毎日使う浴室は、住まいの中でもとりわけ劣化しやすく快適性の差が出やすい場所です。寒さやカビ、使い勝手の悪さを感じながら「そろそろリフォームしたほうがいいのかな」と悩んでいる方も多いでしょう。

ただ、工期や費用、生活への影響が気になって、なかなか踏み切れないのが本音かもしれません。

実際、浴室リフォームは「壊してみないとわからない」部分が多い工事です。下地の腐食、配管の劣化、構造の問題など見えないリスクが潜んでいることも珍しくありません。一方で、正しい知識と事前準備さえあれば、工事中の不安を減らし、満足度の高い仕上がりに近づけられます。

この記事では、京都で宮大工として修業を積み、現在はさまざまな企業の品質基準づくりにも関わる一級建築士である小酒の意見を踏まえ、浴室リフォームの基礎知識から実際に起こりやすいトラブルや注意点、そして現地調査から引き渡しまでにチェックしておきたいポイントまでをわかりやすく紹介します。

「自分の家の浴室はリフォームすべきなのか」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

肩書 小酒 徹也
大学院修了後、京都で5年間宮大工として修業し、木造建築の基礎を学ぶ。一級建築士を取得後、プレカット会社内の設計事務所で構造・意匠設計の実務に従事。現在は、さまざまな企業の施工基準の作成に携わるほか、現場監督や設計者を対象とした講義で講師を務め、建築業界の人材育成にも尽力している。また、これまでの知見を活かし、リフォーム分野の新サービス立ち上げにも参画し、新築とリフォームの両面で住宅品質の向上に取り組んでいる。

実はシンプル!浴室リフォームで選べる工事パターンとは?

浴室は、国土交通省の調査でもリビングの次に多くのリフォームが行われる箇所です。そしてリフォームの方法にもさまざまな選択肢があり、より快適で安全な空間に作り替えることができます(出典:「令和6年度 住宅市場動向調査報告書」国土交通省)。

※グラフ掲載 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001900667.pdf
図表:「令和6年度 住宅市場動向調査報告書」

浴室リフォームでは、基本的にユニットバス全体の交換が行われるケースがほとんどです。既存のユニットバスを解体し、空っぽの状態にしてから新しいユニットを丸ごと入れ替えるのが一般的な流れになります。

そのうえで、浴室リフォームには、大きく分けて2つのパターンがあります。

  • ユニットバスからユニットバスへの交換
  • 在来浴室からユニットバスへの変更

いずれのケースでも、最終的にはユニットバスへの入れ替えが多くなります。

ユニットバスはパネルを組み立てて施工するため、工期は一般的に1週間前後で比較的短めです。しかし、排水管や給水管の位置変更が必要な場合は工期や費用が追加されることがあるため、100万円を超える費用がかかったり、一時的に家中を断水する場合があります。ですが、長期間にわたって浴室が使用できなくなることはあまりありません。

また大規模ではありませんが、換気扇、鏡、パネルや天井、ドアといった部分的な交換もあります。

しかし、劣化やカビなどの理由で依頼される場合は、部分交換よりも全体交換のほうが多いです。

加えて、戸建ての場合は浴室に窓があることが多いため、内窓を追加して断熱性を向上させるリフォームもあります。最近では、ヒートショック対策として追加する人が多いようです。

以上のように浴室はリビングなどに比べて選択肢が限られるため、施工パターンは比較的決まっています。

知らないと後悔する?浴室リフォームの落とし穴3つ

浴室リフォームは、快適で安全な空間を手に入れるための重要な工事ですが、トラブルや注意点もあります。特に多いのが、浴室の入口まわりのトラブルと見えない部分の劣化による追加費用です。実際によく聞くトラブルをもとに注意点をご紹介します。

  1. 入口まわりのトラブル

浴室全体を入れ替えるリフォームで最も多く見られるのが、浴室入口のサイズや構造に関する問題です。最近のユニットバスは出入り口を広くとれるように設計されていますが、古い住宅では柱の位置が変えられず、次のようなトラブルが起こることがあります。

  • 新しい扉が入らない
  • 入口幅が狭くなり、使い勝手が悪くなる

さらに、ユニットバスの浴槽や扉、シャワーにも種類があるため、打ち合わせで認識がずれると「思っていた配置と違う」といった問題が発生します。発注時の品番や仕様の間違いは、当日の設置不可という重大トラブルにつながることもあります。

これらの問題は、事前の現地調査と確認によって防ぐことが可能です。工事前に入口の開口幅や柱の位置、ユニットバスの向きや仕様をしっかりチェックしておくことが重要です。万が一、工事中に取り付けが不可能だと判明すると、それ以上の施工も止め、計画を変更せざるを得ないので工期や費用が増えてしまいます。

  1. 見えない部分の劣化による追加費用

浴室は水回りで、構造体や配管の劣化リスクが高い場所です。壁や床を解体してみないと分からない腐食やカビ、配管の傷みが見つかることがあり、追加補修費用が発生する場合があります。

