「家が完成したのに、まさか雨漏りするなんて思わなかった」

これ、実際に起きているトラブルです。

これから家づくりを始めようとしている方にとっては、「まさかそんなことが?」と思うかもしれません。ですが実際には、完成直後の新築にもかかわらず、雨漏りや外壁のひび割れなど、思わぬ不具合に悩まされているケースは少なくありません。

さらにそれは、いわゆるわかりやすい「欠陥住宅」の話ではなく、一見きれいに仕上がっているように見える家でも起こりうることなのです。

その原因のひとつが「外壁工事」の施工不備。

外壁工事とは、建築の外側に壁材を取り付ける仕上げ工程です。雨や風、暑さ・寒さから家を守る、大切な役割を担っています。

ここに不備があると、雨漏り・内部の結露・断熱不良・外壁材の劣化といった問題が、数年後にじわじわと表面化してくることもあるのです。

そしてそれらは、一見しただけでは気がつかないものが多いです。

今回は、住宅の外壁工事に潜むよく見落とされがちな不備事例を、第三者監査に携わり、数々の現場を見てきた専門家である山下が実際の現場写真も踏まえて解説します。さらに、なぜそうした不備が起きてしまうのか、そしてお施主様が確認すべきポイントまで、徹底的にお伝えします。

肩書 山下 陽平
大学在学中から、教授の構造設計事務所で建築の経験を積む。卒業後も同事務所に勤務し、有名建築家と連携して多数の著名建築物の構造設計に従事。一級建築士資格の取得後、地元の不動産会社に勤務し、住宅の欠陥やトラブルに直面したことを機に独立。
第三者の立場で建物調査や鑑定を行う事務所を設立し、弁護士と協働して多くの裁判をサポート。その後、検査会社や監査基準策定に関わり、現在は「建築トラブルのない社会」を目指し、第三者監査に特化するネクストステージで活動中。

高所のチェックは専門家に。施主が気を付けるべきこととは?

まず初めに注意してほしいのですが、外壁工事は、仮設足場の撤去前になります。ですので、2階以上の高所部分の外壁や屋根の仕上がりは、足場がある間でなければしっかりと確認することが難しくなります。

しかし、お施主様が自由に足場を登ることは極めて危険であり、原則としておすすめできません。

というのも、仮設足場は作業者向けに設計されており、一般の方が安全に歩行できるとは限りません。そのため、転落や転倒のリスクが非常に高く、重大な事故につながる恐れがあります。また、建設現場はヘルメット着用や安全帯の装着が前提であるため、専門知識と装備がなければ安全確保が困難です。

どうしても確認したい場合は、施工会社や第三者の専門家に立ち会いを依頼して、高所の写真を撮影してもらう方法が最も安全です。また一部の施工会社では、ポールカメラやドローンなどの高所撮影用機器を導入しているため、それを活用することもおすすめします。

【事例①】外壁の傷や隙間、そのままだと雨漏りの原因に

では、外壁にはどのような不備があるのか、実際に私が現場で目にした事例をいくつか紹介します。

もっとも多いのは、やはり外壁の「傷」です。これらの傷は、工事中の作業や資材の搬入・設置の際に生じることが多く、そのまま放置されると将来的な劣化・雨漏りの原因になる可能性があります。

特に注意が必要なのが、ガルバリウム鉄板などの金属外壁です。金属外壁は耐水性に優れている一方で、足場の金具や工具が擦れることで傷がつきやすく、表面が損傷すると下地が露出し、錆や腐食につながるリスクがあります。

また、外壁材の欠けやつなぎ目の隙間が発生するケースも少なくありません。これらは施工時の調整ミスや衝撃によって生じるもので、いずれも雨水の侵入経路となり得るため注意が必要です。

高所のチェックは足場があるうちに施工会社や専門家に依頼するのが基本ですが、低所であればお施主様ご自身でも確認できる箇所もあります。傷だけでなく、そのようなところもあわせて確認するようにしましょう。

外壁は小さな傷やわずかな隙間でも、そこから水が浸入し、内部の結露や腐食につながることがあります。気になる点は必ず施工会社に相談しましょう。

【事例②】ビス・ボルトまわりは防水の盲点!見えない劣化リスク

また、外壁は一見仕上がっているように見えても、水の侵入口となり得る隙間や未処理部分が多数存在しています。たとえば、以下のような実例があります。

実例1:シーリングの未施工・不完全な箇所がある。シーリングの場合、見た目では施工されているように見えても、内部がスカスカになっている場合があります。特にサイディングのつなぎ目や端部、部材接合部は要確認です。

窯業系サイディングは基本的に「表面のみ」に防水性能があります。裏面には防水性がないため、水が裏側に侵入した場合、サイディング材がミルフィーユ状に層がはがれる「層間剥離」現象が起きることがあります。これは重度の劣化となります。

