ナフサショック!今こそ、現場を最優先する知恵と汗を… – NEXT STAGE

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ナフサショック!今こそ、現場を最優先する知恵と汗を…

2026年春の今、中東情勢の緊迫化による原油供給不安を背景に、プラスチックや住宅建材の基礎原料となる「ナフサ」の価格が高騰し、そして不足する事態となっています。

皆さんご存知の通り、ナフサは断熱材や塩ビ管、また接着剤や壁紙など、建築において基盤となる部分を担う資材で、このような資材等が価格上昇したり、供給停止が相次ぐという現象は、住宅建築費が急増する「建材ショック」の第二波とも言われています。

つまり『建てたくても、建てられない時代』に突入していくということを、改めて早めに覚悟しておく必要があります。ホルムズ海峡の閉鎖が長期化すれば、先々、価格高騰ならまだしも、資材がそもそも長期間入って来なくなれば、業界全体が崩壊してしまう危機も考えられるわけです。

建材不足はいつまで続くのか?住宅業界の影響と今後の見通し

私も35年以上この業界を見てきましたが、これまでは10年に一度くらいのタイミングで、市場を揺るがす環境問題がやってきましたが、近年ではコロナを皮切りに、ウッドショックや建築資材の価格高騰、また昨年の建築基準法改正に続き、これだけ毎年ショック級の環境変化が起こるとなると、だんだんと感覚が麻痺してきそうな状況です。皆さんも、きっとそんな感覚でいらっしゃるのではないでしょうか。

今月のコラムは、このような業界環境を揺るがす様々な社会問題の中でも、今回のナフサショックというものがこれまでと違って、各々の企業体力の格差を一気に露呈させてしまう結末にならないよう、経営視点から正しい具体的対策を取って頂くために、みなさんにお伝えしていきたいと思います。

住宅会社の資金繰りは大丈夫か?ゼロゼロ融資返済と経営悪化の実態

今、このタイミングで改めて業界全体を振り返ってほしいのですが、以前の新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者向けのコロナ融資(実質無利子・無担保の『ゼロゼロ融資』)の返済が本格化し、資金繰りが限界に達する企業が増えているという事をご存知でしょうか。特に近年では倒産件数が過去最多水準に達するなど、非常に厳しい局面にあるという前提を、まず忘れてはなりません。

実情としては、各住宅事業者の借入金が現在膨らみ続けており、自己資本比率がマイナスに転落している住宅会社も相当数出てきています。PL(損益計算書)ではなんとか黒字収支に見えても、BS(貸借対照表)は非常に傷んでいる企業が、住宅業界全体にかなりの割合でいらっしゃるのではないかと思います。

工期遅延とキャッシュフロー悪化の対策|住宅会社の経営リスクとは

では、この企業体力の上に、今回のナフサショックが来るとなると、どうなるのか?

資材が高騰し、製造原価が跳ね上がります。それを営業戦略として販売単価を上げるなどの工夫をしながら、何とか受注活動を踏ん張ろうとします。しかし値上げだけでは済まず、仮に受注できたとしても、施工現場には建築資材が納材されないとなると、契約内容で決めた引き渡し日そのものが遅れ、遅延損害金の発生だけでなく、お客様からの入金タイミングがドミノのように後ろに倒されていきます。

つまり、キャッシュフローがだんだん回らなくなり経営基盤が揺らいで行ってしまうことから、やはり住宅経営は、BSに余力がある会社だけが、この難局を乗り越えられ、BSがすでに傷んでいる会社は、このショックが経営を左右する一つの引き金になり得るという事を肝に銘じながら、早急な対策が必要となるのです。

資材調達ができない時代の対応策|住宅会社の信用取引と企業選別

これから家づくりを検討されるユーザー視点で考えてみると、これまでの住宅価格の高い安いや、性能の良し悪しといった選択肢から、自身が選ぶ住宅会社が「工事の途中で資金繰りに詰まりストップしないだろうか?」また「最悪な場合、建築途中で会社が倒産してしまうのではないだろうか?」こんな疑念を持ち始めるニーズが、徐々に広がっていく可能性があるのです。