これはどのリフォームでも言えることですが、見積もりに下地補修や追加工事の可能性をあらかじめ含めておくことが、トラブル回避のポイントです。予算に余裕を持たせることで、解体後に追加費用が発生しても安心して対応できます。

  1. 工事期間中の生活への影響

当たり前ですが、浴室全体をリフォームするとなると少しの間お風呂が使えません。

そのため、事前に近隣の銭湯や入浴施設を探したり、担当者に案内してもらうなど、代替手段の準備をしておきましょう。また、どのくらいの期間使用できないかを確認しておくと安心です。

これらのトラブルは、事前の現地調査と見積もりの確認で大半を防ぐことができます。だからこそ、リフォームの目的や優先順位を整理しておくことで、工事を進めることができます。

現地調査で確認!見えないリスクを把握して安心の浴室リフォーム

トラブルを防ぐためには現地調査が重要です。ここでは、実際に現地調査でどのようなことが重要なのかを見ていきましょう。

浴室は、構造や配管、電気設備など専門的な部分が多く、施主自身が直接チェックすることは難しいです。そこで重要なのは、現地調査で専門家や業者の人に確認すべきポイントを把握し、必要な情報をしっかり質問して理解することです。事前にリスクや工事内容を確認しておくことで、後のトラブルを防ぎ、納得してリフォームを進めることができます。

  1. 下地や構造の状態確認

浴室は水回りであるため構造部分の劣化リスクが高く、解体して初めてわかる部分も多くあります。現地調査では以下の点を確認してもらいましょう。

  • 床下や天井裏の状態(腐食やシミ、水の侵入の有無)
  • 壁や下地の強度、カビや腐食の兆候
  • 将来的に補修が必要になる可能性

専門家や業者に依頼すれば、これらのリスクを事前に丁寧に説明し「この部分が劣化している場合は周辺も交換が必要」といった予想も示してくれます。しかし、事前のリスクを共有してくれるかどうかは、信頼度を判断する重要なポイントとも言えるでしょう。

  1. 配管・給排水設備の確認

浴室は水回り設備が集中しているため、配管の状態も確認が必要です。

  • ユニットバスの設置位置と既存配管の位置が離れていないか
  • 劣化した配管がある場合、交換は必要か
  • 配管ルートの追加や工事に伴う水止めの期間

特に古い住宅では配管が劣化している場合が多く、追加工事や費用が発生する可能性があります。配管の状態をしっかり確認してもらえば、工事後のトラブル防止にもつながります。

  1. 電気設備の確認

浴室乾燥機や暖房設備を設置する場合、電源の変更が必要になることがあります。

  • 電圧の切り替えが必要か
  • 配線や安全性の確認

事前に業者の人から詳しい説明を受け、生活への影響を把握しておきましょう。

  1. 追加工事の可能性と費用

現地調査で配管や構造などを確認してもらったうえで、追加工事が発生する可能性と費用の目安を提示してもらうことが重要です。あらかじめ費用感を知っておけば、追加工事が発生した際も慌てることなく判断できます。

事前に確認すべきポイントや追加費用の可能性を把握しておくことで、予想外のトラブルに慌てることなく安心して浴室リフォームを進めることができます。

安心の浴室ライフはここから!引き渡し前の最終チェックポイント

現地調査を終えてリフォーム工事が完了したら、最後に引き渡しとなります。引き渡し時には、仕上がりや設備の動作だけでなく、水回り特有のトラブルを防ぐための確認が必要です。特に水漏れや配管の問題は生活に直結するため、優先的にチェックしましょう。

  • 通水テストと排水の確認

蛇口から水がきちんと出るか、排水がスムーズに流れるかを必ず確認してください。施工中の接続忘れやパッキンの不具合が原因で、水浸しになるケースも実際にあります。

  • 水漏れの有無

点検口から確認するだけでも多くのトラブルを未然に防ぐことが可能です。万が一、後に水漏れが見つかった場合でも、多くの場合は保証対象となるため早めに業者に相談しましょう。

  • 仕上がりの確認

仕上がりの確認も重要で、壁や床の傷・歪みを確認しましょう。また、浴室暖房や換気乾燥機などの機械類は、リモコンや本体が正しく動作するか確認することをおすすめします。

その他に、バリアフリーの対応や手すりを設置した場合は、軽く体重をかけて安全性を確認しておくと安心です。

引き渡し時点で水漏れなど生活に直結することはしっかり確認し、安心して使用できる状態かを確認しておくことが、快適な浴室ライフの第1歩となります。

安心して浴室リフォームを始めるために

浴室リフォームは、見えない部分が多いだけに不安に感じやすい工事です。しかし、現地調査で確認すべきポイントを理解し、工事中に追加工事や追加費用の可能性を事前に把握しておくことで、リスクを大きく減らすことができます。さらに、引き渡し時のチェックで「こんなはずじゃなかった」という後悔も防ぐことができます。

毎日使う浴室だからこそ、快適性・安全性・耐久性をしっかり確保することが重要です。今回の内容が、リフォームへの第一歩を安心して踏み出すための一助となれば幸いです。