住宅製造においての遠隔管理の考え方

最近、施工現場における遠隔管理への取り組みが盛んになってきました。私自身、これからの製造プロセスには欠かせない手段だと思 …


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最近、施工現場における遠隔管理への取り組みが盛んになってきました。私自身、これからの製造プロセスには欠かせない手段だと思っております。

そこで今回は、今後の遠隔管理採用において、より効果的に取り組みたいと考えておられるビルダー様や、現在取り組んでいるがイマイチ上手く回っていないと感じておられるビルダー様に、コラムにて整理していきながら是非参考にして頂きたいと思っています。

まず遠隔管理のそもそもの動機は、戸建住宅の製造プロセスそのものが、野丁場工事のように常駐管理でない点から波及している点にあると言う事です。ゼネコンのような大規模な現場ではなく小規模な戸建住宅である事から、『適時管理』という曖昧な体系だけが先行し、結果的には個人的な管理思考で各々が訪問しながら進めなければならない現状だからです。

つまり、このような個人商店化した管理体系が蔓延してしまう事で、どうしても製造プロセスに対する生産性や品質確保、また無駄な付帯業務という点にどうしても課題が山積してしまいがちなのです。

このような基盤的課題を認識しない中で、単純にリモートツールを導入する事で根本解決ができるイメージが湧きますでしょうか?おそらく既に導入されていて上手く回らないビルダー様は、この基盤課題の認識をせずに、何かツールの即効性を期待して導入された会社が多いように感じます。

ここで大切な事は、『適時管理』というフレームワークをまず明確にする事なのです。一度、着工前準備から竣工までの自社の施工管理体系を、まずは社内で整理してみましょう。もし整理できなければ、是非当社にご相談頂ければ、正しい管理体系をアドバイスさせて頂きます。

施工管理全体のフレームワークは、着工前管理カテゴリとして、原価管理、受発注管理、納材管理、工程管理、情報管理の5つと、着工後管理カテゴリとして、品質管理、安全管理、環境保全の3つとなり、全体で8つとなります。これを『施工管理』と呼び、自社で具体的に整理しなければならないという事になります。

今回は、現場での遠隔管理について整理いたしますので、一旦今回は着工前管理については詳しく触れませんが、ここで絶対に押さえておいて頂きたい事は、着工後の現場管理の成功の鍵となるのが、5つの着工前管理精度によって決まると言っても過言ではないということです。簡単に表現すると、いかに完全着工させるか否かで決まってしまう現実があると言う訳です。

このように着工前管理がしっかり準備できている過程で、着工後管理をどのように適時管理しながら訪問計画を立て、遠隔管理手法が通用するのかが、今回のテーマとなります。

まず着工後管理のポイントは、工程表管理ではなくマイルストーン管理で行うことが大切です。この辺りは、ベテラン監督でも案外知らない部分だと感じています。

工程表での管理はどちらかというと、施工面での出来型と金銭面での出来高の互換性をしっかり確認し、作業進捗を中心に受発注管理と併せて行うことに活かします。そして製造プロセス面での管理はマイルストーンでの管理をし、マイルストーンは必ず品質管理タイミングで設定するということです。なぜならば、品質管理ポイントを後戻りできないタイミングに設定しないと意味がなく、二度と施工不備を是正する事ができなくなるからです。ここが現場監督の現場訪問計画の必須ポイントとなるでしょう。

次に、品質管理マイルストーンの設定です。後戻りできないタイミングは10つあります。基礎底盤、基礎立上がり、土台据付、上棟後屋根ルーフィング、構造、外部防水、断熱、プラスターボード(木完)、外部完了(足場撤去前)、内部完了の10つのマイルストーンです。このマイルストーンで品質確保に注力しておけば、少なくとも設計段階で想定していたある一定の性能や品質を計画通りに近づけられるという訳です。これがプロセスの再現性です。

ここで皆さんに考えて頂きたい重要な事があります。

この10つの製造プロセスの品質確保を遠隔手法でどこまでできるか?という問題と、仮にクラウドを通じて映し出された現場映像を誰がどんな基準で判断するのかという2つの課題です。

様々な遠隔管理ツール会社のテーマに、『遠隔での品質管理』という訴求をされますが、本質的に通用するのか否かは、ビルダー様の管理粒度やレベルで左右すると考えます。我々のような品質評価の会社では、何度もトライいたしましたが、正直難しいと感じました。私自身の結論は、このマイルストーンだけは適時管理の中で必ず現場監督自らが訪問する最小公倍数だと考えております。つまりプロとしての現場監督の主体義務だからです。

もう一点の課題は、判断基準です。

法令で決まっている範囲が2割もない木造建築の製造プロセスに、法令以外のグレーゾーンに自社が目指すべき明確な基準値を作成しておく事です。決まっていなければ、仮に遠隔操作で映し出そうが、現場訪問しようが判断できず、全く品質管理が機能しない事になりますので、この辺りの対応は是非、我々ネクストステージにご相談頂きたい内容です。

次に安全管理や環境保全ですが、これはマイルストーン間隔に管理目的や管理基準を設定し、タスク化する事です。そうすると、品質管理タイミングついでに併せてチェックできるので、工数的にはあまり負担は掛からないはずです。ただ現場環境的な事象はリアルタイムな部分もある事から、場合によっては現場の全景や特定箇所において、定点カメラや監視装置のようなものは非常に有効だと考えます。

以上のように、着工後管理を具体的に紐解いてきましたが、遠隔管理というテーマから有効性の本質を考えると、3つのポイントが挙げられます。

1つ目のポイントは、品質管理についてです。正直、鉄筋のかぶり厚さや柱頭の金物のビス、また耐力壁のビスのめり込みなど、あらゆる箇所での品質評価には少し粒度的に苦しい部分があったり、また屋根ルーフィング等、高所での作業にカメラ持参となると非常に安全面に疑問視が残ります。ここについての遠隔管理は、むしろ品質管理ではなく出来型管理に割り切って運用する事が大切かもしれません。適時管理だけに毎日現場に行く訳ではないので、訪問間隔でのある一定的な出来型映像を取得し、受発注管理と紐づけて出来高管理の効率化に寄与するのではないでしょうか。

2つ目のポイントは、現場環境管理についてです。安全面、環境面においては日頃、5S等を含めて清掃状況など熱心な取り組みをされているビルダー様は非常に多くなってきました。そんな環境下、むしろ現場チェックでの訪問工数削減を視野に入れた遠隔管理計画というものは、かなり有効な手段であると言えるでしょう。

3つ目のポイントは、実は管理視点ではなく人材育成視点です。遠隔管理という切り口ではなく、遠隔支援という見方です。管理手法や作業手順に渡って非常に人的裁量に依存してしまっている環境下、プロセスをいかに再現化させるかが重要です。現場での管理プロセス実践を遠隔で支援し、またそれをクラウドに動画として保存しておく事で、他のスタッフやあらゆる職人にプロセス共有を図ることで、理解の統一化や浸透がより明確に伝わるのではないでしょうか。

このように現在の人材環境やスキル環境を考えると、今後間違いなくリモート環境での支援は加速していくでしょう。だからこそ、適時管理の大前提にまずは明確な管理体系を整理し、管理目的単位で運用方法を見出していく事がこれからは大切だと思います。

我々ネクストステージでは、3つ目の人材育成視点に着目し、現場で最重要な品質管理の遠隔実践講座を企画しております。生きたプロ指導を皆様方にリアルにお届けするサービスに乞うご期待!