2020年民法改正に伴う自社品質基準構築の必要性

約120年ぶりと言われる民法改正が、2020年春に迫って来ている。我々住宅産業界にとっては、何となく不利で厳しい環境変化のように捉えがちだが、私はむしろ建築会社としては有利な環境に振れると考えている。但し条件として、経営者が製造会社としてごく当たり前の事業の原点に気付くか否かという、企業姿勢に掛かっているといっても過言ではない。

わかりやすく表現すると、文字通り「請負」つまり「請けたら負ける!」である。常にユーザーの価値観にそぐわないものは、納得の行くまで対応せざるを得ないという契約環境が、この業界に蔓延した不採算要素となっているに違いない。建築基準法を含めた法令関連の抵触ならともかく、それ以外の「施主判断基準」というものでジャッジされなくてはいけない環境下にある。考えてみれば、そのような施主判断基準で多くの建築会社は、長年にわたり、たくさんの無償対応を重ねてきたのであろう。

現行の民法は、住宅に瑕疵が発生した場合、ユーザーが補修請求や賠償請求を選択をした中で、事業者がお金という手段で対処してきた。そのお金というものも、瑕疵担保責任履行法という瑕疵担保法令義務の中で、保険や供託金積立をし、対応してきたと言えよう。2020年春からは、瑕疵という不具合そのものから、契約の内容に適合しないものという(契約不適合)解釈となり、基本、契約時の設計図書通りに直すということとなる。当然直せないという不能行為や、対応出来ないという拒絶行為によっては、損害賠償請求を受ける形となる。

ここで大切なポイントは3つある。1つ目は、大前提として自社の品質基準を事前に明確に定めておく必要があるということだ。これは何となく施工ディテールのような資料のように捉えがちであるが、ユーザーとの品質契約という行為を実現する為にも、現場の職人達に明確に表現し、分かり易く伝わる指示書にまで落とし込まなければ具現化出来ず、全く意味がないものになる。

2つ目は、その品質基準を契約時に営業がしっかり説明責任を果たし得るという事である。その為にはユーザーに伝わりやすく、さらに技術を熟知しない営業マンレベルでも説明出来る品質基準書でなければならない。

そして3つ目は、お客様との請負契約内容全てを確実に製造履行する為の工事管理を実践することにある。これが最大の難関となり、おそらくこれをクリア出来そうもない建築会社は、早かれ遅かれ事業が疲弊していくであろう。

前回のコラムでも記述してきたが、職人や現場管理者の人手不足と技術スキル不足の両輪課題を持ち合わせながらの品質改革は、並大抵の努力では上手くいかない。我々が一番力強く業界に発信している工事管理体系そのものを、まずしっかり指導を受け、デジタルとアナログの融合活用で、何としてもデミングサイクル【PDCA】を回し続けるリーダーシップと継続こそが大切なポイントとなり、現場風土に根づかせるまで粘り強く推進しなければならない。唯一、品質管理だけは、企業がお金を投資して得れるものではなく、これこそが建築会社の実力でもあり、他社に真似できない本質的な企業の付加価値だと言っても過言ではない。