マイホームは、人生で最も大きな買い物のひとつ。だからこそ誰もが「欠陥住宅なんて絶対に避けたい」と思うことでしょう。

ところが実際には、雨漏りや基礎のクラック(ひび割れ)、床の傾きといった住宅トラブルは珍しくありません。国土交通省が公表している「住宅瑕疵担保責任保険」のデータによると、新築住宅のうち、雨漏りなどの「保険事故」の認定は、およそ500件に1件の割合で発生しています(平成31年度)。

しかもこの統計は「新築後10年間、瑕疵保険の対象になっている住宅」に限られたものです。国土交通省の調査では、新築住宅のうち瑕疵保険に加入しているのは約5割程度と言われています。築10年以上が経過した住宅や、そもそも保険に加入していない住宅も含めれば、実際の不具合件数はさらに多くなると考えられます。

実は「欠陥住宅」と一口に言っても、その深刻度はさまざまで、原因や影響の大きさによって意味合いが大きく変わってきます。「基礎に鉄筋が入っていなかった」や「見積もりのごまかしによる仕様のすり替え」といった非常に悪質なものから、さらに雨漏りや設備の不具合といった比較的よくあるケースまで、さまざまなトラブルが報告されているのです。

では、なぜこうした問題が起きるのか。そして、施主が欠陥住宅を起きにくくするためにできることは何なのか。本記事では、家づくりにおける第三者監査に携わり、数々の現場を見てきた現場の専門家・山下に、欠陥住宅の定義から実際の事例、法律の限界、そして施主が取るべき具体的な行動まで、プロの目線から語っていただきました。

肩書 山下 陽平
大学在学中から、教授の構造設計事務所で建築の経験を積む。卒業後も同事務所に勤務し、有名建築家と連携して多数の著名建築物の構造設計に従事。一級建築士資格の取得後、地元の不動産会社に勤務し、住宅の欠陥やトラブルに直面したことを機に独立。
第三者の立場で建物調査や鑑定を行う事務所を設立し、弁護士と協働して多くの調停や裁判をサポート。その後、複数の検査会社や基準策定に関わり、現在は「建築トラブルのない社会」を目指し、施工品質の安定と向上に特化するネクストステージで活動中。

「欠陥住宅」の定義は? 雨漏りや基礎のクラックはなぜ起こる

「欠陥住宅」という言葉は、1995年に発生した阪神・淡路大震災を契機として広く使われるようになりました。多くの住宅が倒壊し、私も被災地の調査に入りましたが、強度や安全性の面で法律を満たしていない建物が数多くありました。

当時、そうした住宅を欠陥住宅と呼びましたが、その後は社会問題化し、あらゆる不具合のある住宅のことを指す言葉になったんです。

さらにややこしいのは、材料の特性による自然な現象までも「欠陥」とされてしまっていることです。木材であれば乾燥や湿気で伸び縮みしますし、基礎コンクリートにはどうしてもクラック(ひび)が入ることがあります。近年は強度や安全に影響が無くても、欠陥と言われてしまう傾向があります。

素材の特性による影響が少ないクラックの一例

しかし私たち専門家からすると、本来の欠陥住宅というのは「性能や法律を満たしていないもの、安全性に問題があるもの」です。私たちは「瑕疵のある住宅」と呼びますが、それが正しい捉え方だと思います。

よく話題にのぼる基礎のクラックも、実は完全に防ぐことはできません。もちろん、構造や強度に影響する大きなひび割れは欠陥ですが、乾燥によって自然に入った軽微なものは基本的には問題ありません。設備機器の故障も同じで、欠陥ではなく交換対応で済むことがほとんどです。

また、欠陥とひとことで言っても、その要因もさまざまです。代表的な例に「雨漏り」がありますが、その原因は大きく分けると次の3つです。

  1. 気候の変化によるもの
    ゲリラ豪雨や線状降水帯など、当初の想定を超える強い雨が降ることがあり、防水や「雨仕舞い」(水を流す工夫)を超えてしまうケース
  2. 施工が基準を守っていないもの(施工不備)
    防水に関しては「瑕疵担保履行法」で基準が決められているが、それを守らずに施工し、雨漏りが起こるケース
  3. チェック不足によるもの
    施工中に人が歩いたり、釘が突き抜けて防水シートを破ってしまったりと、本来は仕上げの前確認して修正すべきミスを職人任せにして見逃してしまうケース

