新築なのに「冬になるとやけに寒い」「結露が出る」こうした気付きに少しでも心当たりがある場合、その原因は断熱材の施工不備かもしれません。
断熱材は、完成後にはクロス(壁紙)の裏に隠れて見えなくなるため、施工ミスが起きやすく、施主が気が付かないまま引き渡されてしまうケースも非常に多いのが実情です。
実際の現場では、断熱材が無理に押し込まれて空気層が潰れていたり、隙間や欠損があったり、防湿層が破れたまま放置されていたりと、性能を大きく下げてしまう施工が珍しくありません。また、断熱材にはさまざまな種類があり、種類ごとに典型的な施工不備も存在します。
本記事では、第三者の立場で実際に数多くの新築現場を見てきた山下の経験をもとに、断熱材で起こりがちな施工不備を事例とともに解説します。
専門知識がなくても施主自身が確認できるチェックポイントや「どこを見れば危険信号なのか」を具体的に整理しました。新築だからこそ見落とされがちな中身の施工。後悔しない家づくりのために、ぜひ一度確認してみてください。
肩書 山下陽平
有名建築家の案件に携わった構造設計の経験に加え、建築トラブルや裁判対応を数多く支えてきた建築の専門家。現在は監査基準の策定にも関わりながら、第三者の立場で建物調査・監査を行い「建築トラブルのない社会」の実現に取り組んでいる。
新築なのに、思ったよりも寒い? 断熱材の施工不良・不備を防ごう
今日は住宅の断熱に関わる「断熱材」についてお話していきます。
まず断熱材ですが、大きく分けて「繊維系」「ボード系」「吹付系」「吹込系」の4種類があります。
繊維系は、グラスウールに代表される、ガラス繊維で作られた綿のようなもの。ボード系は、発泡スチロールのような板状のもの。そして吹付系は、吹付ウレタンのように吹き付けて施工するもの、吹込系は建物にシートを張った中に材料を吹き込んでいくものです。
それぞれによく起こる施工不備・不良は異なりますが共通して起こりがちなのが「思ったより寒い」という性能の問題や、結露です。それを防ぐために、施工については大きく「防湿がしっかりしているか」「隙間が空いていないか」「性能を下げるようなミスがないか」の3点を見る必要があります。
基本的には、熱が一番伝わりにくいのは空気です。ですので、あくまでも「空気を動かさないためにどうするか」ということが断熱の基本的な考え方になります。
今回はお施主様が見て判断できるものを中心に、実際の事例を使って説明していきます。
【繊維系①】「押し込み施工」はNG!壁面の施工にありがちなミス
まず、最も広く使われている繊維系の断熱材から見ていきます。繊維系は、グラスウールに代表されるガラス繊維などの細い繊維を綿状にした素材で、繊維同士の間に空気を溜めることで断熱性能を発揮します。軽量で扱いやすく、防音性や安全性にも優れ、コスト面でもメリットが大きいです。
ですが、この繊維系の断熱材は施工が難しく、施工者の技量によって品質に差が出やすいという特徴があります。そこで、現在の省エネ基準では「押し込んだり、無理に詰め込んだりしてはいけない」と施工方法が明確に定められています。繊維系は空気層を保持してこそ性能を発揮する素材であり、押し込むと層が潰れて性能が大きく低下してしまうためです。
しかし、かつては断熱材を隙間に詰め込む施工が一般的だった時代もあり、その名残から、現在でも誤った施工が見受けられるケースがあります。
では、具体的な不備事例を見ていきましょう。
まずこちらの事例は、断熱材が押し込まれるように施工されています。それによって、断熱材の室内側にある防湿層としてのフィルムと上記のボードを留める柱との間に隙間ができています。ここに不要な空気層ができると、壁内で湿気が行き来し、結露が起きやすくなるのです。
続いての写真では、断熱材の向こう側から光が差し込んでいるのが確認できます。これは隙間が生じており、断熱材が欠損している状態を示しています。このような施工では、壁内で結露が発生しやすくなる点が大きな問題です。
内側では、防湿層によって室内側の湿気が壁内に入り込まないよう適切に防湿を行い、そのうえで断熱材を隙間なく施工することが重要になります。
続いての写真は、配線工事の際に断熱材をめくったまま戻されていない状態です。中に見えているグラスウールは、本来室内側から見えてはいけないため、防湿層(シート)で完全に覆われている必要があります。
この状態では、基本的に張り直しが必要です。状況によっては部分的な補修で対応できる場合もありますが、必要に応じて一部または全面の再施工が求められます。
次に、防湿層がカッターで切れてしまっている事例です。破れの原因としては、梱包ビニールを開封する際に誤って一緒に切ってしまうケースや、施工中に物が当たって破れるケースがあります。
いずれにしても、ここに切れ目があると湿気が壁内に入り込むため、防湿層の破れの有無は重要な確認ポイントです。
【繊維系②】天井の施工でもこんなにある「隙間」や「重なり」
同じ繊維系の断熱でも、壁ではなく天井になると、また少し事情が変わりますので見ていきましょう。
こちらの写真では電線が見えていますが、その原因は大工さんではなく電気工事です。配線作業のために断熱材をよけて体を入れて作業したあと、元に戻さなかったパターンですね。こうした隙間は当然よくなく、壁と同様に結露の原因になります。
