家づくりにおけるトラブルが、年々増え続けています。たとえば、住まいるダイヤル(※)への問い合わせは、2000年から20年余りで約8倍に増加し、その6割以上が住宅トラブルに関する相談です。

※国土交通大臣から指定を受けた(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターによる住宅専門の相談窓口

その背景には、SNSなどを通じて情報があふれる中で住まい手の要求水準が高まる一方、技術者の高齢化やスキル不足によって施工が属人化し、品質のギャップが生じている現状があります。
多くの方々は「家づくりには明確な基準があって、基本的には図面通りにちゃんと建つものだ」という性善説的な認識をされているかと思います。しかし実は、「ちゃんと家が建つことのほうが稀だ」という性悪説的な認識を持っていただきたいのです。

決して、つくり手が故意に手を抜いたりトラブルを起こしたいわけではありません。しかし家づくりの現場では、たくさんの専門職人が半年近い工期をかけて携わるため、常に完璧な施工を維持するのは至難の業です。さらに、木造住宅で法的に定められた品質基準は全体のわずか18%(※)しかなく、残りの大部分は現場の職人の技量や判断に委ねられているのが現状です。

※当社が推奨する施工管理における抵触基準分布2023年版より(在来工法・べた基礎・充填断熱仕様の場合)

そこで本記事では、こうした属人化による品質のバラつきを抑え、高品質な住宅を実現するために重要な「後戻りできない10のチェックタイミング」を解説します。第三者による監査の役割や重要性とあわせて、これから後悔しない家づくりのために知っておくべき視点をお伝えしていきます。

家づくりの「施工品質」は、現場の職人に依存している!?

住宅は工場で作られるわけではなく、そのほとんどが「現地生産」で、職人の手によって、ひとつひとつの工事が進められていきます。

前段でご説明したように、住宅施工では非常に多くの建材が使われ、30人近いさまざまな専門職人が関わってきます。そのため、施工品質は実際に作業を行う職人の自主的な管理と技術力に大きく依存しているのが実情です。

もし施工の基準が曖昧だったり、たとえ基準があっても現場の職人がその内容を十分に理解していなかったりすると、本来想定されていた品質や性能を確保できない可能性は十分考えられます。
住宅施工には、一度進むと後戻りができないからこそ、後戻りできる唯一のフェーズで現状を振り返り、不備があれば是正しながら前に進めていく基本姿勢を社内で仕組み化されることが、住宅会社選びの重要なポイントとなります。

さらに、家づくりにおいてもう一つ知っておいて欲しいことがあります。それは、建築基準法などの法律で決まっている範囲が、全体のわずか18%程度しかないと言われていることです。
法律以外に義務化されている共通仕様やメーカー基準を含めても、家全体の半分以上が、全く基準がないのです。

出典:ネクストステージが推奨する施工管理における抵触基準分布2023年版

だからこそ、法律で決まっていないグレーゾーンを、住宅会社が各々に自社が目指すべき基準を設定しておかないと、どれだけ優秀な職人を入れたとしても品質のバラつきは軽減されません。

ネクストステージでは、このようなグレーゾーンを明確にするために、全国1200社の技術マニュアルを構築しており、その技術指針に対して、様々な現場の施工品質の評価を実施することによって、施工品質のムラを最大限に削減できるのです。

住宅会社の設計スペックに準じて、個社別に施工基準や手順、施工要領などをまとめた技術マニュアルでは、どのタイミングで、どのようなチェックを行えばよいのでしょうか?

家づくりの義務的な検査回数はたった3回?意外と少ない一般的な住宅検査

一般的に、法的に義務化されている検査は3回と言われています。

①配筋検査(瑕疵保険の必須検査)
配筋検査では、基礎のコンクリートを流し込む前に、鉄筋の太さ・本数・間隔が設計・基準どおりかを確認します。鉄筋は基礎を支える骨格部分なので、不備があると設計強度が確保できず、建物の傾きや不同沈下、耐震性の低下といった重大なリスクにつながります。

②躯体検査(瑕疵保険の必須検査・行政による確認検査)
上棟後、構造躯体が完成した段階で行う検査です。柱・梁・耐力壁・筋交い・接合金物など、建物を支える骨組みが設計どおりに施工されているかを確認します。ここに不備があると、地震や台風の力に耐えられず、建物全体の耐震性・安全性が損なわれるリスクがあります。

③完了検査(行政による確認検査)
建物が完成した後に、建築基準法に適合しているかをチェックします。確認内容は主に「用途・面積・高さ・避難経路・採光・換気」などの基準で、建築確認申請に基づいて建てられているかを検査するものです。
ただし、完了検査は法律上の最低基準を満たしているかを見るもので、断熱や仕上がり精度など細部までは対象になりません。


これらはあくまで「住宅瑕疵担保履行法(※)」や、「行政の建築確認」に基づいた最低限の検査にすぎません。多くの現場では、第三者によるチェックはこの3回だけであり、なかには1回目を自社検査に切り替えている場合もあるため、実質2回しか行われていないケースもあるのが現状です。

※住宅瑕疵担保履行法
保険事故が発生した場合、義務を負う住宅事業者が責任を以て補修します。万一、義務を負う住宅事業者が事業停止等で責任を果たせない場合には保険金等で修繕が行われます。
さらに詳しい内容については、住宅瑕疵担保責任保険協会にてご確認ください。