なので、サイディングのつなぎ目や端部、部材接合部は細かく確認をしてもらうように依頼してください。

実例2:ボトル工程時に止水処理がされていない。
止水処理についてですが、ビスやボルトにシーリングを行うことは法的に義務付けられているわけではありません。

しかし、それだけだと浸水のリスクが高まり周囲から水がしみてくる場合があります。

対策としては、ビス・ボルト・金具まわりにもシーリングを施しておくとより安心です。ただし、下側は水の逃げ道として、必ず開けておくようにしましょう。

【事例③】屋根は足場撤去前に要確認!見落としがちな汚れと破損

外壁と同様に、屋根も工事の際には職人が上を歩くことが多く、意外と施工後に不具合が残っているケースがあります。特に足場がある間は上からの確認がしやすいため、このタイミングでのチェックが非常に重要です。

実際の現場で見かけたものですと、たとえば、

実例1:靴の泥や汚れが屋根に付着している。職人が屋根の上で作業を行う際、靴についた泥や粉塵、作業中に飛び散った汚れが屋根に付着してしまうことがあります。

特に金属屋根は表面がフラットなため、足跡や汚れが目立ちやすく、簡単には落ちません。

「そのうち雨で流れるのでは?」と思われがちですが、実際には雨では完全に落ちず、しっかりと拭き取ってもらう必要があります。

実例2:屋根材に割れや変形が生じている。瓦屋根などは特に注意が必要です。人が歩く際に荷重が一点に集中することで、瓦が割れたり変形したりするケースがあります。

作業中に割れたものが見過ごされ、そのまま施工が完了してしまうケースも実際にあります。

瓦以外でも、スレートや金属屋根でも踏み跡による歪みや傷が発生することがあり、放置すると防水性能や耐久性に影響を及ぼします。

他にも、ビスなどの金属片が落ちていたり、トイにごみが溜まっているケースも少なくありません。

屋根の不具合は地上からでは確認できないため、足場が残っている間に、施工会社や第三者監査士に依頼して屋根上の写真を撮影してもらいましょう。

【事例④】通気層チェックで防ぐ外壁のカビ・腐食トラブル

最後に、外構工事において、見た目や防水性能が注目されがちなため、よく見落とされがちな「通気層」の施工不良についてご紹介します。

通気層とは、外壁材の内側と透湿防水シートという「湿気は通すが、水は通さない」という性質を持っている特殊なシートの間の15mm以上の空気の通り道のことです。この層は、万が一、壁内に湿気や雨水が入り込んだ場合でも、湿気を逃がして乾燥を促す役割を果たします。

この通気層の確保は、瑕疵担保履行法でも義務づけられているほど重要な部分です。

通気層は、建物の完成後には見えなくなる部分です。そのため、施工不良があっても気がつきにくく、チェックも後回しにされがちです。また、十分に通気層が確保されていないケースも少なくありません。

実際の現場で確認した事例ですとたとえば、

実例1:通気層が15mm以上設けられていない。

実例2:空気の出口である軒天や屋根裏に排気口が設けられていない。

通気が不十分な場合、以下のようなリスクを引き起こす可能性があります。

  • サイディングの劣化や剥離
  • 内部結露の発生
  • 外壁の変色やカビ(緑や黒っぽい汚れ)
  • 木材の腐食や構造体への影響

外壁に黒ずみやカビのようなものが出ている住宅の多くは、外部からの汚れではなく、「通気層の不良」が原因なことが多いです。内部から湿気が抜けきれず、カビが繁殖してしまっているケースが多く見られます。

そのため、通気の入り口と出口については、隙間が確保されているか、排出口があるのかは上下見ながら確認してください。

家を守るならココだけはチェック!安心は「任せる」+「見る」のバランス

このように、外観はきれいに仕上がっていても、外壁や屋根、通気層といった「見えない部分」に施工不備があることで、住み始めてから不具合が発覚するケースは少なくありません。

外壁の傷やわずかな隙間、未処理のシーリング、そして通気層の不備など、こうした問題を放置してしまうと、雨漏りや内部結露、さらには構造材の腐食など、住まい全体の劣化を引き起こす原因になりかねません。

とはいえ、高所や危険が伴う箇所の確認は、必ず施工会社や第三者監査士など、専門家に任せるのが適切です。

一方で、施主自身が確認できる以下のような点は、意識的に目を向けておく必要があります。

  • 外壁表面に傷や擦れがないか
  • サイディング材のつなぎ目や端部に隙間がないか
  • 通気層の空気の通り道が確保されているか

これらは、雨漏りや結露、外壁材の劣化といったリスクを未然に防ぐうえで、非常に重要なポイントです。特に見落とされがちな部分だからこそ、意識して確認することが住まいを守る第一歩になります。

ただし、あまり細部にこだわりすぎたり、現場の安全ルールを無視して無理な行動をしてしまうと、担当の会社との信頼関係に影響を及ぼすこともあります。

大切なのは「確認すべきところは確認し、危険な部分や専門知識が必要な部分はプロに任せる」というバランス感覚です。

安心できる住まいをつくるために「任せる」と「確認する」のちょうどいいバランスを持つことが、長く快適に暮らせる家づくりの確かな土台になります。