会社が多いことが浮き彫りになった。

本当に地震に耐えきれる十分な地盤や基礎、
そして構造にする為にはどうしたら良いのだろうか?

快適に過ごす為の断熱性能や気密性能、さらに主要構造に腐朽菌を繁殖させず、
永く傷まない為の防水や通気、換気をどう考えていけば良いのか?
またこれらを実現させる為に、11棟の安定した工事管理や品質管理を、
どのように体系づけていけば良いのだろうか?
まさしく、これらは住宅を製造していく上で非常に大切なことであり、当たり前の目的でもある。

このような当たり前の目的をしっかりプロットせず、
なぜか色々なツールに手を出して各々の課題を埋めようとする傾向が高い。
これではいわば目的を手段で埋め合わすことになり、
気がつけば、会社に沢山のワンストップサービスメニューがあふれ、
手段のオンパレードになってしまっている。
結果、ツールという手段を使いこなすことが目的となってしまい、
本来の目的を達成する為の手段にはなっていないのである。

我々は製造会社における品質管理を体系的に社内に根付かすサービスを独自で展開しているが、
顧客に提案させて頂く際、往々にして品質管理にかかるコストを原価ではなく経費と考えてしまう企業が多い。
さらに現場におけるチェック環境ですら、役所の検査、瑕疵保険検査や性能評価の適合検査などに置き換えて、
第三者検査だから安心で、しかも合理的という勘違いまで引き起こしている。

確か、昨年の日経ホームビルダーに第三者検査の導入率アンケートの結果が掲載されていたのだが、
40%前後という異常な導入率の結果を目にした時、非常に驚きを感じてしまった。
これは瑕疵保険検査などの検査行為が第三者による管理になるという認識で捉えており、
この産業が建築行為に対してどれだけ無知なのかを痛感した。

住宅業界の地域新聞を読むと、現状の急務な経営課題として、職人不足と高齢化、現場管理の向上、
受注の強化、粗利の低下の4つが必ず上がってくる。
本来、経営者は最も深く課題を理解しているはずなのだが、
現場というステージで課題がこれだけ山積みしていても、
何故か受注の強化を優先課題として取り組む経営者が多いのは、
どの時代でも変わらない業界体質なのだろうか。

現場というステージで課題解決を行う目的は、建物を製造するという価値しか生み出せない現場から、
施主様や購入者が共感しファンとなって新しい顧客へ伝えてくれる現場にすることであり、
そこに別の価値が生まれる。
価値ある建築現場にはきっと素晴らしい職人や現場技能者が集まり、更なる価値向上に寄与してくれる。
そんな現場にすることが本質的な現場の課題解決の目的である。
現場主義というテーマをしっかりと掲げ実践してくれる企業が、これから先どれほどあるのだろうか。
微かな期待を胸に秘め、これからも価値ある現場管理体制づくりを発信していきたい。

『業界経営者は、今一度、経営の原理原則に気付き、経営哲学を高めて欲しい』

今、世間には様々な情報や成功事例が氾濫している。

例えば、建設現場や会社内のコミュニケーションが不足すれば、
それを表面上でも補うツールや仕組みを求め、 クレームが増えれば対応できる保証スキームを求め、
職人が不足すれば、仕事と職人をマッチングさせるツールを求める。
さらに、これらのニーズに対応した仕組みやツールが色々と登場する。
これはベンチャー発想というより、今の時代を象徴する問題対処型情報競争合戦であり、
芯の無さを感じる毎日である。

我々NEXT STAGEは、住宅品質向上というテーマで唯一無二の事業を行っているが、
これは現場施工管理に対して、建築会社が経営課題として抱える改善ニーズが根深く存在するからである。
これはマーケティングの中での需要と供給のバランスで成り立っており、
一見、問題対処型情報競争合戦に見えるかもしれないが、
決して企業の盲点で利を得ている訳ではない。

その時代での旬の課題解決と目新しい戦略を模索するために、どの建築会社もあらゆる手段や、
様々なサービスや商品に手を出してしまいがちであるが、
建築会社として永く存続し地域貢献し続ける為には、
やはり基本として1つ1つの物件がしっかり製造できる仕組みを社内に作り上げ、
回し続けることを最優先の命題と考えるべきであろう。
時代が変わろうと、建築会社の事業目的は普遍的であることを忘れてはいけない。

健全に製造できる社内体制を確立し適正な利益が確保できることが事業の価値そのものである。
言わば営業利益を最大化することこそがその会社の事業価値に繋がるのである。
決して売上ではなく、利益を最大化させることにある。
利益を最大化する手段としては次の3つしかない。

