現場管理でロスとされる移動時間削減の考え方

現場管理をする上で、特に現場から現場、また事務所から現場といった移動にかかる時間ロスをいかに削減するか?というテーマで様 …


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現場管理をする上で、特に現場から現場、また事務所から現場といった移動にかかる時間ロスをいかに削減するか?というテーマで様々に対策を取られているビルダー様もかなり多いのではないでしょうか?
今月は、このような課題ニーズの高い『移動工数削減』をテーマに、正しい解決に導くための考え方についてお伝えしていきます。

まず大前提として、戸建住宅における施工管理環境が野丁場工事のような常駐管理でないそもそもの管理環境であることが、この課題を引き起こす大前提となります。つまり工事分類としては小規模工事である事から、短い数ヶ月という工期で品質を落とさない一番効率的で利益の出る工程管理(採算工程)で挑むために管理する事を目指すことが重要となるのです。

さて、戸建住宅の施工管理における移動工数というものの時間配分を現状から見てみましょう。

1日8時間労働を基本に月の実働日数を21日とした場合、月の実働時間は168時間となり、そして年間12ヶ月で換算すると、年の実働時間は2016時間(約2000時間)となります。この限られた実働時間を製造プロセスに効率よく効果的に当て込んでいけるかが施工管理となります。

エリア事情や建築事業の展開の仕方にもビルダー毎の格差はありますが、おおよその移動工数は実働2000時間のうちの3割強が移動工数に当たると言われています。つまり移動時間を省くと、実際には年間1300時間程度で実務にあたらなくてはならないという事なのです。このような数値的な視点から見ても、700時間の時間ロスをいかに削減し、本来の主体業務に少しでも時間を振り替えて行きたいという理屈は、当然の事だと言えるでしょう。

ここで皆さまに考えてほしいことは、この移動工数を仮に削減したとして、何の仕事に時間を振り替えたいのか?というタスクや目的がそもそも決まっていない実態を私は常に危惧しています。例えば動画などの映像技術を使って施工管理そのものを遠隔管理させるという発想なども最近のトレンドでしょう。

では、施工管理を遠隔管理下に置いた場合、何を目的に、いつ、どんな状況を、どんな基準で、何をどのように判断するのか?を説明できる方はいらっしゃいますでしょうか?
恐らく説明できる人はいないでしょうし、仮にできたとしたら遠隔管理は既に実現できているはずなのですが、誰も説明できない状況で、既に導入をされていらっしゃるビルダー様もおられる事に驚きを感じているのです。

実際、どのように運用されているのかをインタビューしても、現場の動きをなんとなく俯瞰的に監視したり、職人がサボらない抑止効果を狙ったり、またユーザートラブルがあった場合に見返すためのレコーダー的要素であったり、上長が撮られた動画をなんとなく個人的スキルでチェックしたりなど、体系だった仕組みとして運用されている会社は見たことがありません。
さらに移動工数削減で遠隔技術を導入する一方、施工管理アプリなどの自社チェック機能を使って写真撮影に裏側で現場訪問しているという、全く理解できないルールで管理をさせている企業もあります。

前段にお伝えした、移動工数という付加価値の出ない附帯作業時間を削減するテーマまでは皆さんは決して間違っていないのですが、削減した時間をどんな主体業務に活かすのかが、会社として見えていない、もしくは理解していない事に希少な現場技術者が振り回されている事に問題がある事をここでしっかり認識しておきましょう。

それではここからは正しい答えを整理していきます。

まず遠隔管理という発想は私自身も必ずや必要な取り組みだと認識しています。
ただ遠隔管理ができる現場での仕事は3つしかなく、安全管理と環境保全と工程管理の一部だけに効果的なのです。

例えば定点カメラを設置し、夜間に危険エリアの侵入がないか?また足場の全体の安全状況や清掃状況などを映像で監視したり、出来高と出来型をチェックするための工事完了状況をチェックしたりする事には、当然効果的であると言えます。

しかしながら、施工管理という役割が上記の一部で完了できるのならば良いのですが、管理深度としては全く話にならないくらい浅すぎる状況で、この程度の管理深度であれば、既に管理技術者ではなくUber的発想で近所のパートタイマーに映像作業を代行してできる程度の作業でしかなく、これこそ現場監督という存在価値すら否定されてしまう悲しい現実となってしまいます。

つまり現場に行って価値を出す行為とは、言い換えれば現場でしかできない仕事を、このタイミングでしか対応できない瞬間に正しく指揮判断や是正を促し、いかにバラツキを無くすかの役割にあります。これが現場ですべき施工管理です。この基本となる現場訪問目的には、品質管理を中心としたマイルストーンでしかなく、工程管理での受発注管理(金銭的出来形)とは別にマイルストーンで管理しなければ、全く意味がないという事なのです。

この基本的な管理思考から導くと、品質管理は遠隔管理では成し得ない事から、本質的な移動工数削減には繋がらないことが明確に理解してもらえるはずです。
むしろ、着工前管理である原価管理や受発注管理、また納材管理を工程計画に基づいて、出来形と出来高が計画的に一致しているのか?また、それに沿って請求管理をいかに効率的に結んでいけるか?といった、着工前管理の答え合わせ的な相対管理に使う方が効果的だと私は考えます。そう考える事で、現場監督の施工管理業務の一部を緩和する事もでき、本来の品質管理を中心とした現場訪問に質の高い時間を振り替える事ができるという訳です。

現場への移動工数削減は、現場ですべき役割(主体業務)に質の高い時間をかける事を振り替える目的としてください。つまり訪問目的は品質管理タイミングのマイルストーンにできるだけの管理作業タスクを集約させて、計画的な管理体系を策定する事が大切です。そして、映像技術や施工管理アプリなどは、着工後管理の現場訪問コストを削減するために使うのではなく、着工前管理の相対管理に役立てることにポイントをシフトすれば、非常に有意義な導入メリットの発見に繋がるのではないでしょうか。

現場訪問回数の削減は、闇雲な削減ではなく訪問目的に適切な計画を設定し、適正なタスクと回数に振り分けることが重要になります。その結果、現在の訪問回数も削減でき、移動してでも価値を出せる仕事に転換していくことができるはずですので、このような自社における適正値をKPIとして設定し、管理計画の質にこだわる工務推進に全力投球して頂きたいと思います。