しかし、本当にこれだけの義務検査で住宅の施工品質が守られていると言えるのでしょうか? このような法的な義務検査は、品質を担保する目的ではなく、瑕疵保険制度を上手く回す為の簡易検査であったり、行政として申請内容の建物が申請通りに建てられているかという、各々の運用視点で義務化されているだけで、お施主様視点で品質を担保するものではありません。

お施主様視点で、品質を確実なものにしていく「10回のチェックタイミング」

家づくりには「後戻りできない工程」が存在します。当メディアを運営するネクストステージのヒンシツ監査サービスでは、その重要な工程を逃さないよう、10回のタイミングで第三者による施工状況の確認・評価(※第三者ヒンシツ監査サービス)を行い、住宅の品質を守るお手伝いをしています。
ここからは、その10回のチェックタイミングと内容を簡単にご紹介しましょう。

※ヒンシツ監査サービス
ネクストステージ社が提供するサービスであり、後戻りできない最大10工程のタイミングにおいて、施工の品質状況を同社が認定する現場監査士によって現地にて評価する、業界でもワンランク上の第三者検査サービスです。

①基礎底盤コンクリート打設前
②基礎立ち上がり型枠施工後/コンクリート打設前
住宅の土台となる「基礎」は、家の強さや耐久性を左右する重要な部分です。この監査では、鉄筋コンクリートの性能をしっかり発揮できるように鉄筋が正しく組まれているか、そして基礎と木造の骨組み(躯体)を一体化させるために必要な金物が正しい位置に取り付けられているかを確認します。
コンクリートを流し込んでしまうと、鉄筋は外から見えなくなってしまうため、この検査は必ず打設前に行うことが大切です。
また、1回目(底盤部)と2回目(立上り部)では、工事の進捗により、確認できる箇所が異なるため、2回に分けてチェックすることをおすすめしています。

③土台据付施工後/床下地施工前
家の重さを支える「基礎」と、その上に乗る「土台」がしっかり固定されているかを確認します。
あわせて、床を支える横木(大引き)の並び方や、床を下から支える柱(床束)の設置状況もチェックし、家の土台として安全に機能できるかを確かめます。


④上棟直後屋根ルーフィング施工完了後
屋根の下地に敷く防水シート(ルーフィング)と、家を支える骨組み(軸組み)の状態を確認します。この検査で雨水の侵入を防ぎ、家を長持ちさせるための大切な防水性能を確保します。

⑤構造躯体施工完了後/外壁防水シート施工前
家の骨組みをつなぐ金物(構造金物)が、図面通りに正しく取り付けられているかを確認します。これは家の耐震性や安全性に直結する、とても重要なチェックです。壁を張ってしまうと見えなくなる部分なので、この段階でのチェックは欠かせません。

⑥防水シート施工完了後
引き渡し後の住宅トラブルで最も多いのが雨漏りや結露です。この検査は、その原因を防ぐための最後のチェックポイントです。外壁の内側に張る防水シートの施工状態や、雨水を止めるための最終処理が正しく行われているかを確認し、長く安心して暮らせる家を守ります。

⑦壁・天井断熱材施工完了後/ボード施工前

家の快適さや光熱費に関わる断熱性能や省エネ性能をしっかり発揮できるよう、断熱材が正しく施工されているかを確認します。

⑧内部造作・プラスターボード施工完了後
壁紙や塗装などの仕上がりの美しさや耐久性に影響が出ないよう、仕上げ工事に入る前に下地となるプラスターボードをチェックします。継ぎ目やビスの間隔、ビスのめり込みや浮きがないかをしっかり確認し、きれいで丈夫な仕上がりを確保します。

⑨外壁施工完了後/仮設足場撤去前
外壁の仕上がりやコーキング(隙間を埋める防水材)の施工状況、雨漏り対策が正しく行われているかを確認します。足場を外してしまうと上の方は確認できなくなるため、このタイミングで必ずチェックする重要なタイミングです。

⑩建物完成時
家の引き渡し前の最後のチェックポイントです。外壁や内装の傷だけでなく、扉の開閉や収納の使い勝手など、実際の生活をイメージしながら細かく確認します。これにより、入居後に不便やトラブルがないかをしっかりチェックできます。

これら10回のチェックタイミングが、住んでからでは見えない品質を守る鍵になります。しっかり確認することで、安心で長持ちする家づくりにつながります。

目に見えない品質は「後戻りできないタイミング」で、いかに是正できるか?

家づくりは、「完成すると見えなくなる」部分こそが重要です。私たちが推奨する「10回のチェックタイミング」は、後戻りできない瞬間を見逃さず、確実に品質を守るための仕組みです。

どんなに良い素材を使っていても、どんなに高価な設備を入れても、施工品質が確保されていなければ「いい家」にはなりません。だからこそ、品質チェックは回数だけでなく、「いつ行うか(=タイミング)」が、最も重要なのです。

あなたの大切な家づくりが、本当の意味で「安心できるもの」になるように、次回からは、この10回のチェックタイミングがどれほど重要なのかについて、さらに詳しく解説していきます。