続いて、この写真では断熱材が重ねられています。隙間はないように見えますが、天井の断熱材は重ねてはいけません。重ねると必ず間に隙間ができ、結露の原因になるので、天井は「突き合わせ」で隙間なく隣り合わせに施工します。しかし、重ねて入れられてしまうケースが非常に多いのが実情です。
また、断熱材を切り張りして入れる場面もありますが、この写真のように中身が見えている状態はNGです。防湿層をきちんと手前に持ってきて、テープなどで処理し、中身が露出しないようにする必要があります。
次に、一見きれいに見えるこの箇所ですが、天井には「吊り木」という部材があり、梁から天井を吊り下げて支えています。この吊り木が入る部分では、どうしても断熱材に隙間が生じやすい構造です。しかし、施工マニュアルでは こうした隙間も必ず塞ぐことが求められています。
おさらいすると、グラスウールの注意点は大きく次のとおりです。
まず、防湿層に切れ目があったり、中身のグラスウールが見えていたりしてはいけない。次に、場所に応じて適切な幅の断熱材を使い、断熱材が下がるような施工をしてはいけないという点です。
これらが、グラスウール施工における基本的な注意事項となります。皆さんも徐々に、見るべきポイントがつかめてきたのではないかと思います。
【ボード系】隙間や欠け、凹みを要チェック!穴の塞ぎ忘れも
ここからはボード系断熱材です。この断熱材は、厚みや形状が均一で扱いやすく、施工精度を高めやすいのが特徴です。
ボード系に関しては、防湿層の考え方はないので、基本的には隙間や欠け、へこみをチェックしていきます。
例えばこちらは天井ですが、何らかの事情で欠けています。
次の写真は、外断熱です。建物の外周部の外に断熱材を貼っていますが、猫が歩いたような足跡のように凹んでしまっています。こうして凹んでしまうと、中には穴が開いている部分もあるかもしれません。
続いては、断熱の施工のあとに配線とか配管を通す穴を開けて、それを塞ぎ忘れてしまっているケースです。これもよくあります。
最後に、これは隙間ができてしまっている事例です。当社の場合は、隙間は5ミリ以上あると熱の移動が起こり断熱の効果が薄れてしまうと判断して、NGとしています。
こういったケースがボード系の代表的な不備事例になります。
【吹付系・吹込系】独特な素材ゆえ、施工者の技術力や経験が重要
続いて吹付系断熱材についてです。問題になりやすいのは、厚み不足と隙間です。
吹付系の断熱材である吹付ウレタンは、スプレー状に吹き付けた後、反応して大きく膨らむことで断熱層を形成します。複雑な形状の壁や梁・柱などにも隙間なく密着できるため、施工しにくい箇所での断熱に適しています。
ただし、この膨らみ方は天候や気温の影響を受けやすく、当日の気候に応じて配合を調整しながら施工されます。
そのため、施工者の判断や感覚によっては、十分に膨らまない箇所が生じることがあります。本来は、膨らみが足りない部分をその日のうちに補修し、追加で吹き付けを行いますが、補修が行われないまま見落とされてしまうケースも少なくありません。
例えばこれは壁ですが、木を当ててみると、十分に膨らみきらずに必要な暑さより6cmも薄くなっています。これは断熱欠損になってしまいます。
また、吹付系の断熱材の施工では、筋交いと間柱の間などの細い部分にウレタンが行き渡らないケースがあります。そのため、こうした箇所も含め、隙間が生じないよう丁寧に施工することが重要です。
さらに、ボード系と同様に何かがぶつかって凹んでしまうこともあります。ここだけ断熱が薄くなってしまうので、気をつけたいポイントです。
次に、吹込系の断熱材についてです。こちらはセルロースファイバーと呼ばれる断熱材で、化学物質を使わない点や環境負荷の低さから、近年注目されています。材料費は決して安くなく、環境配慮を重視して選ばれるケースが多い断熱材です。
セルロースファイバーの原料は古新聞で、紙を細かく粉砕し、糊を混ぜたものを壁内に吹き込みます。写真に見える穴から機械を差し込み、壁の中へセルロースファイバーを充填していきます。
注意点として、充填状態を目視で確認しにくいという欠点があります。内部の施工状況は職人に委ねる部分が大きく、仕上がりを直接確認することはできません。
そのため、確認できるポイントは限られており、本来塞ぐべき開口部がきちんと塞がれているか、施工中の接触などでシートが破れていないかをチェックすることが重要になります。
これは充填した穴を、テープで塞ぎ忘れている事例です。
こちらはシートが破れてしまっている事例です。
このように、断熱材の施工不良は、見た目では分かりにくくても、寒さや結露といった住み心地の悪化に直結します。防湿の欠損、隙間、厚み不足といった基本的なポイントを押さえることで、施主自身でも多くの不備に気づくことが可能です。新築だからこそ「正しく施工されているか」を確認する視点が重要になります。
正しく施工されているか? を確認し、後悔しない家づくりを
断熱材の施工不良は、見た目では分かりにくい一方で、住み心地や耐久性、将来的な補修リスクに大きく影響します。
重要なのは、素材の種類よりも「正しく施工されているか」という視点です。断熱材には必ず強みと弱点が存在しますので、使用する断熱材の弱点をどれだけ住宅会社が理解して施工されているかをしっかり見極めることが重要です。
特に防湿の欠損、断熱材の隙間や厚み不足など、基本的なポイントを知っておくだけでも、ある程度の不備は見抜くことができます。新築だから安心と考えるのではなく、完成前の段階で一度立ち止まり、施工の中身をじっくり確認することが、後悔しない家づくりにつながります。