今回のテーマは、最近非常に増えていながらも、中々施工措置が適切に対応できていない省令準耐火仕様をテーマにあげます。
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まず、省令準耐火構造を正しく説明すると、「勤労者財産形成促進法施行令の基準を定める省令」(*)に基づく準耐火構造であって、建築基準法の準耐火構造とは少し違います。
*勤労者財産形成促進法施行令第三十六条第二項及び第三項の基準を定める省令
具体的な基準は、独立行政法人住宅金融支援機構が定める構造(仕様)に合致する建築物という解釈になりますが、具体的には以下の4つが挙げられます。
- 外壁及び軒裏が防火構造であること
- 屋根を不燃材料で作る、または葺いたもの、あるいは準耐火構造であること
- 室内に面する天井及び壁は通常の火災の加熱に15分以上耐える性能を有すること
- その他の部分は防火上支障のない構造であること
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木造にあっては、木造軸組工法や枠組壁工法、また木質系プレハブ工法にも適用されるのです。
この省令準耐火構造の仕様は、基本的に隣家などから火をもらわない類焼防止という措置概念と、火災が発生しても一定時間部屋から火を出さない延焼防止という概念が挙げられますので、しっかり特徴を把握しておきましょう。
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また、営業面で見てみると、この省令準耐火構造であれば火災保険における構造級別区分が鉄骨造と同等の区分に該当し、火災保険料がかなり安くなるため、お客様視点で見た場合の大きなメリットとして勧めやすくなります。
一方、お客様の認識からは、「一般の木造住宅より耐火性能が高く、火災に対して安全性の高い住宅」という理解になっていますので、法令範囲ではないとしても昨年4月から始まった民法改正という視点からみると、実質の施工措置がなされていなければ、契約不適合となる可能性も非常に高くなり、密かに隠れた落とし穴だと言えますので注意しなければなりません。
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それでは次に施工の実態から見ていきましょう。
省令準耐火構造に対応する施工要領は、住宅金融支援機構から仕様書が明確に明示されています。
ただ、実際の施工現場での配慮は非常に難しく、理想的に納まる事はそう多くありません。我々も年間5000棟の施工現場に監査を実施しますが、厳しく判断すると全体のわずか数パーセント程度の物件しか適合していないのが現実なのです。
今後、住宅火災などの大事故が勃発した際に、新たに省令準耐火構造に対する不適切な業界課題が広がった場合、皆様の会社に取り返しのつかない経営的ダメージを与える時限爆弾にもなりかねませんので、次の施工ポイントを覚えておいてください。
省令準耐火構造の施工ポイントは、大きく以下の3つが挙げられます。
- 外部からの燃焼防止措置として、外壁および軒裏の防火構造。そして、屋根の不燃材料。
- 各室の防火措置として、天井及び壁の石膏ボード。
- 他室への延焼遅延措置。
以上の施工ポイントをしっかりと細かく抑えておき、職人様へ指示及び伝達をしてみてください。
しっかりと勉強会を開くなどの対応も非常に有効ですし、当社のクラウド動画学習サービス『ACRO5 』も是非上手くご活用ください。
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特に外壁の室内側壁、また界壁以外の間仕切り壁につきましては、必要間柱寸法、ボート厚をしっかり確認しておく事が大切です。留め付ける金具の種類と長さ、そして間隔については非常に抜け落ちやすい知識ですので、まずは理解し、細心の注意を払いながら施工に挑んでください。
また天井については、上階に床がある天井と、床がない天井では仕様が異なる事を覚えておきましょう。
さらに上階に床がある天井には、防火被覆となる石膏ボートの種類と厚み、そして防火被覆面の目地部の当て木等の寸法などが細かく決まっていますので、ここもしっかり理解しておかないといけません。
そして壁と同様、合わせて留め付ける金具の種類と長さ、そして間隔についても抑えておきましょう。
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最後に他室への延焼遅延措置に対してです。
ここも何となく理解されていながらも、きちんとした施工がなされない部位でもあります。
例えば、コンセントボックスなど、防火被覆を貫通して設備機器や木材などを取り付ける際の防火被覆措置はしっかりと手を抜かずに対応しましょう。
また、床または天井と壁との取り合いに火炎が相互に貫通しないように、ファイヤーストップ材を施工しなければならないのですが、天井と壁の納まりによってはファイヤーストップ材が適切に施工出来ない場合なども見受けられますので、設計段階から設計士が施工目線を理解し、設計図書にしっかり反映し、細かく記載できるように配慮しておく事が間違いを防ぐ事に繋がります。
省令準耐火構造におけるユーザーへの提案は非常に有効であるだけに、耐火や防火における性能や品質は、あくまで『施工+設計+製品』が三位一体になり具現化される事を再認識し、明日から挑んでください。