お久しぶりです。Housing journey編集長のイシノです。今回は2回目の編集部コラムになります。

本題に入る前に、ひとり紹介させてください。それはこのメディアを一緒に運営しているメンバーの「ナナ」です。日々、記事のテーマを考えたり、住宅にまつわる情報を追いかけたり、同じ目線で試行錯誤を重ねながらコンテンツづくりに向き合ってくれています。

彼女はまだ家を購入するフェーズではありません。だからこそなのか、話していると悩んでいることや気にしているポイントが、年齢や環境でこんなにも違うのかと気づかされることがあります。

そして何より、ふとした瞬間に「それって本当にそうなんですかね?」と、立ち止まるような問いを投げかけてくるのです。

先日、彼女が言った言葉が印象に残っています。
「イシノさんはご家族もいて家を購入したいと考えていますが、私はいろいろ知っていくほど不安が増えて、自分が将来家を買う想像ができないんです」

その率直な言葉に、いまの消費者が抱えている本音が、そのまま表れているように感じました。

物価高と住宅金利上昇で膨らみ続ける「お金」の不安

最近は、物価の上昇が当たり前のように続いています。スーパーで手に取るものの値段や、外食の価格。日々の暮らしの中で、じわじわと負担が増えているのを感じる場面は少なくありません。

実際に私自身も、スーパーのチラシとにらめっこする時間が増え、特売の日を狙ったり、スーパーやドラッグストア、八百屋をはしごしたりして、なんとか抑えているのが現実です。

さらに、中東情勢の緊迫化による物流の停滞や、一部資材の出荷遅延、停止といった影響も重なり、エネルギー価格や建築資材の高騰に拍車がかかっています。それだけでなく、追い打ちをかけるように住宅ローンの金利もじわじわと上がり始めています。

少し前までは「もう少し待てば土地が安くなるのでは」と考え様子を見ていたものの、気づけば資材や金利の上昇で、同じ家でも総額は確実に重くなっています。

私自身もマイホームを検討していますが、なかなか踏み切ることができません。条件を整理し、情報を集めれば集めるほど、不安はむしろ増えていく。そんな感覚があります。

そして、待てば待つほど状況が悪化していくのではないか。そんな焦りのようなものもあります。

「今決めてしまったほうがいいのか」
「もう少し待った方がいいのではないか」

そうやって考えているうちに、時間だけが過ぎていき、気づけば選択そのものが難しくなっている実感があります。

「現場が見えない」という、もう一つの不安

先日、友人家族の家づくりの話を聞く機会がありました。ついに夢のマイホームの契約をしたとのことです。私の仕事柄、これまでにも何度か相談を受けていました。

話題に上がるのは、間取りやキッチンの選び方、動線の工夫など、いわゆる暮らしやすさに関するものが中心でした。もちろんそれはこれから暮らしていくうえで大切な要素ですが、基本的には好みの範囲でもあります。私は明確な答えを出すというより、背中を押すような形で話を終えることがほとんどでした。

ただ、そのやり取りを通して感じたことがあります。やはり多くの人が「家は問題なく建つもの」という前提があるということです。住宅の品質そのものについて深く考える機会は、あまり多くないのかもしれません。

かくいう私も、入社するまでは同じ感覚でしたし、長く一緒にいる夫もやはりそう考えています。

そして、その会話の中で引っかかることがありました。

こんなに大きなお金をかけるのに、実際に現場を見られるのは中間検査のタイミング以降。それまでの工程は、基本的に見ることができないというのです。

それで、本当に安心できるのでしょうか。

家づくりにおいて、本当に重要なのは完成してから見える部分だけではありません。むしろ、基礎や構造といった、完成後には見えなくなる部分こそ、住まいの安全性や快適性を大きく左右します。

しかし現実には、その最も重要な工程が施主の目に触れることなく進んでいきます。管理体制はしっかりしていると言われても、その中身を自分で確かめることはできません。

一方で、いま品質向上に取り組んでいる企業の多くは「いつでも現場見学が可能です」と言います。自社の施工に自信があるからこそ、つくる過程も含めて共有しようとする姿勢です。それが当たり前だと思っていたからこそ、見せてもらえないという事実に、少なからず不安を感じました。

見えないまま進んでいくこと。それを「仕方のないこと」として受け入れてしまっていいのでしょうか。決して安くない買い物であり、おそらく一生に一度の選択になる家づくり。それでも見えないままで進んでいくことに、どこか引っかかる自分がいました。

「永く住み続ける」からこそ、価格の先にある価値を見極める

物価や金利が上がり、家づくりにかかる負担が大きくなっている今、私たちはこれまで以上に価格に敏感にならざるを得ません。少しでも安く、少しでも条件の良いものを。そう考えるのは、とても自然なことだと思います。

ですが、日本の住まいは「古くなったら住み替える」フロー型から「手入れをして長く使い続ける」ストック型のあり方へと大きくシフトしています。人生100年時代、住まいは人生を支える資産へと変わっていく中で、価格の数字だけでは測れない価値の重要性が増しています。

見えない部分にこそ、暮らしの安心や快適さを左右する価値があるとしたら、それをどう判断し、信じればいいのでしょうか。

実はこの業界には、ほとんど知られることのない「いくつかの事実」があります。私自身、この仕事に関わって初めて知ったことばかりでした。

ひとつ目は、性能の「数値」についてです。

耐震性や断熱性といった住宅の性能は、当たり前のように「等級」や「Ua値」といった数値で語られます。けれどそれらの多くは「建てる前の設計段階での数値」である、という事実があります。

つまり、図面通りにきちんと施工されてはじめて、その性能が実現される前提になっているのです。だからこそ大切なのは「数値があるか」だけでなく、その数値が現場で再現される前提になっているかどうかを見る視点です。

ふたつ目は、現場の「可視化」です。

これだけ高額な買い物でありながら、建築中のチェックは公的には「基礎」「構造」「完了」の3回しか義務付けられていないという事実があります。
だからこそ、いつでも現場を見られる仕組みがあるのか、あるいは写真や記録として工程がきちんと残されているのか。その「見える化の姿勢」が、会社の姿勢に表れます。

最後に「第三者の視点」です。

どれだけ立派な設計数値があっても、施工が伴わなければ意味がありません。実際に第三者ヒンシツ監査を入れると、1工程あたり平均して複数の不備が見つかり、1棟で見れば数十箇所の指摘が発生することも珍しくありません。

それでもなお、コストや手間を理由に第三者のチェックを入れない会社があるのも事実です。だからこそ、利害関係のない視点が入っているかどうかは、数値と現場を「信頼」でつなぐ、最後の判断軸になります。

家づくりは「完成したものを見る」だけでは判断しきれない領域が大半です。だからこそ、見えない部分をどう扱っているか。そこに向き合う姿勢こそが、住まいの本質的な価値を決めているのだと私は思います。

これからの家づくりにおいて「見えない部分をどう可視化しているか」を見極めること。それが、人生100年時代にふさわしい、後悔しない住まい選びのひとつの指針になっていくはずです。

だからこそ私たちは、家づくりのリアルを伝え続けていきたい。そして、そのために学び続けていきたいと思っています。同じように悩みながら、一緒に考えていけたら嬉しいです。

 

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