識学との基調対談での気付きと総括 | NEXT STAGE

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コラム

識学との基調対談での気付きと総括

 今年のJapan Housing Quality Summit 2026も、約200名もの全国の住宅事業者様や業界関係者の方々にご来場いただき、大盛況で終えることができました。ひとえに皆様方のご理解とご協力のおかげだと感謝しております。

 さて、今回で3回目となるサミットでしたが、毎年、イベントの目玉として基調講演を企画している中で、今年の企画は、(株)識学の安藤社長をお招きし「如何に自動的に仕事の成果を出していける組織にしていくか」といった組織論をテーマに、対談形式で進めさせていただきました。

 このテーマに設定した大きな理由は、昨今の厳しい業界市況の中でありながらも、個の価値を重んじなければならない風潮と背中合わせに、一方で会社としての成果を確実に出さねばならない厳しい環境下での日々の経営に際し、何かヒントや気付きを皆様に持って帰っていただきたかったという思いでした。そして、できるだけ皆様の実態に近いところでお話が進められるよう、事前アンケートも取らせていただいたという訳です。

 今回の識学さんとの進行上の主旨を、識学理論の原点となる「人間の意識構造に着目した、組織内の誤解や錯覚を排除しながら生産性を最大化させるためのマネジメント理論」をベースに、どうしても感覚的、また感情的になりがちな分野を、なるべくストーリー性を持たせながら進めることにいたしました。

 今回の基調対談を進めた上で、私は大きく4つの気付きを得ることができ、また皆様にお伝えできたのではないかと思っております。改めて今月のコラムでこれを整理していきたいと思います。

属人化から脱却し、組織成果を最大化させるマネジメント

 1点目は、人の「誤解や錯覚」に対して、事前にしっかり排除しておく必要があるということです。つまり、個人にはこれまでの経験や知識があるだけに、まずは思考の癖をできるだけなくし、明確なルールや仕組みによって組織内の認識のズレ(誤解)を防いでおく必要があるということです。 

特に現場監督の仕事は、自身のキャリアの積み上げ経験で形成されてきただけに、例えば、現場監督の仕事の価値に対して「難しい納まりを上手く納められた!」という達成感と成果をイコールに認識するベテラン監督もいれば、周りの監督の中で「管理棟数を人一倍管理した!」という量と成果をイコールに認識する若手監督もいたりします。この誤解と錯覚を排除しないことが「頑張っているのに会社からは評価されない」という感覚に陥り、退職に至ってしまうというケースもよく見かけます。つまり、わかりやすいルールや仕組みを制定しておかない限り、このギャップは永遠に埋まっていかない訳です。

当日のアンケート結果にも顕著に出ていましたが「自身は会社からしっかり評価されていると思いますか?」という質問に対する回答の過半数が「どちらとも言えない」というあいまいな結果になっていました。この現象は、評価する側、またされる側、双方に目的が明確になっていなかった。あるいは認識の統制が取れていなかったなどの実態を象徴していることに繋がります。

現場監督の評価基準を標準化し、若手の離職を防ぐ仕組み

 2点目は、モチベーションに関して、あまり一喜一憂しないということです。ついつい「褒めてモチベーションを上げる」といった感情に依存するマネジメント理論が多い中で、識学理論は、敢えて、そのモチベーション管理を否定するという考え方でした。一見厳しいように感じられますが、言い換えれば、会社のルールの中で求める結果をしっかり出せば、正当な評価や報酬が得られるという「仕組みを重視する」ことに裏付けられています。 

 現場監督個人の主張や感情的な内容に左右され、モチベーションアップのための評価に転じた場合、本当に優秀な現場監督を腐らせてしまうことで会社の成果にはむしろ繋がりにくくなり、どうしても離職防止を目的とした、分配ありきの会社経営となってしまう危険性があります。しっかりと仕組みで回し、会社の利益に繋がったものを社員へきちんと対価として還元していくことこそが、社員に対する正しい還元の在り方であり、更には社員を自走させるエネルギーに転換できるポイントなのです。

感情論を排す。人事評価制度の刷新で社員を自走させる

 3点目は、責任と権限の明確化であり『責任=権限』でなければならない点でした。組織における責任の所在を明確にし、部下は上司の指示に従うことを徹底させるためには、このバランスをしっかりと保つ必要があります。

 工務部長に責任だけ押し付けても権限が網羅されてなければ『免責』が生まれ、逆に、権限だけ与えても責任が明確でなければ『無責』が生まれます。住宅会社の場合、やはり経営トップが営業出身の方々が多いことから、営業系に関する部分には非常に理解が深く具体的に責任を明確にするのですが、生産系の部分になると経営トップの理解が成されず、経営トップが権限を持ったまま、工務部長に責任だけを押し付けてしまっている会社をよく見受けます。これでは、免責部分が相当生まれてしまいますし、製造改善が社内でなかなか進まない理由の大きな要因にもなります。

工務部門のDX推進に不可欠な「責任と権限」の定義

 4点目は、やはり「数値化とルール化」です。当社も住宅製造プロセスを可視化させ、如何に「ヒト・モノ」に対して定量的に表現できるかという挑戦をしてきました。何故ならば、この分野はどうしても定性的になりやすいため、正しいルールの中で公正な評価を実現するには難しい部分となるからです。

 現場監督の成果は、製造プロセスを担う技術的役割として、QCDの視点から成果を問わなければなりません。Q(Quality):品質については、自社基準において適合しない職人の施工ムラを、如何に発見し、そして判断し是正して前に進められたか?という定量的成果であり、C(Cost):コストについては、着工前の実行予算に対して完工粗利を如何にイコールで計画的に進められたか?というムダに関する定量的成果であります。そして、D(Delivery):工期については、工程計画に対して、各種職人をマネジメントし、契約工期通りに進めることができたかという、ムリに関する定量的成果なのです。

 1時間という限られた時間では、皆様に具体的な方策まで突っ込んでお話しすることはできませんでしたが、少なからず、働き方改革を経て、現在の個を重んじる風潮の中で、若手雇用が厳しくなってきている時代だからこそ、識学というマネジメント理論の存在を改めて注視しておくことは非常に重要であると感じた次第です。

住宅業界を生き抜く人材育成と自動的に成果が出る組織づくり

 当然、人の価値観によって賛否両論はあると思いますが、これからの厳しい環境下で、自動的に成果を生み出せる組織を創り出すということ、心から自走できるだけの力強い目的と動機づけを介して人財づくりをしていかねばならないことだけは、間違いのない命題ではないでしょうか。