今の環境だからこそ、正しい収益改善を試みる

今月のコラムは、効果的な『収益改善』を成し遂げる為にも、現在の皆様方の根深い生産性や品質の課題を共有し、本来これを改善、 …


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今月のコラムは、効果的な『収益改善』を成し遂げる為にも、現在の皆様方の根深い生産性や品質の課題を共有し、本来これを改善、回避するための考え方、さらにはどこにどれだけの適正なコストをかけるかということが皆様にとって一番収益性の高い状態であるのかと言った内容を含め、お話ししていきましょう。

今月もこのテーマは当社主催のセミナーでも取り上げる予定で、沢山の経営幹部の皆様にご参加お申し込みをいただいております。何故ならば、住宅事業の原価と言われる材工原価のうち、資材に関してこの数年での価格高騰が約120%の上昇となっている事から、事業者内負担での収益損失だけでなく、ユーザーへの費用転嫁による購買意欲の損失にまで広がっている事が挙げられるからです。

そんな市場環境である事から、自社の製造プロセスにおける『ムリ、ムダ、ムラの解消』という本質的な生産性の改善に目を向け、今は何とか事業採算性を確保しようというニーズが一気に高まってきたとも言えるでしょう。

では、『収益損失』という構造から皆様にお話ししていきます。

皆様が推進されている住宅事業の収益損失は、何によって、どんな収益が損なわれるのかという関連性を、まずは正しく認識することから始めます。

①まずは売上高です。これは『棟数×請負金額』で成り立ちます。いかに付加価値をつけてどう高く売るか。そしてどれだけの世帯に販売を広げられるかというマーケティングや営業戦略となります。これについては本日、あえて触れない事とします。

②次に粗利額(売上総利益)です。ここは売上から原価を引いたもので、設計図書精度の改善と、それに紐づく原価管理と受発注管理に影響するムダの改善が必要な部分といえます。

③次に費用(販管費等)です。ここは会社の資源と仕組みで大きく変わり、製造上では工程管理の適切な採算性や妥当性、また情報管理による統制精度のムリの改善が必要な部分となります。

④最後に営業利益です。ここは事業そのものの価値を示し、赤字では事業そのものに存在価値が無いという事です。製造上、これに直接的な影響を与えるのは、品質管理、安全管理、環境保全を中心とした3つの着工後管理となり、ムラの改善が必要な部分となります。

以上の関連性を理解した上で、住宅事業の収益改善のための管理強化すべきポイントが見えたのではないでしょうか。

それでは、皆様が住宅を製造するのに、一体どれくらいの金銭的損失をしているのかをイメージしていただきます。

一番シンプルにイメージして頂くには、1棟毎の実行予算(着工前の計画粗利)と完工粗利(竣工後の実質粗利)を出来るだけ正確に可視化することから始めます。もし、この数値が社内で明確に可視化されていないとすると、いわゆる『どんぶり勘定的経営』であり、そもそもどれくらい儲かっているのかさえ解らず、非常に危険な経営と言えます。つまり今後の収益改善という定量的な推進は既に閉ざされてしまっていますので、絶対に可視化させることからトライしてみてください。

例えば2000万の請負金額に対して実行予算が粗利30%で計画をしたとしましょう。

着工前計画では会社の粗利が600万を想定して工事を進めるという計画です。そして工事を進め、この物件が竣工し、残工事も処理して最終引き渡しをした時点で粗利が25%に落ちていたとすると、完工時の粗利は500万になったという事です。このような状況は皆様にとっても、そんなに珍しくないケースではないでしょうか。

この100万の粗利のギャップこそ、皆様が頭を悩ませている金銭的損失なのです。

そして、このような金銭的損失を製造上では、『内部不良コスト』もしくは『内部不適合(失敗)コスト』とも言い、製造プロセスにおける『ムリ、ムダ、ムラ』を指し、これを排除することが、生産性向上や品質向上となるのです。

ここで皆様に決して見誤って頂きたくないことは、様々なツールを取り入れて、生産性や品質を解決し向上することは、事実上、根本改善には直結しないという事です。あくまでも皆様がお使いのツールという大半は、情報管理の一環であり、コミュニティを含めた業務効率化の為のものである事の切り分けを正しく認識されておく事が大切です。

このように、住宅を製造する上で内部的に引き起こるロスやミスをお話ししましたが、金銭的損失はこれだけでは終わりません。いわゆる引き渡し後に引き起こる、クレームによる無料補修ややりかえ工事、また主要瑕疵による訴訟や裁判などの費用です。

さらに地域工務店様に多いケースですが、引き渡し後の無料点検やメンテナンス費用も、お客様サービスとして提供されていますが、これを含め『外部不良コスト』と呼びます。この外部不良コストは請負金額の約2%程度損失しており、先程の2000万の住宅であれば、約40万ほどの粗利が竣工後の未来に損失する計算になります。

これまで2000万の住宅事例を交えてお話ししてきましたが、内部不良コストの100万と、外部不良コストの40万の合計140万が、製造上では『不適合コスト』と総称され、この金銭的損失をいかに未然防止させるかという『予防コスト』と、いかにしっかりチェックし品質を保って引き渡すかという『評価コスト』の2つ(適合コスト)を投資して、先程の140万という不適合コストを減らし、適合コストと不適合コストのトータルコストが一番最小値にすることが、生産性、採算性の一番良い状態であり、更に品質が一番適切な状態である事を是非KPIにして頂きたいのです。

住宅事業でいう予防コストとは、施工をバラつかせないための品質基準の作成や施工要領書の作成コスト、また現場監督の管理ムラを軽減するための管理タスクや管理要領書の作成、そして人材育成費用などもこの予防コストとなります。

評価コストとは、製造プロセスにおける主要なマイルストーンにおいて、第三者による品質チェック評価や、自社で行う外部防水工程の散水試験の実施などにかかる費用を評価コストと呼びます。

この2つのコストを業界のほとんどの経営者が製造原価単体でしか理解されない事が実態であり、専門部署の工務部長クラスでも、あまり理解がされていないのが現状です。

これからの収益改善は、この予防コストと評価コストをいかに適切に配分するかが、今求められている住宅事業改善のコアといっても過言ではないでしょう。そのためには今の実態を正しく把握し、以下の手順で課題を潰していかなくてはなりません。

基本手順は、『組織体制→業務フロー改善→承認タスク→各フローの仕組みづくり→タスク設定→ツール媒体の検討→実施要領』となります。

これを見てわかることは、必ず改善手順は上流から下流に改善していく事がポイントだということです。しかしながら、皆様方が着手する一般的な手順は、なんとなくツールの検討と実施要領から入られている会社が多いのではないでしょうか。上手く推進されない根本原因は、上流の体制や仕組みがない事、つまり目的と手段が逆転した中で進んでしまい社員が目的を理解できないまま作業化してしまい、推進が破綻してしまう訳なのです。

我々ネクストステージが、データ&アナリティクス事業、そして人材育成事業に今、大きく事業転換したのは、住宅業界の安定した収益構造体質に変革するために、製造プロセスを可視化させ、公正に収集したファクトデータを基に『ヒト、モノ』に対して定量的に分析を行いながら、皆様方の具体的な建物への課題解決と、スタッフの技能度にフィットした人材育成や人事評価に繋げていく為のご支援を強化しておりますので、是非ともお気軽にご相談頂けたらと思います。

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