上記の場合、1はある程度は防ぎようがありません。ですので「どこまでを欠陥と考えるか」を理解しておくことが非常に大切になってきます。

年間で何件起きている? 日本の「欠陥住宅」に関する統計データ

では、こうした欠陥住宅は、日本でどのくらい起きているのでしょうか? 実は、そのデータはほとんどないのですが、唯一参考になるのが「瑕疵保険」に関する統計です。

瑕疵保険とは、正式には「住宅瑕疵担保履行法に基づく住宅瑕疵担保責任保険」 のことを指し、新築住宅を供給する事業者が加入を義務づけられている保険です。

住宅事業者は建物の引き渡しから10年間、主要構造部や雨の侵入を防ぐ部分に瑕疵があった場合、その補修をすることが義務づけられています。ただ、10年後にその会社が存在しているかどうか、補修費用を払える資金があるかどうかはわからない。そこで国は、住宅事業者に対してこの保険に加入するか、あるいは大手であれば補修費用を供託させるよう定めた、という背景があります。

少し前のデータですが、国土交通省の集計によると制度開始から平成31年度までのの瑕疵保険の証券発行件数は約290万件。そのうち、雨漏りなどで実際に保険事故として認定されたのは約6,500件でした。発生率でいうと0.2%、つまり「500件に1件」の割合になります。

数字だけ見ると少ないように思えるかもしれませんが、実際に現場にいると、この500件に1件というのはかなり多いと感じます。しかも、これはあくまで「新築10年以内の保険対象住宅」に限った話で、瑕疵保険に入っていない会社や築10年以上経った住宅を含めれば、実際の件数はもっと多いはずです。

また、こうした住宅トラブルに関わってくるのが「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」です。裁判所のように白黒をはっきりさせる場ではなく、中立な立場でお施主様と業者の間に入って「落とし所」を探してくれる場所になります。

2022年の相談件数は3万5,000件、2023年は3万2,000件と、毎年3万件を超える相談が寄せられています。ただし、このセンターの存在を知っている人は対象者のうち2割しかいません。つまり、もし全員が知っていたら、実際の件数は5倍の15万件に達するという計算になります。

都道府県別では、東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・愛知といった大都市圏に相談が集中しています。着工数が多いので当然ですが、北海道も意外と多いですね。気候条件が厳しく、結露や屋根裏につららができるといった住宅に不利な環境が影響していると考えられます。

ちなみに2023年のデータでは、新築戸建てに関する相談のうち21.1%が「ひび割れ」に関するものでした。基礎や外壁、内装にひびが入ると「家が壊れてしまうのでは」と強い不安を持つ方が多いのですが、実際には材料の性質によるものもあり、判断が難しいケースも多いんです。性能不足による雨漏りの相談も、全体の13.5%を占めています。

すべてが欠陥、あるいは瑕疵というわけではありませんが、疑いのある相談件数がこれほど多いというデータがあることは知っておいていただくと良いのかなと思います。

床下に産廃が…「本当にあった欠陥住宅」の事例をご紹介

ここまで欠陥住宅の全体像をお話してきましたが、その内容や深刻度合いはさまざまです。私が関わってきた事例を、印象的なものから3つご紹介します。
まずは、私の知る限りで最悪のケースです。あるお施主様が、かなりのコストをかけていわゆる豪邸を建築されたのですが、引き渡しから20年経ってリノベーションをしたところ、なんと基礎に鉄筋が入っておらず、床下には大量の産業廃棄物が埋められていました。

その結果、建物全体傾き、お住まいになっていた方に健康被害も発生していました。住宅会社と何年も裁判をして、最終的には勝訴しましたが、業者に支払い能力がなくお金は回収できなかった。これが、私が見てきた中でも最悪の事例です。

続いて、中程度のケースです。ある住宅会社で「どんぶり勘定」の見積もりを行い、坪単価だけで契約を行っていたことが発覚。当然、その金額の中でやりくりをしようとするので、基礎を小さくしたり、断熱材を安いものに変えたり、木材の質を落としたり。契約に書かれていた仕様とはまったく違う施工が行われていました。

この件は裁判で、最終的にはお施主様の未払い分を払わずに相殺するという判決になりました。結果的にいくらかの補修はできましたが、断熱材の全面交換など本来必要な修繕までは到底カバーできなかった。昔はこうした「見積もりのごまかし」による欠陥が少なくありませんでした。

