人を育てる環境づくりを最優先事項に!

今回のテーマでは、昨年春から猛威を振るってきたコロナウイルス感染に伴って、住宅業界の経営の在り方そのものの変革スピードが …


この記事は約5分で読み終わります。

今回のテーマでは、昨年春から猛威を振るってきたコロナウイルス感染に伴って、住宅業界の経営の在り方そのものの変革スピードが急務となる中、人的リソースの依存性が高い家業体質から、仕組みで動く企業体質に抜け出したいという願望があっても、やはり足かせになるのが人を育てるという点が一番難易度の高いハードルとなっているのではないでしょうか?
難易度が高ければ高いほど、それは会社の一番のボトルネックの重要課題であり、本来は真っ先に緊急課題として取り上げ改善を行わねばならないと考えるべきでしょう。

しかしながらこのようなコロナ禍の中、思うような集客や受注、また計画している事業予算やキャッシュフローなどがおぼつない事から、このような重要課題が有る事を認識しながらも、ついつい目の前の他の課題に着手してしまい、重要度の高い課題がいつものリスケの世界へ舞い戻ってくるのです。
考えてみれば、この症状はコロナウイルスが蔓延する以前であっても全く変わらず、未だかつて社員の人的依存という課題はずっと脱却できないまま体質化してしまったと言えるでしょう。

では、何故脱却できないのでしょう?

***

建築業界が人的依存体質から脱却できない要因には、会社思考基盤、学習環境基盤、そしてキャリアアップ評価基盤の大きく3つの課題があると考えます。

1つ目の要因は、会社の仕事に対する理念を基本にした思考の部分だと言えます。

自分達は真剣なものづくりを通じて社会に貢献したいのか?それとも販売量を一番にして信頼を得たいのか?またアフターサービスの充実に価値を持たせたいのか?など、会社の基盤となる考え方に共感しながら、人は育って行くという事です。

最近では工務スタッフの仕事へのやりがいが疲弊し退職者が続出したり、販売量No.1の営業マンが退職をして会社の売上に大きく影響したりすることを良く耳にします。

ここで大切なことは、『価値を与える』と『利益を得る』とがイコールであるいう方程式を原則とするならば、やはり『価値』の中身が経営理念に沿ったものでなければ、間違った価値を認識させたり、自身だけの技能やスキルの向上といった『職人化』への対価としか認識しなくなる訳なのです。これが作業化の根源です。

更に会社自体が職人化に向けてのスキルアップ作業を訓練化させてしまう事で、どうしても社員自身の価値観で仕事の対価を計ろうとしますので、その計測対価に見合わなければ人は離れていきます。

しかしながら、未来経営においての理念を価値として伝えていく教育や育成が浸透してるとすれば、簡単に人は離れていかないという訳なのです。

***

2つ目は、学習環境基盤です。
これは、『目的や意味』を学ぶ社内学習環境と、『型』を学ぶ現場実践環境の両立です。

具体的な例として、初めて挑戦するゴルフというスポーツを、まずはゴルフ練習場でとにかく打ちまくる。また、上級者に言葉でレクチャーを受けるなどの練習を行ったとします。
しかし、これでは体感的に慣れ、ある一定の上達ができたとしても、これ以上伸びない事がよくあります。つまりこの状態を例に挙げると、そもそもグリップの握り方の原理原則(意味や目的)を学んでいなかった。というような根本的な要因から、間違った動きを無意識に長く反復した事によって、致命的な癖と経験値いうものがついてしまうのです。

まさしく現在の職人やキャリアの高い現場管理者は、自身の体感(型)だけで学び得た能力といっても過言ではないでしょう。

だからこそ、キャリア組が率先して謙虚に住宅建築の基礎や目的を学び直す事が今大切であり、工事部長クラスを担うスタッフのプレイングマネージャー化から、本当の教育ができる管理者へ進化すべき時ではないでしょうか?

この転換がなければ、新しく挑戦していく未来の若手には、自身の『型』から得た経験だけを押し付けられていく視野の小さい学習環境にしかならない事を改めて認識しておきましょう。

***

最後の3つ目は、評価とモチベーションの関係性です。

本来、社員に対する給与や賞与は、価値を与える評価軸によって評価されなければなりません。しかし、ほとんどの会社は評価ではなく、査定となっているのです。
もし本来の会社の価値軸が改善量であれば、改善項目達成数で評価されなければいけませんし、改善質であれば、工数削減効果で評価しなければなりません。

しかしながら、会社は改善を優先思考基盤と定義しながら、クレーム回数や工期短縮日、原価率等の印象で査定されたあかつきには、社員はどう感じるでしょうか?

ここで気をつけたい事は、仮に会社のKPIでの達成者は賞与で対価とすれば良いでしょうし、改善量や質の達成者なら、『意味や目的』の達成として昇給に反映されなければなりません。

特に一点注意して頂きたい事は、昇進という判断だけは、この成果だけに留まらず、理念に沿った価値軸をどれだけ与え、責任範囲を自らどれだけ広げられたかという主体性とパッションを持ち合わせなければならないという事です。

現在の技術マネージャーが、プレイングを中心とした過去の経験値を脱却できない限り、未来の若手技術者を育てるモチベーション高き職場環境は二度と来ない事を認識し、社内改善環境を打破させる事そのものが、管理職の学習環境であると自責に解釈できる事によって、きっと素晴らしい育成環境が開けると確信しています。