①売上を上げること
②粗利率を上げること
③費用を減らすこと

この原理原則を考えると、今後の資材高騰と人件費高騰をしっかり見据えて、
経営判断をしていかねばならない時期に来たのではないだろうか。
資材や人件費の高騰は工事原価が膨らむことであり、 ②の粗利率の低下が加速するということである。
すると一般的には①の売上を伸ばす戦略に注力しがちであるが、
これは会社のキャッシュフローという観点では、ひと昔前のバブル経営モデルであり
自転車操業化してしまう危険性を潜めている。
つまり③の費用に関する戦略をしっかり持つことが、 これからの安定経営の鍵になると言える。

建築会社を経営する上で人件費は費用の多くを占める。 実は労働分配率が高い会社ほど、
人の価値【役割】を明確にしないと経営課題は解決しない。 つまり組織が活性化しても、
コアの課題に人を分配しないと、 根本的で永続的な事業価値の向上にはなり得ないのである。
しかし現実は結局人材を営業に回し、顧客インプットの最大化に配置するという安易な経営に走ってしまう。

営業活動における最大化は、集客の仕組みを如何に作るか、
そして自社のサービスにどれだけ本質的価値を付加して市場に提供するかである。
建築会社の本業である製造については、その製造工程でロスの少ない生産管理スキームを構築することと、
精度の高い品質管理スキームを構築することであり、 社内でこれらの仕組み化が出来るかどうかが、
建築会社が競い合うこれからの本当のステージであると言えよう。

いずれにしても建築業界では、売上アップという上っ面だけの事業拡大で
長い歴史を歩んだ会社はほとんど無い。
それぞれの建築会社が、何を目的に事業を営んでいるのか?
また、それを達成するためには、どんな手段を選択し、
どのようにリソースを配分するかの軸を固め、
未来をプロットした本質的で強い経営を推進して頂きたいといつも願っている。

パートナー先の選択や取引先の選別も重要となる。
多くの商材を扱う事業パートナーはやはり力も分散し、キラーコンテンツが存在しない場合も多い。
その会社本来の事業軸があれば、取り巻く環境も類を呼ぶが、
手段に明け暮れる会社では常に入れ替えざるを得ない仲間しか集まらない。
経営者には、自らの経営フィロソフィーを高めていただきたいと願う。
 

『組織力の強い会社は、対処と改善の大きな差を理解している』

施工管理という仕事は建築会社として非常に大切な仕事であり、
まさに事業目的達成の根幹と言っても良いでしょう。
家を製造するというその施工管理の大前提を、
ものづくりにおける「プロセス管理」ではなく
「プロジェクト管理」だという認識をしっかりと持って頂きたいということが
今月のコラムでお伝えしたいメッセージです。

プロセス管理では、作業を仕訳けたり集約化したりする、
作業マネジメント思考に走りがちです。
前回のコラムにも掲載いたしましたが、作業マネジメント思考では
「効率化」という手段が目的化してしまい
「手段先行型の経営」に走ってしまうことになります。
この傾向は若い経営者に多く見受けられるのですが、その「手段」である仕事を、
例え積み重ねて行ったとしても、会社のリソースとしては充分に蓄積されず、
将来的な人材育成の財産としては見込めないでしょう。

このような思考で経営してしまうと、現場管理に携わるスタッフが現場に行くという
作業(行為)が目的となって、現場に行く本来の「目的」が
いつまでもたっても生まれてきません。

結果、施工管理の内容となる工程管理、資材の受発注管理、安全管理、
品質管理なども同じように作業としての認識から脱却できなくなるのです。
これこそまさに、費やした時間に見合った経験や学びがスキルとして身につかず、
素通りしてしまう訳です。

そこでまず、作業の効率化をマネジメントするという発想を優先するのではなく、
目的に対して時間と作業を割り当てて行く思考を基本にすべきなのです。
そこから効率的に行う為の工夫や知恵を入れ込んでいき、さらには属人的管理から、
組織的管理へとステップアップさせて行かなくてはなりません。

日本の住宅建築の文化そのものが、棟梁制という属人的管理体系の歴史が長く、
その場に携わる職人や管理者の人的スキルに依存せざるを得ないのだとしたら、
どれだけマニュアルや基準を事前に決めたとしても、
不具合をやり直すという「対処」という行為しか生まれません。

対処ではなく「改善」にする為には、組織的管理をしっかり体系化することが大前提にあって、
ある現場、ある工程タイミング、ある事象、あるミスと言った、
点の現実をどれだけ全社で共有でき、どれだけチームで
課題解決に継続して時間を使うかが大切なのです。

皆様の会社の社員達は、仕事とは何をすることだと認識しているのでしょうか?