最後に、よくある細かなケースもご紹介しておきます。弊社では2025年10月時点では25件、2024年は28件の住宅瑕疵の調査を行っていますが、雨漏り、床下への浸水、基礎のクラック、契約内容と違う設備が取り付けられているなど、内容はさまざまです。

原因は施工不良によるものもあれば、材料の変形や性質によるものもあり、すべてを事前に予測するのは難しい部分があります。とはいえ、こうした「よくある欠陥」が常に一定数存在しているのが現実です。

では、このような住宅トラブルは、そもそもなぜ起こるのか。ここからは、その背景を説明していきます。

欠陥住宅の原因①:家づくりの「ルール」が十分ではない

まず前提として、このようにトラブルの件数が増え続けているにもかかわらず、建築基準法などの法律では家の瑕疵について直接的に定められていません。しかしそれを補う形で、政令や省令、告示といったルールが段階的に用意されています。例えば平成12年に多くの住宅トラブルが社会問題化し、泣き寝入りするお施主様が後を絶たなかったことから、「瑕疵担保履行法」ができ、防水に関する最低限の基準が定められるようになりました。

また、断熱材を入れることもかつては法律上の義務ではありませんでしたが、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」の改正により、2025年からはようやく義務化されました。

しかしそれでも、家づくりにおいて「法律でルールが決められている部分」は全体のほんの一部で、さまざまな法律を全部ひっくるめても18%程度。つまり、家づくりのルールの8割以上は、法律では決まっていないんです。

もちろん、法律を補うような仕組みもあります。たとえば住宅ローン「フラット35」の仕様書や、日本建築学会の仕様書、JISやJASといった国家規格、各建材、メーカーの施工要領などです。

ただしこうしたものをすべて合わせても、ルールが明確に決まっているのはどんなに多くみても約48%で、残りは何も決まっていません。つまり、家づくりはその半分以上を職人さんや現場監督の経験やスキルに委ねられているんです。大手メーカーは一応マニュアルを作ってはいるけれど、分厚い何百ページもあるようなものを現場で隅々まで読む人なんて、ほとんどいないんですよ。

つまり、同じ仕様、同じプランの家を隣同士で建てても、担当する監督や職人が違えば、工期も仕上がりも違う家になる。これが住宅業界の現実です。

欠陥住宅の原因②:施主の知識レベル向上に対し、現場は人手不足

また、近年の傾向として、お施主様の知識レベルが向上しています。昔は家づくりのことを調べようと思ったら、大都市の本屋に行って高額な専門書を買うしかなかった。ところが今はネットで簡単に情報が手に入る。だからお施主さんの要求レベルはどんどん上がっているわけです。

一方で、施工側では人材不足が深刻です。1980年には全国に97万人いた大工さんが、今では30万人と、わずか3分の1にまで減っています。しかもそのうち30%は60歳以上で、30歳以下の若手はたったの7%しかいません。

つまり、現場は高齢の職人に依存している状態で、今後は必要な経験やスキルを持った人材はますます不足していきます。家を建てたくても、職人が確保できずに建てられない工務店が出てくるのは時間の問題です。

もちろん各社が手を打っていますが、経験豊富な職人を確保するのは非常に難しくなっています。さらに、建築業界は他の産業に比べて労働生産性が上がっていません。なぜかというと、一般的な製造業と異なりロボットやAIに作業者を置き換えることが難しく、どうしても人の手でやらなければならない仕事が多いからです。

さらに追い打ちをかけているのが資材の高騰で、2015年から比べると132%も上がっています。当初は「コロナが終われば落ち着く」と言われていましたが、下がる気配はまったくありません。こうした状況の中で、業界としては本気で職人の確保や育成に取り組まなければなりませんが、状況はなかなか深刻で、職人不足が品質の問題にも直結しているのが現状です。

住宅に欠陥が見つかったら? 施主がとるべき具体的な対応策

このような現状のなかで、実際にマイホームの欠陥が発生した際にはどのように対応すればいいのでしょうか。

基本的な流れは、まず第三者の調査を入れて事実を確認し、そのうえで不備や瑕疵があれば補修で直していく、という対応です。例えば私たちの会社の場合は、できるだけ施工についてルールを定めたうえで第三者として監査を行っています。
※これから建築される方や、現在建築中で、第三者監査のご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。お気軽に相談受付中です。お施主さま向け問い合わせ窓口はこちら

