家づくりを考えるとき、どうしても目がいきがちになるのが間取りやデザイン、内装です。しかし、家の安心・安全を支えているのは、実は目に見えない「基礎」であることを忘れてはいけません。

基礎とは、家自体の重さや地震・風によってかかる力を地盤にしっかり流し、建物全体を支える重要な役割があります。どんなにおしゃれな家でも、基礎に不備があっては建物の傾きやひび割れ、耐震性能の低下など、思わぬトラブルにつながる可能性があります。

実際に、基礎部分の施工ミスは珍しくありません。だからこそ、家づくりを進める前にどのような不備が起こりやすいのかを知っておくことが重要です。

本記事では、第三者の立場で実際に数多くの新築現場を見てきた山下の経験をもとに、基礎で起こりがちな施工不備を事例とともに解説します。

知らなければ気がつかない、家の「目に見えないリスク」を知ることで、安心して家づくりを進めるヒントになります。

肩書 山下 陽平
大学在学中から、教授の構造設計事務所で建築の経験を積む。卒業後も同事務所に勤務し、有名建築家と連携して多数の著名建築物の構造設計に従事。一級建築士資格の取得後、地元の不動産会社に勤務し、住宅の欠陥やトラブルに直面したことを機に独立。 第三者の立場で建物調査や鑑定を行う事務所を設立し、弁護士と協働して多くの裁判をサポート。その後、検査会社や監査基準策定に関わり、現在は「建築トラブルのない社会」を目指し、第三者監査に特化するネクストステージで活動中。

荷重も地震もすべてここに!家の一番下「基礎」の秘密

家づくりにおいて、最初に語るべきなのは「基礎」です。なぜなら、基礎は家の安全性を左右する、いわばすべての土台だからです。

私たちが暮らす家には、想像以上に多くの力がかかっています。家具や人の重さといった荷重に加え、台風や地震による揺れなど、上下左右あらゆる方向から外力が加わります。これらの力は、屋根から梁、柱、土台へと順に伝わり、最終的に基礎を通して地盤へと流れていきます。

つまり、家にかかる力が最も集中する場所こそが基礎なのです。

ここが弱ければ、どれほど立派な柱や壁があっても、家全体の安全は保てません。「基礎がしっかりしていなければ、家は成り立たない」と言っても決して大げさではないのです。

そのため、家づくりは必ず基礎から始まります。

基礎は、鉄筋とコンクリートを組み合わせた「鉄筋コンクリート構造」になっています。写真のように鉄筋を緻密に組み上げ、その中に生コンクリートを流し込むことで、圧縮にも引張にも強い構造をつくります。

基礎内部は、主筋・縦筋・腹筋・スラブ受け筋といった複数の役割を持つ鉄筋によって構成され、それぞれが荷重を分散し、地震や外力に耐えるために重要な働きを担っています。

ここで、この写真を見てください。鉄筋の下にサイコロ状のブロックが設置され、その上に鉄筋が組まれていますね。

これはスペーサーと呼び、鉄筋を湿気から守るための重要な役割を果たしています。鉄筋は水に触れるとさびやすく、特に基礎部分は湿気が溜まりやすい場所です。そこで、かぶりという鉄筋の下にコンクリートの厚みを確保します。この部材は欠かせません。

基礎は、家にかかる荷重や外力を受け止めるだけでなく、その力を適切に地面へ流す役割も担っています。そのため、基礎そのものの作り方だけでなく、基礎が接する下部の状態にも注意を払う必要があります。

いくら基礎が頑丈でも、地盤が柔らかいと力の伝わり方に偏りが生じ、結果として沈下や傾きが生じてしまいます。

地盤は基礎と深くかかわる部分ですが、今回はあくまで基礎の話の延長として、その不備についてもいくつかご紹介していきます。

基礎が沈む…!静かに進む劣化の原因は「地盤」にあった

まず初めにご紹介するのは、転圧が弱く、基礎下部のブロックが沈んでしまう不備です。原因はいくつかあります。締め固め自体が不十分なこともあれば、雨の日に作業をしたことが問題になる場合もあります。特に雨の日は緩みやすく、水を含んだ状態になるため、重いものをのせると、地盤が沈みやすくなります。沈下の原因はひとつではなく、状況によってさまざまです。

先ほども触れたとおり、基礎の鉄筋は水に触れないようにコンクリートの厚みを確保しています。しかし、薄くなると鉄筋に湿気が届くスピードが速まります。コンクリートも徐々に水分を含み、割れが生じることがあります。

とはいえ、十分な厚みを確保していれば、永く基礎をしっかり保つことが可能です。だからこそ、しっかりと固めることが非常に重要になります。

また、基礎を設置する前には防湿ビニールを敷き、床下の湿気が上がらないようにする施工も行われます。ただし、このビニールが破れてしまうこともあり、湿気が直接基礎に届くリスクが高まります。ベタ基礎の場合、ビニールは絶対に敷かなければならないものではありませんが、少しでも湿気を防ぐためには、敷く場合は丁寧な施工が欠かせません。

このように、地盤の沈下や防湿ビニールの破れなど施工のわずかな不備でも、基礎の沈下や劣化につながってしまいます。基礎の強さを長く保つためには、細部まで気を配った施工が何よりも大切です。

