ネクストステージは、規格化が進む建物スペックへの形態変化や、『ヒト、モノ、カネ』というリソースの変化からも、以前から専任現場監督制の脱却を推奨してきました。
既にトライアル企業も多く、現場訪問回数の削減、品質の安定、着工前精度の向上、現場監督のシゴトの主体性強化など、様々な角度からそれなりの効果や生産性向上が見えてきたような気がします。
これまでの歴史を振り返ってみるとわかるように、そもそも戸建住宅には町場工事という分野で、室町時代まで右官だった大工が、江戸時代の三大花形職人と言われる大工、左官、鳶と言われた時代から棟梁となり、『ヒト、モノ、カネ』をマネジメントしてきた経緯があった訳です。
しかし現代では既に、皆様方のような住宅会社が元請事業者となり、木造住宅の7割を担う大工を棟梁から木工事を下請化し、『ヒト、モノ、カネ』を事業者がコントロールして利益を得る構造にした事から、施工管理というマネジメント業務は住宅会社の役割として引き受けた形となってきたのです。
本来戸建住宅分野も、マネジメント業務を元請事業者が引き受けたからには、野丁場工事と言われる分野であるビルや商業施設など、ゼネコンを中心とした近代建築に体系化された施工管理の一定の原則がある程度流用されるべきでありましたが、これを体系化せずに棟梁制文化に甘んじた職人依存型の施工管理を現代にまで持ち越してきた事から、既に製造現場は疲弊し、技術者や技能者の存在価値までも低下させた根本的要因があるように思うのです。
住宅工業化への進化もある一定の段階から平行線をたどり、既にヒトの資源は受注をしても納品ができないくらいの量と質に低下し、製造への課題は今になって限界にきたと言っても過言ではないでしょう。
やはり、これからの住宅会社の中期的課題は製造納品です。
省エネや住宅性能という看板での集客力や受注力も必要なのかもしれませんが、確実な製造納品を果たせる企業か否かが、今後の住宅経営の長期存続を占う要であると言えるでしょう。
そのためには、住宅製造に直接関与する職人や現場監督の仕事の在り方や慣習そのものを過去から脱却させ、本来やるべき正しい管理の体系化から主体性あるプロとしてのシゴトに転換しなければなりません。
まず、常駐管理でない戸建住宅の施工管理こそ、着工前管理と着工後管理にタスクを分け、限られたリソースの有効活用と人財化を視野に入れた仕組みを築きあげていただきたいです。
今の現場管理の住宅事業者の悩みは、とにかく重要性が低く緊急性の高い作業が膨れ上がる現場監督の工数削減と職人を含む品質確保が最重要課題と認識されている事業者がほとんどだと言えます。
ならば、重要性が低く緊急性が高い事象がなぜ引き起こるのかを考えてみると、着工後準備の精度が低い事が原因となっているのです。そのため、まずは着工前管理の改善からスタートしてみてください。
ベテラン社員を束にしてでも着工前管理をしっかり叩いておけば、着工後管理はある程度若手スタッフでも任せられる環境下として対応出来るはずです。
そんな管理環境下において、まず着工後管理で改善できる大きなポイントが3つあります。
1つ目は、着工後管理の最重要管理である品質管理において、とにかく現場に集中でき、各工種の作業によるばらつきをしっかり見極める時間が生まれ品質の統一化に注力できる点にあります。
2つ目は現場滞在時間が従来より確保できることから、安全や環境といった保全管理がしっかり徹底でき、魅せる現場思考へと変化していくことです。
次に、3つ目は、社内業務においての仕事時間は最低でも半分、また着工前管理の精度が上がれば8割減の工数削減が実現でき、疲弊した労働環境からの脱却がまずここで図れます。同時に社内業務として、そもそもやらなくて良い作業なども浮き彫りとなり、思い切ってムダな作業を整理する(捨てる)こともできるようになります。
そして、着工前管理で改善できる大きなポイントは5つあります。
1つ目は、着工前の実施図面のチェックに時間が取れることで、不整合の少ない設計図書がしっかり協力業者間で共有ができ、着工後の手戻りや現場納めに係るムダな時間ロスを削減することができます。
2つ目は、実施図面のチェックが入念に実施できることで、設計部門との川上改善の連携強化が生まれ、設計業務のスキルアップにもシナジー効果として波及していきます。
3つ目は、原価精度、受発注、納材精度への好影響が得られることです。これまでの設計図書精度の向上から共にリストの精度が上がり、材料ロスや時間ロスを大きく食い止めることができ、結果的に粗利の確保が予算から乖離しなくなっていきます。
4つ目は、自社の工程表をどれだけ精度を上げて作成してもムリが生じて狂ってしまうケースは多々あるのですが、何より手戻りや手待ちが削減されることから、予定通りの工程計画で進みやすくなるという効果が期待できます。
5つ目は、やはり着工前にこのような一定のマイルストーンが設置されることから、業務フロー全体が見直され、そして正しく習慣化し、更には現場に行く時間はほとんどなくなる事で、製造プロセス計画に特化した仕事に集中でき、残業や休日出勤なども大幅に削減していくのです。
このように、施工管理の分業制は最低でも一定の目に見える効果は必ず生まれます。
何より各々のチームの役割や目的に対する理解が増し、今までの作業化した目的のない時間の使い方からプロとしての価値ある時間と変わりながら主体業務に変化していくことが一番の効果と言えるでしょう。
少棟数の工務店であっても、今後のキャリア形成を見据えながら施工管理の分業化に是非とも挑戦して頂き、能動的な組織づくりを蘇らせていただけると幸いです。