住宅の外壁は家の美観を左右するだけでなく、雨や風、紫外線から家を守り、耐久性や防水性を維持する大切な役割を持っています。見た目をリフレッシュするだけでなく、家を長持ちさせるために欠かせません。

しかし、簡単な工事に見えて実は施工方法や材料の選び方、タイミングによって仕上がりや耐久性が大きく変わり、トラブルが起きやすい面があります。

この記事では、京都で宮大工として修業を積み、現在はさまざまな企業の建築基準づくりにも関わる一級建築士である小酒の意見を踏まえ、外壁リフォームの基礎知識から現地調査・引き渡し時のチェックまで、わかりやすく解説します。

肩書 小酒 徹也
大学院修了後、京都で5年間宮大工として修業し、木造建築の基礎を学ぶ。一級建築士を取得後、プレカット会社内の設計事務所で構造・意匠設計の実務に従事。現在は、さまざまな企業の施工基準の作成に携わるほか、現場監督や設計者を対象とした講義で講師を務め、建築業界の人材育成にも尽力している。また、これまでの知見を活かし、リフォーム分野の新サービス立ち上げにも参画し、新築とリフォームの両面で住宅品質の向上に取り組んでいる。

家の耐久性や防水性を守る、外壁の意外な重要性

国土交通省の調査によると、外壁は住宅リフォームで3番目に多く行われている箇所です。見た目を一新するだけでなく、家の耐久性や防水性を守る重要な役割を持っています(出典:「令和6年度 住宅市場動向調査報告書」国土交通省)。

※グラフ掲載 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001900667.pdf
図表:「令和6年度 住宅市場動向調査報告書」

外壁リフォームの主な方法としては、以下のようなものがあります。

  • 外壁の張り替え

古くなった外壁材を新しいものに丸ごと取り替える方法です。耐久性を高め、部分的な改修も可能で、窓周りだけを新しくすることもできます。

  • 外壁塗装

塗装によって外観をリフレッシュしつつ、防水・耐候性を保つことができます。塗料には種類があり、主にアクリル、ウレタン、シリコン、フッ素の4種類に加え、ラジカル制御型、無機塗料などの高機能なタイプがあります。

色や光沢の違いで仕上がりの印象も大きく変わるため、選ぶ楽しみがあります。

  • コーキング(シーリング)の打ち替え

サイディングの目地や窓周りのコーキングを新しく交換する工事です。定期的な打ち替えで、雨漏りや外壁劣化を防ぐことができます。

それぞれかかる費用は、工事内容や施工範囲、使用する材料によって大きく変わります。あくまでも目安になりますが、

  • 部分塗装や一部補修:数万円~
  • 全面塗装・張り替え・重ね張り:100万円以上かかるケースも

塗料の種類やグレード、施工面積によってその都度、価格は大きく変動します。

また、外壁リフォームが必要になる主な理由としては、劣化や老朽化と防水・雨漏り対策です。

外壁は紫外線や雨風にさらされやすく、方角によっても劣化スピードが異なります。特に西側の外壁は、西日の影響で色あせやひび割れが早く出やすい傾向があります。また、コーキングや外壁の状態が悪いと雨水が浸入し、建物内部にカビや腐食が発生するリスクが高まります。

このように、外壁リフォームは家の美観と耐久性を守るためにとても重要です。早めに状態を確認し、必要な補修を行うことで将来の雨漏りや劣化のリスクを減らすことができます。

リフォーム効果は大きいけれど、施工次第で差が出るのが外壁

外壁は、リフォームを行うことで家の美観や耐久性を保つうえで大きなメリットがあります。しかしその一方で、施工の良し悪しによって結果が大きく左右されるという側面も見逃せません。

  • 塗装やコーキングの施工方法

既存のコーキングを撤去せずに上から増し打ちする施工は、接着不良やひび割れを引き起こしやすく、結果的に雨漏りのリスクを高めます。また、雨水の侵入を防ぐ重要な役割を持つ防水シートが古いままの場合、取り合い部分の防水処理が不十分だと、本来の性能を発揮できません。

  • 仕上がりイメージのギャップ

色選びも注意が必要です。サンプルで見た色と実際に外壁全面に塗装した時の印象は、想像以上に異なることがあります。さらに、日差しや方角によって色味や艶の見え方が変わるため「思っていた仕上がりと違う」と感じるケースも少なくありません。

  • 工事のタイミングと天候

外壁リフォームは、時期と天候の影響を強く受けます。雨や湿気の多い季節に施工すると断熱材や下地が濡れてしまったり、乾燥不良によって仕上がりや耐久性に悪影響が出る可能性があります。

