今こそ施工管理を根本改善するための手順とは?

昨今、社内の施工管理を抜本的に改善していきたいというビルダー様が急増してきました。以前までの改善動機は、どちらかというと …


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昨今、社内の施工管理を抜本的に改善していきたいというビルダー様が急増してきました。以前までの改善動機は、どちらかというと対処的要素が主流でしたが、今や本質的な根っこの部分にメスを入れていきたいという傾向が強くなってきたような気がします。

従来は、クレームを減らしたいという目的が圧倒的に多かったのですが、最近では現場監督や設計士の人材不足とスキル不足といった課題から、真剣にキャリアアップや育成環境を整備していかなければならないというきっかけが増えてきており、次にコロナ禍による資材原価高騰での粗利の確保や資材納期のズレによる手待ち、さらに追い討ちをかけて品質のムラによる営業利益の圧迫から、本質的改善に踏み込まれる企業様が加速してきたと考えられます。

このような業界背景において、今や現場生産性向上をテーマに様々な施工アプリが一気に普及してきましたが、既に利用されている企業様につきましてもある一定の業務効率化は図れたものの、建物品質や現場生産性の定量的な向上度合いは明確に表れておりません。

何よりビルダーが一番に求めている技術スタッフのスキルアップという課題とは裏腹に、アプリ作業が技術者や技能者の主体業務を付帯化させてしまうことで、逆に技術者としてのスキルは、どんどん厳しいものとなってきており、現場監督の存在意義さえ見失いつつある状況なのです。

今のビルダー経営者側の現場監督の課題としては、とにかく『緊急性が高く、重要度の低い仕事』に追われている状況を解消することに集中し過ぎていることです。
つまり、これは既に技術者がやるべき仕事ではなく、作業だと言えるでしょう。そんな現象を解消したいがために会社の判断で様々なツールを手にしてしまうのですが、これはかなり安易な対処的手法でしかないことに気づいて頂きたいのです。

では何故、このような緊急性が高く重要度の低い仕事に、現場が混乱し工数が増えてしまうのでしょうか?この本質的要因をまず探らなくてはならないのです。

現場ですべき主体業務は、『品質管理』『安全管理』『環境保全』の3つのみとなります。それ以外にも様々な作業管理もあるとは思いますが、質はともかくとしても、上記の3つの役割が自身の訪問目的の8割以上を占めていなければ、監督として現場での役割が果たせていないと言って良いでしょう。ここでのポイントは、この3つの仕事に対して全て計画書や基準書を明確にさせ、評価しながら修正して前に進めるという事です。

裏を返せば、そもそも目的や基準が不明確であるという環境は最悪であり、仮に存在してもそれに集中できない多くの理由が、現場監督個人の問題というよりも、多くは会社組織に課題が潜在化しているという事に気づかなくてはなりません。

例えば、材料の数量やサイズ、納品タイミングの違いによる運搬や引き上げ作業。また、仕様の変更や図面の不整合による納め方の再検討。さらには職人とのコミュニケーションのための表敬訪問など、現場監督は個々、様々な理由で現場に出向いているのです。

このような現象が蔓延している場合、会社がまず手を打つべきことは、着工前準備を精度高く実践できる組織体制を整えるということです。

そもそも受発注リストが正しく拾い出されていたならば、間違った資材に対して緊急的に動く事もなかったでしょうし、そもそも実施設計がしっかり検討されており、図面の不整合などを事前にチェックし協力業者さんに渡ってさえいれば、部位の納め方に対する再検討や、やり替えなども土壇場で行わなくて済んだでしょう。着工前の段取りをいかに精度高くやり切れているか?という命題を最優先に着手することが重要となります。

それでは具体的な着工前管理の改善方法を解説していきましょう。まず限られた人材リソースでありながらも、工事部長やベテラン監督を一旦社内に配置し、実施設計に対する表記、不整合など、職人目線でしっかり設計図書をチェックしてみてください。