受注取り、プランづくり、現場管理、コーディネートなどは、
あくまでも担当各々の役割であり作業であって仕事では有りません。

仕事とは、担当した役割を日々「改善」することなのです。

改善し続けることが仕事であり、出来ないことを出来るようにしたり、
出来たことをもっと良く出来るようにしたりすることなのです。

つまり『改善=成長』という訳です。

施工品質の良し悪しは会社で取り組む「改善力の証」であることから、
まさしくその会社の組織力は建築現場環境とイコールと言っても過言ではないでしょう。

最後に、組織的管理をして行く上での注意点として、
役割と責任と権限が明確になっていることが重要だとお考えいただきたい。

施工上の問題や不具合がいつまでたっても減少しない理由は、
職人各々に明確な仕事の範囲や期間、基準、
そして単価が決まっていないことが原因である場合がほとんどです。
これらのことが決まっていないのに、明確な責任や権限を委譲出来ません。

プロジェクトマネージメントの基本は、
現場に携わる全ての利害関係者の達成と成功にあります。
その為には、関係者各々の役割と責任と権限を明確にするとともに、
属人的な現場環境を脱却し、組織的管理への体系化を目指していきましょう。

『我々が考える建物価値向上へのプロセスとは』

35年という長い住宅ローンに対して、
住宅における建物の資産価値が非常に短く釣り合わないことが、
住宅産業界の課題でもあります。
更にすまい手の建物に対する価値観も日本独特であり、海外の意識と比べ、
まだまだスクラップ&ビルドの慣習が根付いている国だと言えるでしょう。
国政や行政が建物価値向上を図る政策として、
長期優良住宅認定やインスペクションといった
取り組みはあるのですが、体系的な政策として業界へ浸透できておらず、
部分的で手前味噌的な捉え方になりつつあることが、
本質に踏み込むにはほど遠い状況にしているのではないでしょうか。

我々の考える建物価値向上へのプロセスとは、
3段階のPDCAを回さない限り建物価値には到達できません。
更にその手順を間違えると、部分的な単体の対処で終わってしまう恐れがあります。
例えば維持管理をケースにあげると、点検やメンテナンスいったものがそうです。

まず第1段階は、やはり新築時の施工品質管理の徹底です。
施工精度を測る指針さえ存在しない現状では、
製造するプロセスにおける主要ポイントでの評価が出来ません。
この主要ポイントでの評価を行わない限り、
現場で起きる不具合の要因分析も出来ず、
次の現場で改善すべき具体的な課題を抽出する機会さえ損失してしまいます。
まずは施工におけるPDCAサイクルが回せる環境を構築すべきで、
これをやらない限り、建物自体の施工精度を製造工程で確認出来ず、
建物価値のベースにもなりません。

次の第2段階は、住宅性能向上へのプロセスです。
自らが目標値として定めた住宅性能がしっかり発揮出来ているか否かを
チェック・計測することが重要です。
この段階では、施工品質の良さが大前提となり、
やっと設計や企画の品質に対する品質管理に踏み込めるのです。
ちなみに設計品質改善については設計仕様の評価・改善だけでなく、
契約から着工までの社内業務フローも含めて評価・改善して行かなくてはなりません。
設計品質改善の具体的な課題抽出も、施工品質改善プロセスと同じであり、
やはり現場で引き起こっている現象や事象を謙虚に見つめない限り進みません。
イメージとしては「住宅性能=施工品質+設計品質+製品品質」のような公式が
成り立つのではないでしょうか。

最後の第3段階は、完成後の維持管理品質となります。
ここでのポイントは、やみくもで無計画な点検とメンテナンスを実施しないということです。
まず、新築時の設計仕様に基づく点検内容の是非を精査し、部位毎にいつ・どのように点検し、
その点検結果をどのように蓄積し活用するのかという維持管理基準を策定し、
課題抽出や経過観察、または手直し検討といった対処を実施する必要があります。
更に、この見える化は当然のこと、引渡し後の経過によって引き起こる現象をしっかり検証し、
何故引き起こったのかという要因分析と改善策を、新築の設計仕様に反映させていくという、
大きなPDCAが必要になってくるのです。
これが企画品質向上に繋がる大切な製造会社(住宅会社)の仕事です。
いずれにせよ、現場での気づきや改善策が製造会社である住宅会社のビッグデータとなり、
貴重な資産となる訳ですから、長期的な取組としてイメージしない限り、
住宅の将来的な資産価値向上への可能性を失ってしまうのだと考えます。

以上、製造サイドとして努力していくべき建物価値向上のプロセスを述べましたが、
購買サイド(ユーザー側)が見る建物価値は非常にシンプルです。
例えば、中古物件を買うユーザーは、この中古物件の新築時の製造工程や
維持管理工程が記録として蓄積され、前オーナーがどんな住まい方でどんなタイミングで
どういったメンテナンスをしてきたかの公正なプロセスの履歴が見えさえすれば、
その住宅の建物価値を客観的に判断し、いくらぐらいかという値ごろ感さえ一致すれば購入に至るという、
シンプルでてリアルな取引が成立すると言えるのです。

行政による中古住宅の流通活性化に準じて事業を進めていくことも大切ですが、
民間企業らしい本質的な建物価値向上への努力が一番重要なのではないでしょうか?