地盤がしっかり固まったら、基礎の出番です。次は、基礎に潜む不備をいくつかご紹介します。

見逃すと危険!鉄筋の配置間違い、補強や本数の不足も

まず最初に紹介したいのが、鉄筋の配置が図面通りになっていないという、非常に重大な不備です。この写真では、鉄筋が20cm間隔で配置されています。しかし、今回の建物の構造上の理由から、15cm間隔で施工する必要がありました。

「いつもは20cm間隔だから」という思い込みで、図面を十分に確認せず作業を進めてしまった結果、このようなミスが起きています。この場合は建物の安全性に直結するため、原則やり直しが必要です。

次に紹介するのは「かぶり不足」の不備です。本来、鉄筋の下端は地盤から6cm以上確保しなければなりません。しかし、地盤を整える作業は手作業で行われるため、どうしても多少の凸凹が生じます。その結果、写真のようにかぶり厚さが足りなくなってしまうことがあります。

こうした事態を防ぐため、多くの施工会社ではあらかじめ高さに余裕のあるスペーサーブロックを使用し、7cm程度を確保する工夫をしています。

小さな配慮ですが、耐久性に大きく影響する重要なポイントです。

さらに注意が必要なのが、配管などの影響で鉄筋を切断するケースです。やむを得ず鉄筋を切る場合、その近くには必ず補強用の鉄筋を追加しなければなりません。しかし写真を見ると、その補強鉄筋が入っておらず、法令で定められた基準を満たしていません。

補強の入れ方について細かな基準はありませんが、原則として切断箇所の近くに入れることが求められます。

その他にも、鉄筋の本数不足はよく見られる不備のひとつです。図面では2本必要なところに、実際には1本しか入っていないといった見落としも、決して珍しくありません。また「多重結束」と呼ばれる、鉄筋が何本も重なりすぎている状態にも注意が必要です。鉄筋同士が密着しすぎると、コンクリートが隙間に十分に回らず、内部に空洞ができてしまう恐れがあります。

これは必ずしも法律違反というわけではありませんが、不安に感じる方もいるかと思います。もし現場で見つけた場合は、

  • ばらけさせることは可能か
  • 構造上、本当に問題はないのか

をしっかり確認し、納得できる説明を受けることが重要です。

基礎を弱くする「完成後には見えなくなる不備」とは

続いてご紹介するのは、底盤のコンクリートを流し固めた後に発覚する不備です。

鉄筋が図面通りに正しく組まれていたとしても、状態次第では、基礎の性能が大きく損なわれることがあります。

まずはこちらの写真をご覧ください。一見すると問題なさそうですが、よく見ると鉄筋が全く入っていない箇所があります。このように鉄筋が入らずコンクリートだけで構成される部分を「無筋コンクリート」と呼びます。

仕様書によって異なりますが、NEXT STAGEでの共通仕様は、無筋コンクリートの範囲は10cmまでと定められています。しかし、この事例では約20cmあり、このまま流してしまうとひび割れが発生しやすくなり、基礎の耐久性を著しく低下させてしまいます。そのため、無筋状態を避けるために幅を狭めるなど、適切な是正対応が不可欠となります。

次に挙げられるのが、アンカーボルトの設置忘れです。これは基礎工事における不備の中でも、特に多く見られる代表的なミスのひとつです。

アンカーボルトは基礎と土台を強固につなぎ、建物全体を支える重要な部材です。もし設置を忘れてしまうと、地震や台風といった大きな力が加わった際に、力をうまく分散できません。

その結果、最悪の場合、建物がずれたり、倒壊につながるリスクすらあります。ほんの一部でも、その役割は決して小さくありません。

このように、確認不足や施工ミスは完成後には見えなくなる分、より深刻な問題となります。だからこそ、工事中の確認が住まいの安全を左右すると言えるでしょう。

家を支える基礎だからこそ「重要だと知っている」ことが大切

家づくりを考えるとき、間取りやデザイン、設備などを楽しみながら考える時間も必要です。ですが、その一方で「基礎」が家を支えるうえで、重要なことも忘れてはいけません。

基礎の不備は、住み始めてすぐに問題が起きるとは限らず、数年、あるいは十数年経ってから「床が少し傾いてきた気がする」といった形で、少しずつ表に出てくることもあります。

その時になってからでは「もう少し知っていれば…」と後悔しても、簡単にはやり直せません。

今回ご紹介した基礎工事では、

  • 鉄筋の間隔や本数
  • かぶり厚さ
  • 補強鉄筋の有無
  • 無筋コンクリートの発生
  • アンカーボルトの設置

など、専門的でわかりにくいポイントに不備が起こりやすいのが現実です。とはいえ、すべて完璧に理解する必要はありません。

大切なのは「基礎は重要な部分だ」と知っておくことです。現場の写真を撮ってもらう、気になる点を遠慮せず質問する、第三者のチェックを検討するなど、それだけでもひとつ上の家づくりができるようになります。

この情報が、これから家を建てるあなたにとって、安心して家づくりを進めるためのひとつの判断材料になれば幸いです。