次に、チェックした設計図書から拾い出しされた材工リストを正しい原価で適切な数量が掛け合わされているのかを確認し、変更事項や拾い忘れも含めて実行予算の最終確定をしっかり承認しましょう。

もう一点忘れてはならないのが、材工リストから導く受発注管理です。
材料に関しては、数量や品番を正しく建材会社等に発注するのですが、必ず工程とリンクした適切な納材タイミングを予め設定しておくことがポイントです。

ただ工(手間)については案外難しく、工事そのものを協力業者にマルっと発注されることが通例ですが、ここで仕様や作業範囲、作業手順、また確保すべき品質基準までを予め業者への受発注管理に盛り込むなどの工夫をし、明確な仕事の完了基準を示す事が重要なのです。

ここのグレーゾーンこそが、現場が動いてから手戻りや手直しに結びつき、内部不良コストを増大させてしまう要因となるのです。

次に工程管理ですが、基本的には各々のビルダーに標準工程表というものがある程度存在しています。ここで押さえておきたいことは、皆さんの会社の標準工程表が、クリティカルパスメソッドで、事前に自社の家づくりの作業分解から求めた採算工程表であるかが重要となります。

恐らく、何となく従来の社内文化から引き継いだある一定の工程表を安易にはめ込み、施工アプリ等に転記した中で業者共有しているようでは、全く技術者がする仕事に価値を生み出しません。

工事期間による季節指数や天候、暦の状況、そして工事規模による工数だけでなく、今や資材納期の事前把握なども頭に想定しながらスケジュールを組むことは当然ですが、そもそもの自社の標準工程表が適切かどうかを再検討してみる必要があるでしょう。

適切か否かの判断は、品質を落とさず(不良コストの最小化)、最短で一番原価の掛からない採算工程を作り上げることです。そのためには様々な過去現場の全ての工事タイミングを因数分解し、ボトルネックとなっているクリティカルな部分を抽出改善しながら、適切な採算工程に近づけ修正して行くことが大切です。

最後に情報管理ですが、作業的な難易度は低いのですが、コンプライアンスが重要な今の時代、非常に慎重に管理すべき大切な役割と言えます。特に工事を進める上での物件情報は、各設計図書を中心に情報共有されていくのですが、これこそ現在普及している施工管理アプリを上手く使いこなす事は効果的でしょう。

ここで大切な事は、これまで解説してきた設計図書改善を含む、正しい修正情報が最終的に関係各社に共有されるということが大前提です。

今の現状は、設計図書のバージョン管理すらままならなかったり、設計から上がってきた設計図書をチェックもせずに、ただただアプリにアップロードするといった作業になりつつあり、これでは全く現場監督としての役割を担っていない事になります。
もし不整合などが含まれた図書を業者に共有したならば、施工途中に様々な手戻りや手直しが必ず引き起こるに違いありません。

このように原価管理、受発注管理、納材管理、工程管理、情報管理という5つの役割は、着工前に精度高くすべき仕事であるからこそ、現場ですべき仕事である、品質管理、安全管理、環境保全という3つの役割がスムーズに進められます。
つまり緊急性が高く重要度の低い作業に追われることなく、現場で本来管理すべき仕事に集中できる環境を形成する事が可能なのです。
併せて、設計部門が受け持つ『監理』という役割のグレーゾーンも、工務部門が受け持つ『管理』との明確な線引きも新たに整理されていくに違いありません。

段取り八分と言いますが、まさしく着工前準備こそが、結果、素晴らしい引き渡しを実現できるのです。

皆様、是非とも今こそ根っこからの製造プロセス全体の改革にチャレンジしてみてください。我々ネクストステージ一同、皆様方の社内改革を応援させていただき、適切な事業収益と目的を持った学習環境を敷きながら現場監督や設計士の仕事の価値を見出させ、キャリアアップを見据えた人財化を目指した現場改革をお手伝いして参ります。