※第三者ヒンシツ監査サービスのイメージ

ただ注意してほしいのが、裁判になるくらいのトラブルになったとしても、「家を完全に建て替える」ことは本当にまれです。命に関わるような倒壊の危険がある場合は別ですが、そうでなければ「壊れた部分を補修する」のが基本的な考え方です。

もちろん補修にも幅があります。たとえば断熱材が入っていない場合、それが将来的に大きな問題を引き起こすのであれば、どんな方法を使ってでも入れるべきです。でも、将来に大きな影響が出ないと判断できるなら、入れずに終わらせることもあり得ます。現場や状況によって判断は変わりますね。

また、2020年の民法改正で「契約不適合責任」という考え方が導入されました。契約内容と違う工事だった場合、お施主様は業者に「契約通りに直してください」と追完請求ができます。その上で、業者が「できません」「やりません」と拒否した場合には、裁判を起こして損害賠償を請求できます。

ただ、裁判所が認める損害賠償はあくまで「根拠のある部分」に限られます。心労や精神的な負担などは、基本的に認められにくいんです。その結果、損害賠償が認められなかった部分については「代金の減額請求」で調整する、という流れになります。

この法整備によって、業者が「うちにはできないから」と逃げることは難しくなりました。消費者保護の観点からは、良い変化ではありますね。 

欠陥住宅を「起こりにくくする」ため、一番大事なのは会社選び

欠陥住宅を100%防ぐ方法は、正直に言ってありません。現場の条件や材料の特性、人の作業によるバラつきがある以上、どうしてもゼロにはできないんです。

ですが、「欠陥が起こりにくくする」ために、施主ができることはいくつかあります。
まず、一番大事なのは住宅会社選びです。私が思うチェックポイントは、その会社が「住宅の品質をどう考えているか」という質問にちゃんと答えられるかどうかですね。

たとえば「うちはこれまで、事故なんか一度もありません。職人が一生懸命やってるから大丈夫です」とだけ言われても信用できませんよね。逆に「第三者を入れてこういうタイミングでチェックしています」「自社でこういう仕組みで品質管理をしています」といった形で、具体的に説明できる会社は安心できます。

次におすすめしたいのは、住宅展示場よりも現場を見ることです。展示場は予算をかけてきれいに仕上げてある場合が多いので、実際の家づくりの参考にはなりにくいんです。それよりも、建築途中の現場を何軒か見せてもらう方が、その会社の本当の姿がわかります。

現場がごちゃごちゃに散らかっているとか、職人さんが挨拶もしないとか、そういう会社は避けたほうがいいですね。もちろん、現場がきれいだから品質が完璧というわけではないですが、やっぱり整理整頓された現場は職人さんの意識の高さにつながります。

ただし現場を見学するときは、施主側も気をつけたいポイントがあります。引き渡しまでは家は業者の所有物なので、勝手に入ってはいけません。「今日は見学させてもらってもいいですか?入ってはいけないところはありますか?」と一声かける。これだけで現場の雰囲気もだいぶ変わります。

また、インターネット上の情報は「材料」として参考にする程度に留めてください。ネット上の口コミや記事は、良く書いているのは自社関係者、悪く書いているのはライバル会社、なんてこともよくあります。材料や設備に「万能なもの」はなく、必ず長所と短所があります。情報を一方的に信じるのではなく、複数の視点から確認することが大切です。

最後に、家づくりは「人と人」です。大手ハウスメーカーでも工務店でも、人がつくる以上は担当者との信頼関係が欠かせません。品質管理がしっかりしている会社は、総じて担当者も信頼できます。

よく、お施主さんと担当者が揉めてしまうケースを見ますが、家づくりに必要なのは「正確に施工すること」と同じくらい「お互いの信頼関係」だと思います。小さな不安をそのままにせず、業者はきちんと説明し、お施主様も納得しながら進めていく。思ったことをきちんと伝え合うことが、欠陥住宅を生まないためにも、揉め事を避けるためにも、とても大事です。

お互いに礼を尽くしながらも、言うべきことはしっかり伝える。このスタンスで臨めば、欠陥住宅のリスクを減らしながら、安心して家づくりを進められると思います。
皆さまの家づくりが素晴らしいものになることを願っております。