これは過大表現ではなく、ユーザーにとって「どの会社で建てるのか?」という信頼性によるリアリティな判断基準への感覚が、企業競争の大きな軸に変わろうとしています。これまでのコストダウン思考やスケールメリットなど、外郭で勝ってきた『従来の勝ち方』から、品質高く安全にしっかりと製造できる力と、それに見合った正しい利潤追求を実行してきた企業だけが勝ち残って行く。まさしく、これをブランディングできる『本質の時代』の到来なのかも知れません。

今は、まずいくらでもいいから、必ずしっかりと完工させることに知恵を絞り、汗をかく。これが、最優先の経営課題の実行です。コスト力よりも資材調達能力が求められる環境に急変してきたのです。これは決してスケールメリットで勝ち得るものではなく、信用取引という原点のスタンスに留まるものなのです。

私がNEXT STAGEを創業する前は、13年間、建販商社に勤めておりました。沢山の住宅会社に建築資材を供給させて頂いておりましたが、このような資材供給が制約された時、我々は限られた在庫を、全てのお客様平等に供給することはできませんでした。

なぜならば、これまでの取引関係に基づいて、優先順位をつけているのです。これまで浮気をせずに長年お取引をしてくださったお客様や、あらゆる難局で苦しい時期にも取引を続けてくれたお客様。そして値引き交渉に多くの圧力をかけず、適正価格で買ってくれたお客様など、そんな信頼関係によって選別し、優先的に建築資材を回しておりました。

不義理にコストダウンを最優先にしてきた住宅会社は、まさにこの局面で建築資材を回してもらえないという事態に直面します。これまで安く買い叩いてきたツケが、「お客様には申し訳ないですがお売りできません。」という形でお断りしてきました。

住宅会社の生き残り戦略|キャッシュ確保と資金繰り対策の最優先課題

つまり今、値上げラッシュを超えるその先の経営の分岐には、財務体力に直結するキャッシュの脆弱性による分岐、そして資材調達力に影響する信用取引による分岐、そして最後には、『そもそもこの会社で建てて、本当に大丈夫か?』というユーザーより見極められる分岐にふるいがかかるというわけなのです。

値上げラッシュは、業界全体が等しく苦しくなりますが、経営の分岐となるふるいは、住宅会社ごとに明暗が分かれてしまいます。この難局を乗り越える会社と、残念ながら退場しなければならない会社が、はっきりと分かれる局面に入ったのではないでしょうか。

住宅会社の資金繰り対策|キャッシュ確保と金融機関対応の実務

今は、とにかくキャッシュを重視して、これまでお世話になってきた金融機関に行って、借りられるうちにできるだけ借り、手元現金をできるだけ手厚くしておきましょう。万一、支払いの遅延などが一瞬でも発生すれば、メーカーや建材店からの与信管理にも引っかかってしまい、資材調達がさらに困難になってしまいます。

そして、何より職人たちの技能手間の支払いまで遅延してしまうと、二度と自社の仕事に携わってもらえなくなります。財務状況が傷んでしまっては融資はしてもらえないので、すぐに経営者自らが汗をかき、自身の足で、これまでの協力会社にしっかりと頭を下げて、真摯に向き合うことに時間を費やしてみてはいかがでしょうか。

建築現場の生産性向上と施工管理体制の強化|今やるべき具体策

何より、現在仕掛かっている建築現場では、現場監督を中心にムリ・ムダ・ムラを全力で回避し、資材調達の確保と、計画通りにしっかり完工できる体制を強化することが、今最優先で取り組むべき経営課題なのです。単なるその場しのぎの受け身的な対処療法ではなく、こんな時こそ、本当の施工管理体制を冷静にしっかり作り上げたり、大切な人財に教育投資を試みることです。

なぜならば、住宅事業というものは『つくることで業を成す』という、製造事業であるという原点回帰に立ち返れるか否かだからです。きっと我々が天から授かる気づきの局面なのかも知れません。

ナフサショック時代に生き残る住宅会社の条件とは

今、事業の本質に向かって本気で動くのか、それとも動かないのか。きっとそれに気づき、行動した会社だけが生き残り、リスケする会社は退場してしまうというシンプルな構図なんだろうと私は感じるのです。

このナフサショックというものは、これまでの家づくりの単なる商品としての売れる売れないという付加価値問題ではなく、住宅会社としての企業理念に立ち返れるかという、厳しい生き残りをかけた死活問題なのではないでしょうか。