「家づくりの哲学」では、住宅建築において消費者が「どんなところで具体的に見極めたらいいのか?」という疑問やポイントを解説しています。

第8回のテーマは「性能の高い住宅を見分けるコツ」です。

家づくりを検討し始めると「耐震等級3」「高気密・高断熱」「ZEH水準」といった魅力的な数値や言葉をあちこちで見かけるようになります。カタログに並ぶ高い性能スペックを見ると「この会社なら安心だ!」と感じる方も多いのではないでしょうか。

しかし「カタログ通りの性能が、完成した自分の家で本当に100%発揮されるのだろうか?」と、疑問に思ったことはありませんか?

実は、どれほど設計図上の数値が優れていても、それだけで「本当に性能が高い家」と判断してしまうのは少し危険です。

今回は、近年の住宅購入者の価値観の変化や「住宅性能」の成り立ちを紐解きながら、単なるスペックや宣伝文句に惑わされず、本当に信頼できる「性能の高い家」を具体的に見極めるための本質的なポイントを詳しく解説していきます。

一次取得者層の価値観変化と「住宅性能」へのこだわり

昨今、住宅性能を重視するニーズは年々高まっています。これには、新築住宅を購入する一次取得者の中心が、小さなお子様のいる30歳前後のファミリー層であることが大きく関係しています。

30歳前後の世代は、結婚や育児、そして仕事での責任増大といったライフステージの大きな変化の中で、実利性や効率性、そして何より「自分らしさ」のバランスを重視する特徴があります。物質的なステータスよりも、日々の充実感や納得感を大切にする傾向があり、情報やサービスに対する費用対効果や時間対効果(タイパ)をシビアに見極める年代です。

こうした価値観を持つ層の増加が、家づくりにおける「住宅性能」へのこだわりという形で直結しているようです。

消費者が求める主な住宅性能と選定の特徴

様々な専門メディアでのアンケート調査にもよく掲載されますが、住宅性能に対する関心は、特に「省エネ・断熱性」「耐震性」「耐久性・維持管理」といった部分に集中しており、客観的な等級や数値で性能を確認したいという要求が年々強まっています。

  • 省エネ・断熱性
    光熱費の節約や快適な室温を保つため、高断熱やZEH水準への関心が急増
  • 耐震性
    近年多発する地震への不安から、耐震等級3などの高い安全性を求める声が上昇
  • 耐久性・維持管理
    メンテナンス費用を抑えるために長持ちする構造や素材を重視する方々の増加

このように、現在の新築住宅を購入する一次取得者層のニーズの特徴をまとめると、まず客観的指標として、住宅性能表示制度などの等級を基準に選ぶ傾向があることと、もう一点は、建築資材高騰による住宅価格の上昇傾向から、初期費用とランニングコスト(光熱費や修繕費等)のトータルでお得感を求める、コストと性能のバランスといった選択の特徴があると言えるでしょう。

「住宅性能」という言葉の由来と4つの必須分野

さて皆さん「住宅性能」という言葉が普及し始めた経緯を知っていらっしゃいますか?

実は2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に由来します。昭和の高度経済成長期の国策でもあった住宅5か年計画により、大量に住宅が供給されたことで、多くの施工不良や瑕疵(かし)が相次ぎました。

それがきっかけとなり、消費者が安心して家を建てられるよう、基本構造部分の10年間の保証(住宅瑕疵担保責任)を住宅事業者に義務付けたり、万一に備えての紛争処理に対する相談窓口の設置、そして建物性能を他社と比較しやすいよう「住宅性能表示制度」というものを定めたことが始まりなのです。

住宅性能表示制度は本来10分野、33項目で数値化されていますが、特に重要な以下の4分野が必須項目とされています。

  1. 構造の安定:地震や台風などへの強さ
  2. 劣化の軽減:柱や土台を長持ちさせるための耐久性への対策
  3. 維持管理・更新への配慮:給排水を含めた点検や清掃など、維持管理や修繕のしやすさ
  4. 温熱環境:断熱性の高さや、使うエネルギー量の少なさなどの省エネ性能

