当たり前に運用している自社の標準工程表を今こそ見直す時

住宅を製造するというプロジェクトマネジメントには基本的な知識体系があり、我々の現場監督実践講座でもこの基本思考を常にお伝 …


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住宅を製造するというプロジェクトマネジメントには基本的な知識体系があり、我々の現場監督実践講座でもこの基本思考を常にお伝えしてきています。

プロジェクトマネジメントの知識体系(PMBOK: Project Management Body of Knowledge) は、プロジェクト管理のベストプラクティス(最善方法)として受け入れられているプロセスや知識分野を含む国際的に認められたコレクションであり、ここで重要な事は、クリティカルパス(重大な経絡)を「プロジェクトの期間を決定する一連のスケジュールされたアクティビティ (活動)」と定義していることです。

クリティカルパスを住宅製造という一連のプロジェクト計画に例えると、最長の一連タスクであり、プロジェクトの期限を守るためにはこれらのタスクをスケジュール通りに完了しなければなりません。

クリティカルパス上にあるタスク (クリティカルパスタスク) に遅れが生じた場合、プロジェクト全体に遅れが生じることを回避する為のムリとその負担から、品質の崩壊が始まるきっかけとなっています。

このクリティカルパス法のメリットには、
①最も重要なタスクを把握する事ができる。
②タイムライン及びスケジュールの短縮に生かす事ができる。
③計画と実績を比較する事ができる。

という3つのメリットが存在している事から、クリティカルパスメソッドに沿った適切な標準工程計画の見直しが不可欠なのです。

今やコロナの影響から資材の値上がりによる原価高騰下で、今では住宅製造に対する粗利の確保は至難の業です。だからこそ、販管費を含めた費用面にメスを入れ、特に製造マネジメントにおける工程計画を改善させるためにも、品質を落とさないレベルで一番コストの掛からない採算工程を導く事が今こそ大切な時なのです。

採算工程表に導くステップは以下の手順です。

まず第一ステップは、ワークブレークダウンストラクチャ (WBS: Work Breackdown Structure) を作成して、プロジェクトに関連する各アクティビティ/タスクを識別する必要があります。 この際、大まかなアクティビティのみをリストアップするようにしてください。

工程タイミングでいうと、後戻り出来ないタイミング。つまり品質管理のタイミングを設定すると良いでしょう。我々ネクストステージでは、後戻りできない10のタイミングを提唱しています。

ここであまりに詳細なアクティビティを指定してしまうと、クリティカルパス分析が複雑になり、管理と維持が大変になるので出来るだけ避けましょう。

そして、ワークブレークダウンストラクチャを作成すると、プロジェクトを管理可能なセクションに分割できます。

最初にプロジェクトの主要成果物を識別したら、 大まかなアクティビティを詳細な作業に分割することが可能になります。 この辺りは住宅会社の設計スペックに応じた内容に分割する事が大切です。

第2ステップでは、互いの依存関係を確立します。

特定のアクティビティが、他の指定のアクティビティの完了に依存している場合があります。 各アクティビティの先行アクティビティ (特定のアクティビティよりも先または同時に開始あるいは終了するアクティビティ) をリストアップすると、正しい順序の識別に役立ちます。

例えば基礎底盤コンクリート打設前工程では、コンクリート打設までには透湿フィルムの施工からスラブ筋の施工、また設備配管設置に伴う補強筋の施工など、先行アクティビティによる依存関係がしっかり見えてきます。

アクティビティと優先順位を正しく識別するための迷いがあった場合は、是非第1ステップ で作成したリストに含まれる各アクティビティに対して、以下の 3 つの質問をしてみると効果的でしょう。

問い①:このタスクの前に実行しなければならないタスクはどれか?

問い②:このタスクと同時に終了しなければならないタスクはどれか?

問い③:このタスクの直後に実行しなければならないタスクはどれか?

この3つを常に基本に問いかけながら依存関係を正しく結びつけていく事がポイントです。

第3ステップは、整理してきたタスクに対して下記の図のようにネットワーク図を描く事です。

アクティビティと依存関係を識別すると、ネットワーク図の作成が可能になります。

ネットワーク図とは、依存関係に基づいてアクティビティの順序を視覚的に示したものです。是非トライアルしてみてください。

第4ステップでは、アクティビティの完了時間を見積もっていきます。

自分の過去の経験または経験者の知識に基づいて、各アクティビティの完了までに必要な時間を見積もる必要があります。

特にベストの推測を使用するのに抵抗がある場合は、現実的なタイムフレームに重みを置くように設計された「三点見積法」を使用するのも手法の1つです。

簡単に言うと、三点見積もりでは過去の経験や推測に基づいて、各タスクに対して 3 つの見積もりを指定する必要があり、時間の長さによって正確に計算するためにも、この見積法は実は数式で記述されています。

a = 楽観値m = 最頻値b = 悲観値

「楽観値」にはトラブルなく作業できた場合にかかる日数、「最頻値」には通常かかる日数、「悲観値」にはトラブルが発生した場合にかかる日数をそれぞれ指定していきますが、今回はこれ以上の細かな数式説明には入りませんので、概略の考え方だけを押さえておいてください。

第5ステップでは、クリティカルパスの識別をする事です。

1 つ目の方法は、ネットワーク図を見て、最長経路 (パス上にあるアクティビティの最長シーケンス) を判断する方法です。 つまり日数にして一番長い期間になるパスを探してみてください。シーケンスとは連続した順序を指します。

また、各アクティビティの最早開始日と最早終了日、または最遅開始日と最遅終了日を求めることにより、クリティカルアクティビティを特定することも可能です。

第6ステップは、クリティカルパス図を更新して進捗状況を反映する事です。

プロジェクトの進行に伴って実際のアクティビティ完了時間がはっきりしてきたら、 常に刷新しながらベストなネットワーク図を是非更新しましょう。

新しい情報が分かり次第ネットワーク図を更新すると、クリティカルパスを再計算できるようになります。 また、プロジェクト完了期日を現実的な観点から見ることができるようになり、スケジュールどおりに順調に進んでいるかどうかを判断しやすくなるのです。

このように、まずは現在の自社の工程作業を今一度基本に戻って分解し、正しい依存関係になっているのかを是非とも再確認してみましょう。

案外、冬季の型枠存知期間を基準日以下でバラしてしまうなど、本来短縮してはいけない所で短縮してしまっていたり、本来パラレルに効率よく進められる所を先行アクティビティに紐付けてしまって成果物を遅らせていたりなど、見えなかったものが見えてきたりもします。

弊社ネクストステージは施工品質向上だけでなく、施工管理全体のあらゆる改善や改革に対して、これまで以上にサポートを強化しながら引き続きビルダーの皆様のご支援に今後も努めて参ります。