注文住宅受注減が露呈してきた地域工務店事業の根本的要因はどこに?

地域の注文住宅を手掛けている工務店にとっては、昨年後半から受注に対して段々と厳しさを感じてきた会社も多いのではないでしょ …


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地域の注文住宅を手掛けている工務店にとっては、昨年後半から受注に対して段々と厳しさを感じてきた会社も多いのではないでしょうか?

特に今年の春頃からは商談機会数から見ても、如実に実感されるレベルにまで影響してきたと思います。持家の月次着工数を統計から見ても明らかであり、ここ最近でも異常な数値で推移していることから当然危機感をもたれている方も多いと思います。

一方、ハウスメーカーや分譲系ビルダーの大手ゾーンは軒並み3月決算で過去最高収益をあげており、コロナ禍での資材高騰という環境とはいえ、現実に素晴らしい実績を打ち出していることも事実ですし、材料供給でもかなり苦労していた建築資材商社なども、値上げの流れと限られた納材量を受けて、これまで以上の収益を上げていることも見逃してはなりません。

このような実態を真っ向から受け止めるとすると、第一に『売上と利益』に対する工務店事業としての正しい経営を改めて理解し直すことと、第二に『売り方』にそもそも自身の価値を紐付け、過去を引きずらない価格とサービスを刷新することにあると考えます。

ではまず『売上と利益』に対しての正しい認識の形成からです。

住宅業界の経営思考の特徴は、やはり売上主導である傾向は否めません。売上は『単価×数量』でしかなく、この方程式を主導に考えると、いかに高く売るための価値といかに顧客を取るかの2択の戦略しかありません。

更にいうなれば、どうやって高く売るかの自社の価値を磨くことよりも、数をどうやって売るかの戦略にどうも安易に流れてしまう傾向も業界の特徴のように伺えます。

この傾向は、工務店ビジネスモデルの変容の鈍化と総合請負業としての事業コアの分散が要因であると考えます。現在のような冷え込む市場に立たされた時にこそ、本質な要因というものが露呈されていくのが世の常なのです。

ビジネスモデルの変容は他業種をみても凄まじい勢いで進化しています。またその事業コアはアンバンドル化の最たるもので、事業をシンプル化していかに特化していくかという傾向にあるのに対し、工務店ビジネスは、営業、設計、製造、アフターという4つの事業を総合請負として保有し、更に市場ターゲットを民間や公共、そしてカテゴリーを新築、既築というマーケットに広げ、4×2×2=16という広範囲に渡る経営戦略を確保しなければならない環境を作り上げています。

そのうえ新築市場に対して、注文、規格、分譲などに及ぶ様々なサービス構成となると、どうしても事業コアがさらにブレてしまい、深い経営指揮が取りづらくなるという負の経営構造になってしまいます。またそれを長年脱却できない慣習と化してしまっていることが、厳しい市況に一極集中できない根本的要因にあると考えています。

このような経営背景から、第二の『売り方』に対する探求も弱くなり、必然的に注文住宅の売上拡大に集中できる資源やノウハウも薄くなってしまう傾向にあります。

第二の『売り方』については、こういうことです。
シンプルに『自社のサービスや商品が、もし1つしかない』という、むしろシンプルな環境に追いやられたとしたら、皆さんはどのような創意工夫が芽生えるでしょうか?

おそらく、たった1つしかないサービスや商品であれば、まず人が向かう所はそのサービスや商品を自分達で他社と比較して圧倒的なほどに誇れる素晴らしいものをきっと磨いていくに違いありません。何より外部のマネやつまみ食いする前に、自分達は何がしたいのか!また何を供給して、どんなベネフィットを提供したいのか!ということをきっとド真剣に考えるでしょう。

次に自分達の最強の強みとしてどこにも負けず譲らないものは、売ることなのか。設計することなのか。施工することなのか。維持管理することなのか。それをきっと見極めるでしょう。

もしその強みが施工することであれば、全国の工務店には絶対に真似ができないくらいの高いレベルの施工管理を徹底的に仕組み化すれば良い訳で、逆に営業は苦手であることをしっかりアピールし、プロのマーケティング会社に力を借り、また設計や維持管理はその領域の専門会社と尊重できる企業アライアンスを組めば良い訳です。いわば一極集中するために勝負する圧倒的な武器や実力が中途半端に無いことこそが、地域工務店が一番強く在りたい注文住宅分野を、逆に最大の弱みにしてしまっているのです。

そして価格は自社の誇りや強みを転嫁させる大切なものです。それを軽視し、安易に受注環境に併せて判断することは自社の価値を自ら下げることにも繋がります。そして利益という一番大切なことをしっかり意識し、従来の一桁前半の営業利益率を標準化したビジネスモデルの壁に対する固定概念をひとまず撤廃し、売上や原価のための販管費のコントロールを粗末にしない取り組みに知恵を衆知させることが大切です。

なお、知恵や汗の結集には絶対安売りしないこと。なぜならばそれが自社の最大の付加価値だからです。一部アウトソースしたり、ブローカー的業務には仮に手数料程度であっても、自社の生み出す価値にはしっかりとした利益を取るというプライドも必要となります。

そのためには販売会議をし、議論するのではなく、自社が提供するサービスや商品に自信がなかったり、イマイチだと社内が万一感じているのであれば、まずそこから潰していくべきなのです。

必ずそれは周りに映し出されます。ついつい顧客へのサービスだと手前勝手の判断で安易な値引きや安売りは、顧客の生涯化ビジネスとは正反対の存在価値に動き、事業存続とは真逆のエネルギーを生み出しているに違いありません。

衣食住という基本産業を冷静に眺めてみても、地域の中小零細企業が数珠を成す会社も多いですし、常に大手ファミレスが行列を成している訳でもありません。

そうシンプルに考えてみれば戦術は至ってシンプルであり、圧倒的な自社の強みが有りさえすれば、それをわかりやすく、そして購買意欲を掻き立て、お客様が反応できたり選択できる仕掛けさえ用意すれば、人はそこに群がるという習性を仕組み化することで、安定受注が形成できるものなのです。