この必須4分野を中心に年々注目されるようになり、現在の住宅性能の関心に進化を遂げてきたと言えます。

実は、あまり注目されませんが、他にも「火災時の安全性」「空気環境」「光・視環境」「音環境」「高齢者への配慮」「防犯対策」といった分野も数値化できる仕組みがあることを知っておいてください。

設計上の「FACT」と実際の「FAKE」——施工品質の落とし穴

ここで皆さんにしっかりと本質を見極めてほしいポイントが2点あります。それは「その客観的指標はいったい何を根拠に数値化されているのか?」そして「本当にその性能が現場で発揮される原理は何か」という点です。ここは消費者の皆さんが誤解しやすい重要な部分でもあります。

実際建った建物の性能等級が「FACT」なのか?「FAKE」なのか?というと「建てる前の設計上での計画時では‟FACT“を予定しているが、実際に人が施工をして完成させると‟FAKE”になってしまう可能性が高い」と表現するのが正しいのではないでしょうか。

なぜなら、自動車や家電製品のように全て工場で一貫生産される製品とは異なり、住宅は半年近い工期の中で約30もの専門工事業者が人の手で施工します。そのため設計図通りの精度が再現されないリスクが常に潜んでいるのです。

つまり、住宅性能の客観的指標はあくまで「建てる前の名目性能値」に過ぎず、本来ならば、完成後に発揮する実質性能でなければなりません。ぜひみなさんには「施工品質の精度の高さ」に性能が左右されるという原理だけは、しっかり認識いただきたいのです。

本当の性能を見極める住宅会社選びのポイント

このように、本当に住宅性能の高い家を買う前に見分けるコツは、設計上の性能スペックを確認することは当然のことながら、何より「施工品質向上に対し、どれだけ現場で再現性の高い施工管理を行い、日々鍛えているか」という取り組みの部分を、もっともっと真剣に見ていただきたいのです。

多くの住宅会社は「〇〇等級3」といった性能値のPRや「長期保証」という受け皿の安心材料の必要以上の訴求、そして「責任施工」といった抽象的なアピールに走りがちです。そのため、本当の製造力という確かな力を持ち合わせている住宅会社を見極めることは容易ではありません。

だからこそ、当社が主催する施工品質評価制度「Japan Housing Quality Award」の受賞企業や、第三者品質監査を標準導入している企業など、施工品質向上に常時真剣に取り組み、実際の施工現場の見学なども快く受け入れてくれる確かな住宅会社を選択されることをお勧めします。

編集長のあとがき: 信頼できる会社を選ぶことが、後悔しない家づくりの第一歩

「『断熱等級5』『耐震等級3』の高性能住宅です!」という案内は、住宅購入を検討された方なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。私自身、過去にこの営業トークを受けた経験があります。

ただ、専門知識のない私たちが実際の現場を見せてもらっても「本当にスペック通りの施工ができているか」を正確に判断するのは、正直難しいものです。

しかし、実際に現場へ足を運んで観察してみると、素人目にも「あれ?」と違和感を覚える部分が意外と見つかることがあります。

たとえば、ビス(ネジ)の間隔が不自然に開いているように感じたり、逆に深くめり込みすぎていたり。あるいは、断熱材は入っているものの雑に押し込まれて隙間ができていたり…。

せっかく建てる我が家を、数値だけの「FAKE(見かけ倒し)」にするのではなく、真の性能を備えた「FACT(本物)」にするために、現場で感じる小さな違和感をそのままにせず、疑問に思ったことを真摯に相談でき、納得のいく説明をしてくれる住宅会社かどうかを、ぜひ見極める基準にしてみてください。

<これまでの連載はこちらから>

▶家づくりの哲学#1「住宅会社の実力の差は、一体どこで生まれるのか?」

家づくりの哲学#2「施工管理と工事監理の違いと業界の実態とは?」

家づくりの哲学#3「「新築か?中古リノベか?それとも中古リフォームか?」―どれにするかの正しい判断基準とは?」

家づくりの哲学#4「家づくりに必要な諸費用って、どのくらいかかるの?~想定外!? にならないための共通知識~」

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