また、営業主導の工事では十分な配慮がされないまま工事が進められることがあり、トラブルになることもあります。

実際によく聞かれるのが、塗装工事での塗りムラや乾燥不良による仕上がりの悪さ、完成後に「色味や艶感がイメージと違う」と感じるケースです。また最も深刻なのは、外壁施工や防水処理の不備によって、工事後に雨漏りが発生してしまう事例です。

だからこそ、外壁リフォームは「ただ塗ればいい」という考えではなく、施工方法やタイミングまで含めて気をつけなければならない重要なところなのです。

さらに注意したいのが、外壁は訪問販売や飛び込み営業など、悪徳業者が狙いやすい箇所でもあるという点です。外壁の劣化は屋根や基礎のように簡単には確認できないため「お宅の外壁が傷んでいます」と言われて不安になり、即決してしまうとトラブルにつながることもあります。

こうした業者の言葉を鵜呑みにせず、複数の業者に確認することや、補償内容を確認して施工先を選ぶようにしましょう。

工事前に欠かせない「現地調査」の重要性

先ほどは、工事そのものに関するトラブルを取り上げましたが、費用面の不安や無理のないリフォーム計画を立てるうえで欠かせないのが専門家による「事前の現地調査」です。

現地調査でまず確認されるのは、外壁の劣化状況です。外壁材そのものにひび割れや汚れ、剥がれといった傷みがないか、またコーキングが柔軟性を保っているか、ひび割れていないかといった点を細かく見ていきます。

これらは防水の要ともいえる部分のため、劣化していると雨水が浸入しやすくなり、建物内部のダメージにつながるリスクが高まります。

さらに、どの範囲をリフォームすべきかを見極めることも現地調査の大きな目的です。部分補修で済むのか、全面施工が必要なのかによって工程も費用も大きく変わるため、この判断は非常に重要です。

外壁工事では高所作業が伴うケースも多く、その場合は足場の設置が必要になります。この足場の有無だけでも、工事費用が大きく変動することがあるため、事前に確認しておかなければなりません。

追加費用が発生しやすいポイントとしては、

  • 足場の設置
  • 使用材料のグレード変更
  • 施工範囲の拡大
  • 想定外の劣化箇所の追加工事

などが挙げられます。中には、本来やらなくてもよい部分まで施工されてしまうケースもゼロではありません。

現地調査は専門家に任せることが前提ですが、実は調査前にご自身でも確認できるポイントがあります。あらかじめ自分の目でチェックしておき、現地調査の際に改めて確認してもらうことで、内容への理解が深まり、より安心してリフォームを進めることができます。

  • コーキングの状態

目地部分を見てひび割れが入っていないか、隙間ができていないかを確認しましょう。指で軽く押したときに弾力がなく、硬くなっている場合は劣化が進んでいるサインです。

  • 外壁の劣化状況

外壁材にひび割れや剥がれがないか、汚れや色あせが目立っていないかも目視で十分に確認できます。こうした変化は、外壁リフォームを検討するきっかけになるポイントでもあります。

また、日当たりの良い東・西・南の面は劣化が早く、日影になりやすい北の面は劣化が遅いなどの日当たりや風通しの影響で劣化に差があることを把握しておくと、優先順位を考える材料になります。

このように、事前のセルフチェックと専門家による現地調査を組み合わせることで「どこを」「どの程度」「なぜ工事するのか」が明確になり、工事内容や費用に対する納得感も高まります。

だからこそ、現地調査は「ただ見てもらうだけ」ではなく、工事内容や費用を明確にし、トラブルを未然に防ぐための大切な安心材料として活用することができるのです。

任せきりは危険!納得しながら進めることが肝

最後に押さえておきたいのが引き渡し時のチェックです。ここは、ご自身が確認できる「最終段階」ともいえる重要なタイミングになります。

引渡し時には、外壁の仕上がりや傷などの見た目を確認するのはもちろん、工事中に一時的に取り外された外部照明や電気配線、給湯器周りの付属品などが、きちんと元通りに復旧されているかも忘れずにチェックしましょう。意外と見落としやすいポイントですが、後々の不具合やトラブルにつながりやすい部分でもあります。

「自分だけの確認では不安」という場合は、第三者の専門家にチェックを依頼するのもひとつの方法です。防水シートや断熱材など、完成後には見えなくなる外壁内部の施工については、施工会社に工事中の写真を撮ってもらい、その内容を専門家の視点で確認してもらうことで、施工の適正さを客観的に判断できます。特に大規模な外壁リフォームでは、こうしたひと手間が大きな安心感につながります。

外壁リフォームは専門性が高い工事だからこそ、現地調査の段階から事前打ち合わせ、そして引き渡しまで、一つひとつ納得しながら進めることが何より重要です。

「任せきり」にせず、要所で確認を重ねることが、満足度の高い外壁リフォームにつながり、そこが「肝」と言えるでしょう。